スコラ哲学レイプ!三位一体と化した空手部
木村「さて、今度はキリストが処刑されてから広がったキリスト教の哲学に就いてやっていきましょう。イエスの死後、多くの布教活動によって、キリスト教はついにローマ帝国の国教になりました。そして主に二つの教義が誕生したので、それを紹介していきます。…三浦先輩、一つ質問ですが…よくある教会は、一体どのような役割を果たしていると思いますか?」
三浦「ポッチャマ…」
野獣「言われてみれば…(これもう)分かんねぇな」
木村「此処で出てきたのがアウグスティヌスです。彼は教会の役割を『祈りの仲介』と考えました。彼は神の救いによってのみ罪を背負った人間は赦されるであろう、そして祈る事は救われることだ、と考えました」
野獣「それってさ、教会の権力をかなり強める事にならないか?」
木村「その通りです。教会が我々への救いを仲介する立場と言う点においては、教会の地位を不動なものにしたのですよ」
三浦「はえ^~」
木村「これが一つ目の教義です。…二つ目はプラトンが言った『知恵』『勇気』『節制』『正義』と言ったものよりも、『愛』『希望』『信仰』の三つのほうが価値が高いとする考えです。これを『三元徳上位説』と言い、ますます教会の権限を強めていきます。また、アウグスティヌスは"神"と"イエス"と"聖霊"の三者は一体である、とした『三位一体説』が生まれたのです」
三浦「おっ、待てぃ(江戸っ子)そしたらアリストテレスの哲学の『形相』や『質料』はどうなってしまうのかゾ?」
木村「いいところに気が付きましたね、三浦先輩。そうです、アリストテレス哲学はあくまで現実に目を向けたもので、キリスト教の信仰を否定してしまう内容だったのです。…ここで現れたのがトマス・アクィナスです。彼は逆にアリストテレスの哲学を利用して、「神の存在証明」を行ったのですよ」
野獣「神の存在証明…ネーミング格好いいっスね」
木村「先輩がた、アリストテレスの哲学をもう一度思い出してください。…彼は現実態と可能態について述べましたよね?」
三浦「おっ、そうだな。現実態と可能態は同時に備わっているって聞いたゾ」
野獣「当たり前だよなぁ?覚えてるって、はっきりわかんだね(焦り)」
三浦「(野獣、絶対忘れてるゾ…)」
木村「ではお聞きします。…全ての物が可能態としてなっていき、現実態となってまた可能態となる……じゃあ、最初に可能態となったのは何ですか?」
三浦「…あっ」
野獣「……ヌゥン!ヘッ!ヘッ!ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!!!!!フ ウ゛ウ゛ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ン!!!!フ ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥン!!!!(大迫真)」
木村「うるせえよ(半ギレ)」
三浦「鼓膜こわれる」
木村「…まあ皆さんお気付きの通り、そうです…最初は全て無であったハズなのに、そこから現実態と可能態が続いている。つまり、『何かしらが最初に現実態を作った』と言う非現実的な展開になってしまいます。トマス・アクィナスは、正にこれこそ神によるものだ、と証明したんです。これを『宇宙論的証明』と言うんです。そしてそこから生まれた哲学を『スコラ哲学』と言うんですよ」
野獣「逆にアリストテレスを利用して信仰を肯定したのか…」
木村「そうです。…そして彼は神学こそ哲学より上位に位置付けました。ここで生まれたのが『哲学は神学のはしため』と言う言葉です。言い換えて「哲学は神学の召使い」です」
三浦「なるほどゾ。つまり哲学で神は求められないが、神学では求められると考えたから関係性が生まれたんだな」
木村「ここで発生したのが普遍論争という言い争いです。…先輩がた、創世記の中でアダムは禁断の果実を食べてしまい、楽園から追い出されました。この瞬間、アダムから始まった我々人間は彼と同じ罪を背負わなくてはなりません。…しかし、『なんで知らないバカの犯した罪を背負わなくてはならないんだ』と考える人も出てきました。…ここで聞きますが、我々はアダムの罪を「背負わなきゃ」とお考えですか?それとも「背負ってられるか」と考えますか?」
野獣「背負ってられるか(即答)」
木村「即答ですね…」
三浦「ココアライオン…俺らもアダムと同じ『人間』だから背負わなくちゃいけないと思うゾ」
木村「見事に分かれましたね。…鈴木先輩の言うような「背負ってられるか」と言う理論は『唯名論』、三浦先輩の言った「背負わなくちゃ」理論は『実念論』と言います。…唯名論者は「人間」と言う言葉こそ『俺らが勝手に作った概念だ』と考えました。しかし実念論者は「人間」と言う普遍が存在して初めて「人間」が成立すると考えました。――つまり、『"人間"と言う概念が、アダムの居たときより前に有ったか無かったか』と言う事です。これで大論争が発生しました」
三浦「なんで論争が発生したのかゾ?」
木村「…もし罪を背負う必要が無ければ、教会が要らなくなるからですよ」
三浦「…あっ、そう言うことかゾ!つまり唯名論者にとって教会は不要と考えたけど、もしそうしたら教会の権力が揺らいでしまうかもしれないからゾ!」
野獣「流石っすね三浦さん…」
木村「ここで登場したのがオッカムです。オッカムは『動物』や『人間』と言った、自然界に存在しない概念に目を向ける必要はないという立場を取ります。つまり彼は唯名論者ですね。…無駄な概念を剃り落としていくようなこの考え方こそ『オッカムの剃刀』と言うんです」
三浦「なるほどゾ…」
木村「そしてトマス・アクィナスが述べた『哲学は神学のはしため』と言う言葉を否定し、哲学と神学は分けて考えるべきだと述べたのです。…つまりオッカムは神秘的ではなく合理的な考え方を進めていったのです。そして近代哲学が始まるのです」
三浦「オッカムの剃刀と言う考え方が、今まで当たり前のようにあった上下関係を打ち壊してしまったのかゾ…。恐るべしオッカム」
木村「これでスコラ哲学は終わりです。スコラ哲学そのものはこれからも広がって行きますが、ここら辺から聞いたことあるような哲学者が登場していきますよ。例えばデカルトとかベーコンとか」
野獣「ベーコンって美味そう…美味そうじゃない?」
木村「えぇ…」