キャラ変のアナスタシア
カンカンと照る初夏の日差しが窓越しに肌を焼く。机の上に並べられた陶器の山は未だ増え続け、向かいに座る女性の顔を覆い隠すまでにさほど時間は要らないだろう。
「あ、おかわりを注文しに行くんですけどヴォルフさんは何か食べたいものってありますか?」
「ん?あぁ。大丈夫だよ。もう無理かな。」
そうですか、と言ってセシリアさんは笑顔で追加注文をしている。オーナーらしき人が入店した時より何十歳も老けて見え、直に死にそうな顔をしている。
注文を受けた店員が厨房にメニューを伝えて戻ってくるや否や何度もセシリアさんに頭を下げている。恐らく食材が底を尽きたのだろうが、少なくとも彼には責任が無いのは確かである。
「もう食材が無くなってしまったそうです。『ばいきんぐ』の元は取れたでしょうか?」
「大丈夫。この店には大損だから。店が閉店しても気に病むことでもないよ。HAHAHAHAHAHA」
「ヴォルフさん目が笑ってないですよ?」
しばらく何も食べてないと言っていたのでこの世界にもあったバイキングのレストランにきておいて正解だった。日本とは異なり料理が山盛りになった皿が出ている訳ではなく、一品一品注文しにいく感じだった。恐らく防犯対策の一つとしてだろうが。
「お会計は『バイキング』二つと『ドリンクバー』二つで、合計で金貨と純銅貨一枚ずつになります。またの機会をお待ちしております。」
支払いを済ませて店の外に出た。セシリアさんは喜んでいるのでこれはこれでよしとしておこう。
「あの、厚かましい頼みなのは重々承知しているのですが、教会のみんなの分の食べ物も何か買って貰ってもよろしいでしょうか?出来れば孤児院の炊き出しもお願いしたいのですが……。教会の皆も子供達もあまり食べていないので……」
「セシリアさんは優しいですね。」
『なるほど、相手の経済力を見抜けるのですね。その容姿も相まって売女と言われる訳です。』
分かってるからそんな萎えること言うなよ。その遠慮のない性格は話しやすくて気が楽になる。前から思っていた妙な気の休まりはこのせいだったか。
近くの露店で色々な食材や調理器具を買い、いくらか話しながら教会に向かっていると何人かの子供たちがこちらに向かって走ってきた。
セシリアは孤児院の皆と教会の修道士達に、炊き出しがあると言ってもらうように言うとと子供たちははしゃぎながら走っていった。
「すみませんね、こんな事までしてもらっちゃって………」
「大丈夫ですよ、貯金はまだまだありますしね。」
基本的に使うもののない金だったからな。有って困るもんではないけど、有りすぎても困る。過ぎたるは及ばざるが如しってね。
『それでちょくちょく歓楽街に行っているのですね。流石主殿、社会貢献をしていらっしゃる。』
『ちょ、おま、何で知ってんの?!置いてったはずなんだけど?『もう着きましたよ』あっ、ちょ、おい!』
「ヴォルフさん?また考え事ですか?考えすぎは体に毒ですよっ!」
「あっ、あぁ、そうですね。『クソッ訊き損ねたっ!』」
教会の裏には孤児院があり院の前の小さな広場には、陰口修道士達と子供が十数人いた。陰口修道士達は、小さな声で『ナイス売女!』『偶には淫行女も良いことをするわね』『流石、媚びを売るのは得意って訳ね。見直したわ。』なんて、手の平返しここに極まれりである。
料理は皆さほど上手くはないそうなので日本で一人暮らしをしていた(ことは話してないが)俺がする事になった。
勇者様御一行の『調理師の奇跡』さんが開発したといわれている『カレー』を作ることになった。俺にとっては食べ慣れているものであっても、こっちの世界でいう庶民からしたらプチ贅沢品らしく、誰も食べたことはなかったらしい。
