ベンサムレイプ!功利主義者と化した空手部
木村「続いてはイギリスの思想についてやっていきます。…この頃のイギリスでは産業革命が起こり、資本主義経済がヨーロッパ中に広がりました」
野獣「産業革命って、イギリスが『世界の工場』と呼ばれるきっかけになった、蒸気機関の開発とかで技術に革新が起こったことだろ?」
木村「ええ、その通りです。これによって技術が大幅に変化し、資本主義が誕生します。すると哲学界にも、資本主義に準した思想が出て来るのです。今回はそれについてやっていきます」
三浦「よし、じゃあ(記憶に)ぶち込んでやるぜ!!」
木村「突然ですが、先輩方に質問です。…今では当たり前のようにある資本主義ですが、資本主義の原理である「自由競争による個人の利益追求」は社会全体に利益を及ぼしますか?」
三浦「質問の意味が良く分からないゾ…」
木村「例えば、1個1000円のぬいぐるみがあったとします。しかし、それに目を付けた他の人が、同じぬいぐるみを1個100円で売りました。また、他の人が同じぬいぐるみを1個50円で販売しました。…これの連鎖が続いたら、皆が喜ぶ結果になりますか?と言う事です」
野獣「当たり前だよなぁ?…自由競争が起こる事で値段は安くなっていく。そうして俺ら消費者の手に届きやすくなるんだろ?」
木村「その通りです。…今の鈴木先輩の仰った意見と同じことを言った哲学者がいます。彼の名はアダム・スミスと言い、彼はこうした個人の利益追求は『神の見えざる手』によって操られて自然と皆の利益に繋がるのだ、と言ったのです」
三浦「つまり自由競争の連鎖は、神の見えざる手によって動かされてきたのかゾ?」
木村「そういう事です。…ですから、国家や政府が手を加えなくても、結果的に社会全体の利益に繋がると考えたのです。何故なら、神の見えざる手があるから」
野獣「はえ^~」
三浦「じゃあ、勝手に任せたままにしておいたら、社会全体の利益に繋がってるのかゾ?」
木村「ご明察の通りで、三浦先輩。…そうです、自由な経済競争は、放任しておくことこそ最適なのです。この考え方を『自由放任主義』と言います。アダム・スミスはこれを著書である『国富論』で説きました」
三浦「…でも、もし放任しておいたら滅茶苦茶な事になりそうな気がするゾ。それこそ他の商人を殺してしまったり…。…国家は自由競争に介入するなと言えど、法律面は介入すべきだと思うゾ」
野獣「三浦さん流石っすね…」
木村「今の三浦先輩の通り、行き過ぎた自由競争は混乱を招いてしまいます。ですから法律面を徹底する必要があったんです。ここで出て来るのがベンサムです。彼は客観的な善悪の判断を示そうとしたのです」
三浦「つまり、法律面をしっかり整えるために、ちゃんとした判断基準を確立させようとしたって事かゾ?」
木村「そうです。だからベンサムは、人間を『快楽』と『苦痛』に分けて、快楽に結びついたものを『善』、苦痛に結びついたものを『悪』と定めたのです。…この判断基準を『功利主義』と言います」
野獣「でも、一つの行為によって快楽に結び付けたり、苦痛に結び付けたりする人は分かれると思うわ。…絶対的な基準では無くないか?」
木村「ですから彼は、快楽と苦痛を数量化し、計算したのです。…これを『快楽計算』と言います。そうしたら多数決で判断出来ませんか?」
野獣「数量化するのか…(困惑)」
木村「この『快楽計算』は、主に『快楽の強さ』と『快楽の持続性』、そして『快楽の確実性』の三つから計算しました。この『快楽計算』による点数が高い人が多いほど幸福な社会だ、とベンサムは説いたのです」
三浦「ここでは貧富の差とかは関係ないんだろ?」
木村「はい。…ですから、どんな貧乏人であれ金持ちであれ、等しく1人として扱われます。だから彼は『個人は等しく一人として数えられ、誰もそれ以上に数えられない』と言ったのです」
三浦「あっ、そっかぁ…」
木村「ですから、快楽計算による点数の合計が高い社会ほど幸せです。だからベンサムは、出来るだけ点数の高い社会を目指すべきだ、と考えます。これを『最大多数の最大幸福』と表現し、今でも役立っているのです」
野獣「だけど、自分自身が勝手に快楽を求めてしまう事が、社会全体の快楽を減らすことは無いのか?」
三浦「確かに、とある人が泥棒する事を快楽としていたら、他の人たちはその人を恐がって、社会全体の快楽が減ってしまうゾ…」
