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迫真空手部・哲学の裏技  作者: そのまんま東のような人物のイラストをイメージ画として自身が一種の淫夢系のキャラクターとして扱われている、近年ではイワナ系朗読やFXで有り金を溶かしたりしている朗読兄貴
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カントレイプ!道徳法則と化した空手部

野獣「ラーメン美味かったッスね^~」


三浦「すっげぇ美味かったゾ^~」


野獣「ですよね」


三浦「ウン」


木村「さて、ラーメンも美味しかった事なので、続きをやりましょうか。今度はドイツ観念論についてです。…先程イギリス経験論と大陸合理論についてやりましたが、この二つを合体させた哲学者が出てきたのです」


野獣「えっ、何それは…」


木村「その人の名はイマヌエル・カントと言います。聞いた事ある人も多いのではないのでしょうか?」


三浦「なんか凄い難しそうな本を書いた人じゃなかったっけゾ…?」


木村「ええ、その通りです。その本の名前は『純粋理性批判』と言います。哲学書の中でも相当難しいと言われる本です」


三浦「読んだら頭痛くなりそうゾ…」


木村「…まず、カントはイギリス経験論と大陸合理論を批判しました。経験論は経験以外は全て嘘だと思うかもしれないし、かと言って合理論も理性で全てを判断するので独断的になるかもしれない、と言ったのです」


野獣「要するにカントは、イギリス経験論の"経験以外のことを全て信じない"と言う点を批判し、大陸合理論の"理性で何でも捉えられると思っているから、間違った判断でも正しいと思い込んでしまう"って点を言いたかったんだろ?」


木村「はい、その通りです。…ですからカントは、人間の認識能力を根本から見直し、理性が認識出来ることと出来ないことを明らかにする必要があるのだ、と考えたのです。これを『批判哲学』と言い、これがイギリス経験論と大陸合理論が合体して出来たものなのです」


野獣「理性万能主義に陥った人間を批判したパスカルみたいだな…」


木村「そんなカントですが、彼は"人間は本物の世界を見ることが出来ないのだ"と言いました。これはどういう事かと言いますと、我々は色眼鏡をかけているようなものだ、と言う事です。試しに質問しますが、リンゴはどんな色をしていると思いますか?」


三浦「赤色だと思うゾ」


野獣「品種によると思うんですがそれは…」


木村「お二人の意見を伺ってみるに、三浦先輩は一般的な色を、鈴木先輩は品種によって異なると言いました。…こうやって意見は分かれましたが、それは"本物のリンゴ"がどんな色をしているのか分からないだけなのです」


野獣「あっ、だから色眼鏡をかけているようなものだ、と言ったのか!俺は俺の色眼鏡、三浦さんは三浦さんの色眼鏡、それがあるから認識に差が出て来るんだな!」


三浦「つまり絶対的な認識、『これだけは正しい!』と言う認識が無いって事なのかゾ…」


木村「その通りです。だから我々は本物の世界を見れないのです。何故なら我々は色眼鏡、言い換えて"異なる認識"を持っているから。…この"本物のもの"を『物自体』と言い、我々は色眼鏡を外さない限り物自体を見ることは出来ないのだ、とカントは説いたのです」


野獣「なんか物自体ってプラトンのイデア論に似てる気がするなぁ。こっちは認識の差異だけど、向こう側は真理と言う点では異なるか」


木村「あくまで物自体と言う考え方は我々に依存していると考えて貰ってOKです。…また、彼は認識の順番を解明していきました。彼は、認識する対象が自分に従うのだ、と考えました。つまり目の前にアイスティーがあったとして、アイスティーの物自体を読み取ろうとして自分なりの解釈を得るのだ、と考えたのです。これは今まで「認識が対象に従うのだ」と言う考え方を大きく覆したのです」


三浦「だから俺らには認識の差があるのかゾ…?」


木村「そういう事です。この認識方法を、地動説を唱えたコペルニクスに因んで『コペルニクス的転回』と言います。…その中で、人間は何かを感じ取るとき、"原因や結果と言う形式"に当てはめて自己解釈を行うのです。この形式を『カテゴリー』と言い、物自体からカテゴリーを経て解釈を得られるのです」


野獣「つまりコップなら、コップの物自体、カテゴリー、コップの順番で認識するんだろ?」


木村「そういう事です」


三浦「野獣、頭いいな…」


野獣「まぁ、多少はね?」


木村「続いては道徳についてやっていきます。カントは、自然界に自然法則があるように、道徳にも道徳法則があるのだ、と言ったのです。そして人間界には従わなくてはならない道徳法則がある、と考えました」