皆美味しいと和気藹々として食べているので作り手の俺としても作り甲斐がある。俺も食べ終わったあとセシリアさんと話したり子供たちの相手をしてやっていると、一人の少女が話しかけてきた。
「お、お兄さん!」
「?どうしたの?」
「わ、わ私とっ、けけっ、結婚してくだひゃい!」
なんと。突然の逆プロポーズ。子供のこういうのは結構好きだ。なんとも健気で見ていてほっこりする。と言うより返事をしないとな。
『なんと!主殿はロリータコンプレックスでしたか。でしたら私の体も子供と……いやらしい。』
『俺はロリコンじゃねぇ。あと、最後敬語抜いたのわざとだろ。返答が遅れちまうだろ、ほぅらみろ、目がうるうるしっちゃったじゃないか。』
「ごめんね?まずはアリスちゃんが大人にならないと結婚はできないんだ、いい子にしていたら迎えに行くよ。」
「本当?やったぁ!」
そう言って少女アリスは子ども達の輪の中に戻って行った。嫁にするしないに関わらず迎えに行くことになるのだが、それはもっとあとのお話。
『正妻候補その一?』
『止めろ、そんなんじゃねぇよ』
「子供のああいうのって心が温かくなりますよね」
「そうですねぇ。こういうのを父性って言うんですかね。そうじゃないと色々困るんですがね。」
そして日が落ちて暗くなり街中で街灯に灯がともるのと、カレーの底が尽き炊き出しが終わるのは同じ位だった。
「本日は本当にありがとうございました!子供たちがあんなに幸せそうにしてたのを久しぶりにみた気がします!ヴォルフさんのおかげですね!」
「いや、それほどでもありませんよ。相談にのって頂いたお礼のようなものだと思って頂ければ。」
『幸せそうな顔をした子供たちを久し振りに見たって聖職者として終わっている、いや、この教会が』
『そこまでにしておけ。』
宿に戻り、なるべく荷物を少なくして女性体探しに出かける。相談した甲斐もあり、俺は夜の街に繰り出して必要なものを買っていく。
「あとは炭を二十キロだけか」
『何をお探しで?』
『無いなら創るっきゃないっしょ?』
『は…はぁ。つまり、愛玩具を作ると?』
『もうツッコむのもイヤになってきた………人間だよ?創るのは。肉体だけならまだ何とかなるもんさ。そんでもって魂と精神は別であるんだから、もう楽チン。』
賢者の石は無いけど肉体を創るだけだからな。これなら等価交換もセーフ。アナスタシアは魂と精神が刀身?に宿っているので、後は移動させるだけ。魔法も錬金術もありありな世界だからこそ出来うる、エドもアルもびっくりな方法だ。
「これどれくらいまで売れる?」
「んあ?在庫は奥と合わせて二十キロだな。冬は終わったばっかなのに何に使うんだ?」
「じゃあ二十キロくれ。隣のガキが騎士に成りてぇらしくってな。そいつの友達と一緒に野営の練習だな。」
「そんじゃ銀貨一枚ってとこだな。奥から木炭全部持ってこい!そのガキに伝えとけ、『今度、勇者の一人が来るから楽出来るぞ』ってな!ダハハ!」
「んじゃほい。笑い方直しとけよ、そんなんじゃ嫁に逃げられるぞ?」
「これが商品だな。残念ながらもう逃げられた後だ。手遅れだったな!ダハハ!またこいよ!」
木炭を受け取って露店街から出る。とても笑い方に癖がある店主だった。とは言え材料も揃った。後は創るだけだな。
『主殿はよくもまぁあんなに息をするように嘘をつけるものですね。ある種の才能とも言えます。』
『なんか最近キャラにぶれがあるのは気のせい?まぁ、勇者が来るらしいし、ちゃっちゃと終わらせようか。何か会ったらいけない気がする。』
『それはストーリー展開的な問d『いい加減黙ろうか!』』
何か体の奥底で、危険信号を発しているような、言葉だけで身震いを起こすものが何かある。憎悪などとは違うが負の感情であることは確かだ。
その日は取り敢えず宿に戻り、そのまま明日に宿を出る準備をして寝た。明日はカルゼさんの事務所の物を道具袋に入れてからこの町を出よう。
