1話 プロローグ
父親は会社員、母親は専業主婦と普通の家。
遠野凪はそんなごく普通の一般的な家庭の長男として生まれた。
遠野凪を言葉で表すとするならば、凡人だ。テストは大体平均点より少し下、運動は少し得意、顔に関しては可でもなく不可でもなく、良くも悪くも普通と言うことだ。
キーンコーンカーンコーン
ホームルーム終了の鐘が鳴り響く。
今日も長い長い1日が終わった。日本史の教師がつまらないギャグをいいながら授業をし、数学の教師が女子生徒に対し、嫌らしい目をしながら授業をする。いつも通りの日常だ。
「凪、マクドに寄って帰ろうぜ。」
俺の数少ない友人が一緒にマクドに行こうと誘ってくれるが、今日は進撃の○人の発売日。本屋によって帰る為、断る事にする。
「悪いな、今日は本屋に寄って帰るつもりだから」
「そうか。じゃあまた明日な」
「おう、また明日」
そのまま校門で友人と別れ、俺は本屋に向かう事にした。
☆☆☆
はぁ、まさか本屋を4つも回る事になるとは…。
流石人気漫画といったところか。3つめに入った時はもう諦めて、電子書籍で買おうかと思った程だ。
信号を待っていると、信号の先にカップルらしき男女がイチャついてるのが見える。
(あんなにイチャイチャしやがって…。爆発しやがれ、くそが)
誰憚らずイチャつくカップルにイライラしながら、信号が青に変わるのを待っていると、突如男性の声が俺の耳に届く。
「おい!兄ちゃん避けろ!!」
突然なんだ?と思った時には、俺は宙を舞っていた。
えっ…?
何だ?何が起きたんだ?
突如宙を舞った俺は慌てて周りを見ようとするが、首が全く動かない事に気が付いた。
(首が動かない?何でだ!?なんで動かないんだよ!?)
今度は倒れた身体を起こそうとするが、動く事は無かった。
身体が動かない不安からか、〝ドッドッドッ〟と、心臓の鼓動が速くなる音が聞こえる。
不安はあるが、情報を得ないと何も始まらないので、今の視界に映る物を見渡した。そうすると視界の端に何やら車らしきものが電柱にぶつかり大破しているのが見えた。
(車?それに車に付着しているのは何だ?赤い……血、とかか?それにしてもいったい誰の…。いや、そうではないと信じたいが、身体が動かない状況から察するに、もしかして…俺の……)
ッ!
痛い……
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!
血が自分のだと思うと同時に遅れてやって来た痛覚が俺を襲う。痛みで意識が途絶えそうになる中、友人に言われた事を思い出す。
〝人間とは案外あっさりと死ぬものだよ〟
俺死ぬのか?こんなにも呆気なく?
(い…嫌だ……。死にたくない……死にたくない……)
必死に生きようと足掻こうとするが、身体は動かないどころか徐々に寒くなってくるのが分かる。
耳元で誰かが騒いでいるのが聞こえる気がする。それも徐々に聞こえなくなり、目に入る光も次第に弱くなっていく。
そして遂には何も感じなくなる。
蘇るはくだらない日常。
朝起きて学校に行き、授業を聞き流しながら居眠りをする。帰ってきたらご飯を食べ、ゲームをする為に部屋に籠る。
今思えば、最近は親と会話をした事が無かった。ご飯の時ぐらいしか顔を合わせてなかったし、喋ったとしても一言二言。
(あぁ…もっとちゃんと、父さんと母さんと会話しとけばよかったな…)
意識が途絶えるまでの間、親に対しての接し方など後悔だけが頭の中を巡っていた。
いつも通りの日常。それがこれから先ずっと続いてくものだと思っていた。けれど現実はそんなに甘くない。
後にまた気づくことになるが、永遠に続くものなどそんなものは無い。人生とはいつも選択し続けるものなのだから。
見切り発車で始めた初の連載作品、完走できるように頑張るので良かったら応援よろしくお願いします!!