木村「ここでベンサムは、そう言った自分勝手に快楽を求める人に苦痛を与えて、社会全体の快楽の減少を予防しなければならない、と言ったんです。これを『サンクション』と言い、四つの種類が存在します」
野獣「そのためのサンクション?」
三浦「あと、そのための拳?」
野獣「苦痛!制裁!サンクション!…苦痛・制裁・サンクションって感じで……」
三浦「(ガン無視)」
木村「…まず一つ目のサンクションとして、『物理的サンクション』と言います。これは自然を操った際に生み出す自分勝手な快楽です。例えば火の後始末をせず、家が大火事になることですね。二つ目は『政治的サンクション』です。これは罪に問われて刑罰を受けることです。三つ目は『道徳的サンクション』と言い、犯罪を犯したりすると周囲から白い目で見られたりすることです。最後は『宗教的サンクション』と呼ばれていて、教えに反したりしたが故に、神の天罰が下る事を怖がることです」
三浦「自分勝手に快楽を求めたりしちゃいけないゾ…」
野獣「昏睡レイプは自分勝手に快楽を求める行為だから止めましょうね、初見さん」
木村「しかし、ベンサムの快楽計算には少し疑問を抱きませんか?」
野獣「そうと言われれば…同じ数値でも、美味しい飯を食って幸せになるより誰かを助けて幸せになったほうが良いよなぁ」
木村「そうです。これはベンサムが量的にしか判断していないからなのです。…ここで、快楽計算は量的だけでなく『質的』にも判断するべきだ、と言った人がいます。その人の名はミルと言い、彼はこうした考えを『質的功利主義』と言い、ベンサムの哲学を付け加えたのです」
三浦「要するに、肉体的な快楽よりも精神的な快楽の方が質的には上なのかゾ?」
木村「ええ。ですからミルは『満足した豚より不満を抱えた人間の方がよく、満足した愚か者よりも不満を抱えたソクラテスの方がよい』と言ったのです」
野獣「つまり、質こそを優先した訳だな」
木村「また彼は、個人の意見や行動が他人に迷惑を掛けない限りは何してもいい、と言い放ちます。例え他者から見れば愚かに見えても、迷惑を掛けないならやってもよいのです。これを『愚行権』と言い、彼の著作である『自由論』は功利主義を更に発展させたのです」
三浦「つまりレイプは相手に迷惑が掛かるから駄目だけど、その動画を観ることは迷惑掛けないから愚行権なのかゾ?」
野獣「そういう事ですよ、三浦さん」
木村「この愚行権を認める事こそ、自由社会への道であるとミルは言ったのです」
三浦「おっ、そうだな」
木村「…こう言った思想は、全て科学が発展して生まれたものです。資本主義経済しかり、功利主義しかり。…これらの前提として、経験に基づいた仮説や理論を検証されたからこそ誕生したものではありませんか?」
野獣「蒸気機関の開発とかも、確かに仮説や理論から生まれたものだよなぁ…」
木村「こう言った自然科学と同じく、哲学にも同様の実証性を求めるべきだ、と言う思想が出てきます。これを『実証主義』と言い、提唱者としてコントが有名です」
三浦「コント…漫才かゾ?」
野獣「多分オーギュスト・コントだと思うんですけど(名推理)」
木村「漫才じゃないです。…今の鈴木先輩の言った通りの名前の略としてコントと呼ばれるんですよ」
三浦「あっ、そっかぁ…」
木村「彼は、人間の精神は『神学的段階』から『形而上学的段階』を経て『実証的段階』へ至ると言うコースを辿って進歩する、と言います。これを『三状態の法則』と表現します」
野獣「要するにコントは、人間の現象に対する捉え方を羅列化したんだろ?」
木村「はい、ご推察の通りです。「神学的段階」では神を用いて現象を説明し、「形而上学的段階」では限られた観察から原因を引き出して絶対真理を導き出し、「実証的段階」では仮説や理論を検証して法則を発見する、と言う順番で人間は現象を説明してきたのです」
三浦「確かに実証的になったからこそ産業革命が起こったのかもなぁ…」
木村「こう言った進歩の進み具合は、自然科学では既に実証的段階であるが、社会科学では未だに遅れていると彼は言います。そして彼は『社会学』を確立させたのです」
野獣「はえ^~すっごい…」
木村「今日はここまでにしますが、社会が発展していくにつれて経済を分析する哲学が生まれたのです。古代や中世とは異なって、もう神や真理は遠い夢になっていくんですよ…」
三浦「ソクラテスやプラトンが懐かしいゾ…」