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最近朝目覚める前まで、俺はいつも同じ夢を見る。
起きたら思い出せない、遠い遠い、幼い頃の記憶。
襖を少しだけ開けて息を殺して見た記憶。
泣き続ける母を怒鳴りながら殴り続ける父。
母と目が合ったのに父が気付いて襖を閉める。
次の日に母は白い着物を着て顔には四角い白い布。
箱に詰められ竈の中から帰ってきたのは炭と骨。
白い陶器に詰められた骨は土の中に埋められる。
母の最期に見た顔は赤く腫れていたけれど。
あれは紛うことなき悦んだ笑顔だった。
『何をまだ寝ぼけているんですか。いい加減起きて下さい、主殿。早く体を創りましょう?』
ふと現実に引き戻される。いつも通り見ていた夢の残骸は残っていない。そう言えばアナスタシアを離していなかったと遅れて気付く。彼女は刀身にいる間は主と同じ夢を見ると言っていたが、いくら聞いても教えてくれやしない。ヒントもくれない。もしかしたら悪夢だからか?彼女はそれほど優しくなかったからそれはないか。
『今日はカルゼさんの事務所に行ってそこで錬成しようと思ってる。』
『そうでしたか。よもやまだありもしない夢の余韻に浸っているのかと思っておりました。』
『お前実は俺のこと嫌いだろ?』
軽口を言いながらチェックアウトを済ませ、歩いてカルゼさんの事務所に行く。カルゼさんと行ったときは気付かなかったが、よく見るとここら辺には浮浪者が多く、いわゆる貧民街というやつなのだろう。街のなかに街ってなんか変だな。
『この民家で間違いないんですね?』
『そう、何でか民家なんだよ。たぶんこれは地下室の気配……!』
『主殿はそんな生き物でもない気配もおわかりになられるので?』
『な訳ないじゃない。何となくだよ、何となく。しっかし、ほんとにあったら男のロマンだな!』
事務所には鍵がかかっておらず、泥棒が入れるのではないかと考えたがアナスタシアが、自分の主の認証システムと同じだと言っていた。
中はごく普通の内装だった。事務所感はいっさいなく、妙なトラップもない。………訳では無さそうだ。本棚の下に床下収納のように蓋があり鍵穴がついていた。
アナスタシアの形状変化は驚くほどで、しっかり鍵穴の形になって開ける事ができた。褒めてあげると嬉しそうな口調になった。何だよ可愛いかよ。
下には階段があり、底は見えない真っ暗闇。幸い、手すりがついているのでゆっくり降りれば踏み外す事もない。
電気は魔法でしか存在しないこの世界では明かりと言えば魔晶石と言われるもので、属性を付与した魔素を結晶化させた物だが、主に燃費良い火の魔晶石が使われていて街灯にも使われている。魔晶石自体が魔法の触媒とされる事もある。
俺は魔晶石を持ってないので灯りが無いまま進んで行ったが、最後の段を下りるとパッと天井から光が射し、目がくらむ。手で覆って目がなれると俺もアナスタシアも感嘆符が漏れる。
地下室にもかかわらず正面を含め四つの部屋があり全て扉が閉まっていた。今降りてきた部屋は恐らくリノとナルの居住スペース。机と椅子、タンスなど家具が二つ揃っている。
机の上には『中の物は勝手に持って行っていいよ』なんてカルゼさんのメモ書きが置いてあったが、幼女趣味はないのでこの部屋のものは置いていこうと思う。………やっぱり家具は持っていこう。家具に罪はないしな。リノとナルにも罪はないけど。
右の部屋はなんか色々ヤバいものがあった。カルゼさんは拷問が好きだったり、幼女趣味があっただけだ。特筆すべきことは何もない。俺は見てない知らない興味ない。
『アナスタシアに使えそうだなグヘヘ。』
『おい、ぶっ殺されたいのか?』
