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A Dream Into A Pouch  作者: ゆん
3/7

ひどく新鮮ないつもの朝

目覚めるとそこはいつもの天井だ。点々の体を燃やす王に光る太陽も、僕の心臓まで凍らせるほどの暗闇、全身の痛み、腐ったような匂いすら何処かに消えてしまっていた。

「おはよう」

僕はいつか捕まえた元気のない小鳥に挨拶をすると入れたての紅茶の啜った。口に入れた瞬間の優しい甘さと目を覚ますような酸味とほんのりと香るローズマリーのいい匂い。きれいなピンク色には寝ぼけた僕の輪郭がぼんやりと写った。紅茶を飲み干すと、シワ一つない白いシャツに目を移した。寝間着の紐を解き、すっと肌寒さを感じるとシャツを手に取った。瞬間、僕が触ったところにシワができる。無駄にはめてあるボタン一つずつ丁寧に取っていくと一枚の置き手紙が白いシーツの上に落ちた。

「13時に図書部屋にて」

その字はどこか歪で慣れない字体であった。僕はその字の歪さをどこか心地よく感じてなぜだか見惚れてしまった。

「フレイ様、お目覚めでしょうか?朝食のご用意が出来上がっております。ご準備ができ次第急がれますようお願い致します。」

フェルンの透き通った美声が僕の耳をすっと入って僕の脳を刺激した。

「おはよう、フェルン。」

作ってしまったシワさえ覆い隠すほどの整った服に見を包んだ僕はドアの外で待っていたフェルンに声を掛けた。

「おはようございます。」

そう一言、心地のよい笑顔と薄汚れた僕の日記とともに僕に手渡した。

「ありがとう」

僕はそれを受け取るとフェルンは少し険しい顔になったあと、僕の前を案内するようにあるき出した。

右に曲がり、王宮の中央に大きな階段を上がる。3階にあるその部屋は上ってからもなお、右に曲がり、今度は少し左に曲がる。すぐに見える少し大きな門こそがその部屋に入口なのである。

入ると、いいにおいが漂っている。素敵な匂い。うっとりするような、ああ、待ち切れなくなるような匂いだ。

僕は直ぐに椅子につくと、目のまえのパンに一瞬のすきもなく手をも出した。

夢で見たパンの味がまだ残っているせいか、ここで食べるパンの味は夢のように感じた。

「……はあ、おいしい」

極楽にいるかのような気分になった僕は思わずそう口に出すと、必ず、シェフの険しい顔がゆるまる。僕はその顔がとても好きではあるが、同時に聞かれてしまったことが恥ずかしく思う。僕は頬張るようにパンをむさぼった。おいしくてたまらないのだ。パンを5個ほどむさぼり腹がの空腹が少し収まると目の前がぱっと広がった。瞬間に朝日に照らされ輝くスープや見たこともない(毎朝食べているが記憶が混雑している朝はそう感じる。)ような色とりどりに並ぶとてつもなくみずみずしく、そして色鮮やかなフルーツ、黄金色に焼けたパンケーキ生地の上に挟まったチョコムースとチョコ生クリーム、そして真っ赤に輝く親指と人差し指を丸めた大きさよりも大きな甘そうな苺がのっかったケーキなど、様々なよだれの出る余るほどの食事を僕は40分かけて食べ終えた。

「おお、フレイ、おはよう」

国王のジェルフィ王つまり、僕の父であり、最も感謝するべき恩人が、パジャマのまま僕の前であくびをしながら机についた。

「おはようございます。お父様。」

「堅いなあ……。「おはよ~お父様~」とか言ったらどうだ?10代になって間もないというのに可愛げがない。私はそんなに堅く育てた覚えはないぞー」

酒でも飲んだのだろうか、広角が情けなく上がった顔に覇気のないような声。僕は言い返したいような思いを抑え、にっこりと微笑み返した。夢の中の国王もこんな感じであったのだろうか。よく思い出せない。しかし、さっきまで一緒にいた国王とは少し違う。金箔がぜいたくに使われたアクセサリーを体を覆い隠すように身につけている。指輪の紫いろに光る宝石を撫でながら幸せそうに広角をさらに上げる。

「全く、フレイの笑顔はとても素敵だが、なんで話してくれないんだろうなあ。なあ、フェルン。お前は話してもらえるのか?」

愚痴のようにフェルンに聞く彼に少し腹が立った。わざわざが笑顔を返してあげているというのに。

「え、ええっと。私的なことはほとんど話しませんが……。いや、話すかな……。えへへ。それでも、国王様ほどじゃありませんよ?僕にこんな輝いた笑顔向けてくれたことありませんもん。僕はフレイ王子は恥ずかしがってるだけなんじゃないかなって思うんですよね。国王様の前ではどことなく安心したような表情をなさってる気がするんです。僕は。」

フェルンは王の前ではにやにやした面になる。なぜなのか、誰しもこの王の前では笑顔を浮かべるのだ。この王に足りないものを埋めるかのように。

「そうか、そうか、それは嬉しいことを聞いた。」

国王は低くいびつな声を出して笑いだした。僕はとっさに顔を手で覆った。きっと、いびつな顔をしているに違いない。この時間が不快で仕方がないことをこの王の笑い声とともに思い出すのだ。

「フェルン」

絞り出すように出した声は少し裏返った。

「はい!」

「図書室に案内してくれ。」

あまりにも早い返事に驚きつつ、僕は彼を見て頼んだ。

反抗期です。

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