三浦「道徳法則…つまり無意識のうちに学校に行ったりする事かゾ?」


木村「そうです。もし学校に行くという道徳法則であった時、三浦先輩は『学校に行け』と無意識ながらも命令されているんですよ。その命令者は、言わずもがな道徳法則なのです」


野獣「道徳法則が俺らに語りかけている、ってことか?」


木村「はい、その通りです。その時、道徳法則は『~せよ』、つまり「お前は~しなければならない」と言うんです。だから我々は無自覚の中で学校に行く事を当たり前のように思うのです。これを『定言命法』と言います」


野獣「だとしても、学校に行く事を別の理由で果たしているうちだったらどうなるのか?例えばだが、『学校に毎日行ったらお小遣いが貰えるから、お前は学校に行かなければならない』って道徳法則は言うのか?」


木村「いいえ、言いません。カントは、道徳法則は目的を果たすための手段では無く、目的そのものだと考えたのです。…学校に行くことに目的はない。何故なら学校に行く事そのものが目的だから」


三浦「要するに『~したければ、~せよ』じゃなくて『~せよ』って事かゾ?」


木村「ええ、その通りです。この無条件の命令こそが定言命法なのです。そして『~したければ、~せよ』と言う条件付きの命令を『仮言命法』と言います」


野獣「はえ^~」


三浦「つまり『学校に行こう』ってのが定言命法、『学校に毎日行ったらお小遣いが貰えるから、学校に行こう』ってのが仮言命法なんだな」


木村「はい。…ここでカントは『自由』について考えました。例えばですが、コップを上から落としたら絶対に落下します。つまり自然法則には選択権が無いのです。…しかし、道徳法則には従うかどうか選べませんか?」


野獣「選べますねぇ!選べます選べます。…だから定言命法と仮言命法の二つがあるんだからな」


木村「そしてカントは『自律の自由』について考えました。自律とは、自分の信念と道徳法則を一致させる事です。例えば『学校に行く』なら、『僕は毎日学校に行くと決めているんだ』と言う意思こそが自律なのです」


野獣「つまり、自分が自分のために良いと思って決めた事と、道徳法則が一致すれば自由である、って言いたいのか?」


木村「ええ、そうです。だって、自分の意思と道徳法則が一致すれば、自分も道徳も満足できませんか?」


三浦「あっ、そっかぁ…」


木村「そして、「自分が自分のために良いと思って決めた事」を『格率』と言いました。そのうえ、自然に格率に導く自分の意思を『善意思』と呼びました。そして『自律』とは、正しく格率と道徳法則の一致で生まれるのです」


野獣「んにゃぴ…よく分かります分かります」


三浦「だから自律は自由であるのかゾ?」


木村「そういう事です。自分の意思にも、そして道徳法則にも引っかからない。つまり"自由"なんですよ。これが『自律の自由』の真相です」


野獣「ホモビに出たのは俺の格率と道徳法則に従ったまでだから、俺は自律的なんだな!」


三浦「ホモビが道徳法則になるとかコイツすげえ変態だぜ?」


木村「…また、カントは自律が行えた人の事を『人格』と呼びました。人にはそれぞれの格率があるので、それぞれの人格があると言う事になります。…そして、互いの人格を互いに尊重し合う世界を『目的の国』と呼び、これこそが理想的であると考えたのです」


三浦「皆が皆、自律的であれば確かに平和だゾ…」


木村「さて、今日はここまでにします。余談ですが、カントは自分にも格率があったそうです。それはスケジュールぴったりに動くというもので、町の人々はカントを見て時計の時間を合わせたとも言っています」


野獣「どんだけガッチガチなスケジュールなんですかね…」


木村「ですが、そんな彼も一度だけ格率に従えなかった時があったようです。それは彼がルソーの『エミール』を読むのに熱中して、スケジュールを無視してしまったらしいのです」


三浦「そんなに面白かったのか…」


木村「彼はルソーの愛読者であったらしいですからね。…他にも、鼻から必ず息を吸う、部屋の温度を14度に保つ、などの格率があったそうです」


野獣「14度とか寒すぎませんかね…?」


三浦「(部屋)冷えてるか~?」


木村「カントはここまでです。ですが、彼の哲学は確かに難しいと言えど、後世に多大な影響を与えたのは事実です。他にも知りたい方はカントの著作を読んでみてはいかがでしょうか」

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