左の部屋は宝物庫のような感じだ。何層にも詰まれた金と白金の貨幣たち。多分どこかの国の国家予算並みにあると思う。部屋の奥まで積み重ね天井が見えないまであるので遠慮なく戴いていく。
そして奥の部屋には国宝級の武器や防具がズラリと並び、それに絶対に機密文書であろう書類や見たら消されると疑うような研究書、樽で入った最上級品質のポーション。
武器の中には刺したものを一度だけ必ず殺せるナイフだったり、何でも貫く矛と何でも貫けない盾があった。まさに矛盾。
書類にはやれあそこの王族のドラ息子がやらかし放題だの、あそこの貴族は王族を失墜させる計画を企ててるなど。
研究書には死者蘇生であったり逆に不老不死であったりアンデッドに理性を保たせたままにさせるものであったりなんかSF感が出てくるものが多かった。
ましてや、鑑定したら樽の中なんてエリクサーなどという化け物じみた薬だった。床に書いてある魔法陣はエリクサーを生成するものかもしれない。
机にはまたメモが置いてあって『全部回収して地下室を埋めて下さい。』と書いてある。まぁ、これだけのものを見せられたらかかれてなくてもそうするだろうな。
『俺もしかしたら結構ヤバい人と付き合ってたのかもしれない。なんか国家権力に消されそうで怖いんだけど。』
『そうでしたか。ご愁傷様でございます。主探しもまたやり直しですね。』
んな殺生な!なんて軽口をたたいている場合ではない。回収はすませ、アナスタシアの言った通りに人間の形の人形を創る錬成陣を描き中心に必要なものを置いていく。
『はい、それで完了です。ちゃんと真円なので大丈夫です。それで陣の前に手をついて魔素を注いで』
『どうやって注ぐの?』
『は?』
魔素を注ぐとは。一体どうやって?そう言えば未だ魔法は使った事………は『鑑定』をしたときぐらいだ。魔法ではないと思うがやり方としては目に力を込めただけだ。それだけで魔素を注げるものなのだろうか。
『魔法と言うよりスキルによるものではありますが、魔素の注ぎ方としては何となくそんな感じであってます。体から何かを注ぎ絞り出すイメージをしたほうがよいかもしれません。錬金術は魔法とは異なり、魔素を注ぐだけで勝手に錬成し始めますのでイメージをしたり、操るような事を考えなくて良いので私もよく使っていました。』
『わかった。やってみる。』
何かを絞り出す………何かを………絞り………あ。
錬成陣が輝き始め、部屋一帯が光に包み込まれ、アニメで見たときと同じようになんかのエフェクトがかかり、光が収まるとそこには腰まで届く程長い若葉色の髪、金の双眸、モデル体型でありながら胸の大きな若く美人な女性の体が仰向けに倒れていた。
『生前の私と瓜二つですね。成功ですよ、主殿。』
『あ、あぁ分かってる。分かってたとも。裸であることはな。今とても後悔しているよ、服も錬成すべきだったと。』
『良いではないですか、役得ですよ。破廉恥な主殿、私を体に戻して下さい。』
わかったと返事をした後、鞘から抜いた黒い刀身を心臓部を目掛けて一突き。刺しっぱなしにして数瞬しすると、彼女の体が大きくびくついた。
「主殿、痛いので早く抜いて戴けますか?」
「喋った。」
「人を幽霊のような目でみないでください。」
すぐさま抜いてあげると傷は瞬く間に修復していく。彼女は起き上がると大きく伸びをして頭を下げた。眼福ではあるが、心臓に悪い。
「では主殿、私は隣の幼女たちの居住スペースで服を作ってくるのでここを埋める算段を立てておいてください。」
そう言ってパタパタと小走りでリノとナルの部屋に行った。とりあえず、今までの短期的目標をクリアしたわけだ。ここを埋めるのは今できた錬金術でどうにかなるだろう。
やっと冒険者らしいことが出来る。と、悦に入っているとアナスタシアに呼ばれたので見に行くと、裸のままで正座している。あれ、泣いてない?
