2.事故 side日向
1話と同じで短いです。
6/12
書き足しと行間を開けました。
入学式の今日。
私はとても憂鬱な気分だった。
今日は母の命日なのである。
母は私が中学の頃、癌が原因で亡くなった。
母は最後に
「みんなを頼むね」
と私に言った。
その後すぐに、父も他界したので、私は今は妹と二人で暮らしている。
父と母の葬式の日は、私たちを誰が引き取るかで親戚の人たちがおおいにもめた。
私と妹は居たたまれ無くなって建物を出て、近くの公園で二人、ブランコに座っていた。
すると、私たちに向けて一人、声をかけてきた。
「今日から私があなたたちの親代わりになります」
その人は母の姉だった。
母の姉は私たちのことをとても気にかけており、葬式の日に、両親の死んだ私たちの前で、私たちをどこが引き取るか押し付け合っている親戚の人たちにこう言ったそうだ。
「あの子達は両親が死んだばかりなのよ!どうしてあの子達に気を使ってあげられないの!そんな余裕のない方たちにあの子達を預けるくらいなら私が引き取ります!」
そうしてその場を離れ、私たちの元に来たというわけだ。
「私や私の夫じゃあなた達の両親の代わりにはならないかもしれないけれど、これからよろしくね」
そう言って微笑む母の姉に私たちは揃って頷き返した。
その後、荷作りをし、母の姉の家に移ることになったが、私も妹も父と母と暮らした思い出を、家を手放したくないとお願いしたら、あっさりと仕送りという形にしてくれた。
ーーそれから数年、私は高校生になった。
「お父さん。お母さん。私、高校生になったよ」
写真の中にいる両親に一言を言うとこで私の一日は始まる。
「それじゃあ、行ってくるね。」
唯一の肉親である妹に声をかける。
「行ってらっしゃい、お姉ちゃん。私は喫茶店で待ってるから」
入学式が終わった後、私たちを引き取ってくれた優しい母の姉が入学式の簡易祝いをしてくれると言うので、私は妹と母の姉が待つ喫茶店へ向かった。
私は今、交差点で信号を待っている。
もうすでに青になってるのだが、私は気づいていなかった。
(お義母さんに会うの久しぶりで、緊張するなぁ。後でお父さんとお母さんのお墓に行くけど、何話すか迷うな…)
「もう二年も経つのにね」
私はまだ両親の死を振り切れていなかった。
と、そんなことを考えていると
「何かお困りですか?」
(私に声かけてる?)
「えっと、その、どちら様ですか?」
私に話しかけてきた人は高校生であろう男の人だった。
「え。あ、僕は遊馬ひかるといいます。えっと、うかない顔をされていたのでつい」
男の人は緊張しているようだが、私は
(そんなに俯いてたかな私)
とさらに落ち込んでいた。しかし、会ったばかりの人に相談する話でもない。
「ありがとうございます、大丈夫ですよ」
自然に対応したつもりだったが、男の人は不安そうにする。
「そうですか、すみません。迷惑でしたね」
「いえいえお気遣いどうも、それでは」
無理をしていたのがバレていたようだが、引いてくれたようだ。
しかし、今ので少し気持ちを整理できた私は、前を向いて青信号を渡り始めた。
すると、右側からトラックが迫ってきた。
キィィィィィィ
「えっ!?」
(避けられない)
死ぬことを覚悟した私は、母との約束を守れなかったこと、母が死んですぐに死んだ父を恨んだことへの謝罪の意を込めて、そして私が死ぬことで一人にしてしまう妹へと一言
「ごめんなさい」
とそう言った。