17.王立学園と試験
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書き足しと書き直し、行間を開けましたので読みやすくなっていれば幸いです。
「すっげぇー人混みだな」
「こ、こんなに受けるんですか…」
僕とルナは王立学園で今年受ける生徒の数に驚いていた。
「大丈夫だよ。受かるから」
「その自身はどこから来るのか」
「そんなもの、前世の記憶に決まってるじゃない」
リーアの一言に僕とルナは気持ちを落ち着ける。
「並びましょ」
「はい!」
「そうだな」
僕はリーアたちに着いて行く。
「きゃっ」
途中1人の女の子にぶつかった。
「悪い、大丈夫か?」
僕は声をかけて手を出したのだが、
「ご、ごめんなさい。大丈夫です!」
そう言ってすぐに立ち上がりお辞儀をして早々に立ち去った。
「い、いや逃げなくても……」
「ドンマイ!少年」
「ファ、ファイトです!レン様」
僕は苦笑いをしながら手を戻す。
別に出した手を握ってもらえなかったくらいでなんとも思っていないさ、なんとも。
そんなことをしていると目の前が空き、僕らの順番になった。
「次の方ー」
「はーい。今行きます!ほら行くよ」
「あ、うん」
リーアに諭され、受付へと向かった。
受付が終わり試験が始まる。
「えー、それでは試験を始めまーす」
いま、僕たちは学園の中で一番広い広場にいる。
広場のステージにマイクを持った女性が来る。
「はじめまして、ここ王立学園で教師をしているアーシャと言いまーす。今この広場には5283人の受験者がいまーす!」
この人の喋り方なんかイラッとくるな。
「今日の試験は1.筆記試験、2.使い魔召喚、3.精霊召喚、4.聖剣適性、5.魔剣適性、6.現在の武力と魔力の測定でーす」
「2と3の召喚系に関しては滅多に成功する方はいませんが、ありとあらゆる適性を調べさせていただきますので、物は試しですよー。できれば儲けものと思ってくださーい」
「4と5の適正系に関しては適性を計るだけで、物は無いのでただの検査ですよー」
「これらの全てを受けた後、最終評価が高い順に300名を合格とさせていただきまーす」
300名かなかなかハードだ。
この説明の後順番に試験が行われていった。
ここで試験の補足だが、試験は2日に分かれており、1日目はもろ適性診断だ。
2日目は武力と魔力を教員による評価で決め、最後は集団つまりグループ戦の実力で終了だ。
「それじゃあ筆記試験の会場に移ってもらう。まず1番A-1の教室へ。次2番B-2の教室へ。次……」
と続いて
「僕たちはそれぞれ別々の教室だな。ルナ、1人でも大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫…です」
ルナが不安だったが、無事終わった。
僕らは筆記試験が終わった後、広場で待ち合わせしていた。
「終わった終わった」
時間には余裕があったが、ルナが心配だったので僕は待ち合わせの場所に時間より少し早く向かった。
待ち合わせ場所に着くと、何やら騒ぎが起こっているらしく、人がたくさん集まっていた。
「おいおい獣風情がどうしてこんなところにいるんだ?」
「しかもこいつあれじゃね?路地裏で過ごしてる」
なんだか不愉快だな。
もしかして……。
「あぁ、確か呪われた奴隷だったか。そんなやつがなんで普通に服着てここにいるんだよ」
「ちょうどいい。さっきの筆記うまくいかなかったんだよ。こいつでも殴って発散しよう」
人混みを無理矢理通って中を見ると、ルナが10歳くらいの男の子3人組に囲まれていた。
僕が輪の中に入ろうとしていると、3人組はオロオロしているルナの顔を殴った。
ルナはそのまま吹き飛び壁に激突した。
「ぐっっ」
「ははっ、「ぐっっ」だってよ」
3人組はルナを見て笑い、それを見ていた周りの子も笑う。
僕はこの光景を前にして、何かが切れる音を聞いた。
瞬間、その場が途端に重くなる。
いきなり放たれた殺気に誰もが息を飲む。
いったい誰が?周りがそんなこと考えていると、
「お前ら、ルナに何してんだ?殺されたいのか?」
ドスの聞いた低い声で誰かが喋る。
もちろん僕だ。
3人組は僕の殺気に冷や汗をかき、動くことができない。
僕はそのまま3人組を素通りし、ルナのもとに行く。
ルナはうずくまって泣いていた。
そんなルナに僕が声をかけようとした時、
「く、クソガキが!邪魔してんじゃねーぞ」
3人組のうちの1人が大声をあげて僕に拳を上げる。
その時、
「ダメだよ。ここで喧嘩をしちゃ。試験落ちちゃうよ」
僕を殴ろうとしたそいつの手を両手で包み、1人の人が、いやさっき壇上で説明をしていた女性がそれを止めた。
「君も抑えてくれると嬉しいな」
僕はこの場に似合わない笑顔とその言葉を聞き深呼吸を数回した。
「すぅー、ふぅー…ありがとうございます」
「いえいえー、何があったか知らないけど結果で負かしてあげるものだよ。今日この日は試験日なのだから」
「はい!」
そう言って僕は女の人と別れ、ルナの元に向かい、回復魔法をかけた。
ルナは人が近寄って来たのを感じたのか、土下座をする。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
「落ち着いてルナ」
「…レン…さ…ま?」
「うん。僕だよ。レンだよ」
「レン様!うわーーん」
ルナは話しかけてきたのが僕だとわかると泣きながら抱きついてきた。
「ごめん。嫌な思いさせて」
僕はルナが泣き止むまでずっとルナの頭を撫で続けた。
「落ち着いた?」
「は、はい。ごめんなさい。レン様にこんな事をさせーー」
「いいんだよ。そんなこと気にしなくて。怖かったろ。ごめんな、助けに来るのが遅くなって」
「そんな事はありません」
ルナは僕の顔を見てそう言う。
嫌な思いしただろうに、痛かったはずなのに、こうして自分のことより僕のことを心配する。
情けないご主人様だ。本当に……
「よかったよ大事になる前で」
「はい」
元気いっぱいになったルナをもう一度抱きしめた。
「そのぐらいにしてあげたら?」
後ろから声がかかる。
「リーアか。遅かったな」
「ちょっと入るに入らなくなったのよ。そんなことよりルナちゃんそろそろ離してあげたら?」
「うん?ご、ごめん」
「い、いえ」
僕は顔を真っ赤にしているルナに謝って早々に離れた。
よくよく考えたら試験者達の前で女の子をずっと抱きしめるなんて……恥ずかしい。
しかし、ルナはここにいるとまたひどい目に合うかもしれない。
ここからはずっと行動を共にできるはずだからしっかり守ろう。
そう決意して僕は次の試験へ向かった。