「ちょ、おま、服はどうした?」
「魔素が……」
「どうした、ちゃんといってみろ?別にとって食う訳じゃないんだから、な?」
「魔素が取り込めないんですよぉ……グズッ………ずびばぜんでじだぁぁぁ!」
「え、まち、は?何?キャラ変した?!何故?!」
落ち着かせてから話を聞いてみるとどうやら生命活動をさせる魔術『疑似生命』が発動すると思っていたらしなかったという話しだそうだ。
俺にはよくわからないが、今は動けても死体に魂が乗り移っている状態と何ら変わらないらしく、いずれこのままだと腐っていってアンデット化するそうだ。要は人間に成れないという事らしい。
「代謝が行われないということが主な原因なのです……」
生命として認められないということは魔素を取り込むことも出来ないということに繋がっていくそうだ。まぁ多分人間が人間を創ることができないのはこの世界でも魔法も錬金術もない世界でも一緒なのだろう。あぁ、検索エンジンが恋しい。
「魔法は基本イメージするだけでできます。その補助に詠唱などもありますが。ただ、魔術はちょっとだけ違って魔法陣が必要です。因みに錬金術も魔術の内の一種です。」
「この匕首にその機能はあるの?」
「あったからこうしたんですけど。うぅ…情けない……穴があったら入りたい気分です………」
「なあ、それならなんでさっき傷が修復されたんだ?回復する魔法だって使えないわけだろ?」
「あ。一つの可能性を考えてなかったです。」
「ほう?何だね。言ってみなさい。」
「魔力限界までたまっている場合です。」
そう言って近くの服を引っ張り出して錬成陣の真ん中に置く。錬成陣が輝いたと思うとそこにはサイズの合った白いワンピースがある。
「あ、最後の可能性でしたね?」
「心配させんじゃねえよ!」
「ごめんなさいぃ!叩かないでぇ!」
「叩く訳ねぇだろ、俺の創ったものをわざわざ壊すまねはしねーよ。」
その後色々自身で服を作っていたときにキャラ変の事を尋ねると、アナスタシア容疑者は『見栄を張りたかった。格好いい感じのイメージを持たせたかった。』などと意味不明な供述をしていた。
パタンと地下室があった筈の蓋を閉じる。ダミーの民家の家具を回収している傍ら、箒を持ってゴミ掃除をしているのはメイド服を着た美女、アナスタシア。世間体を気にして奴隷よりもメイドとして隣にいたほうがいいらしい。冒険者仲間じゃダメだったのだろうか。
ここに誰かがやってくるかもしれないことは容易に想像が出来る。あれだけ国宝級の財宝と共に連絡が途絶えたのだ。国から何かアクションがあってもおかしくない。
俺とアナスタシアは灯台下暗しを狙って王都に近付くようにして街を移動していく計画をたてた。
「それじゃあ一番近くの街は、ラヴェルですね。」
「どんな街なんだ?」
「奴隷売買が盛んなようです。嫌ですねぇ奴隷。」
「ん?そのチョーカーどうしたんだ?」
「これですか?可愛いでしょう?」
「ちょっと貸してくれ」
受けとった後道具袋から少しだけ金を取り出し装飾する。よし、これでカンペキ。
「この装飾って……」
「まぁ、そんなんじゃ奴隷の首輪みたいなもんだと思っただけだよ?」
そのチョーカーには金がアラベスク柄に装飾されており、喉元の部分から垂れたチェーンの先に小さな十字架が付いていた。
「ありがとうございます………」
「あんま赤くなんなよ、こっちが恥いわ」
かくして二人は旅立つのであった。