モラリストレイプ!エセーと化した空手部
木村「さて、今回はデカルトやベーコンと同じ時代を生きた哲学者についてやっていきましょう。…前回紹介した哲学者からかなり時間が経ちます」
野獣「(順番)あ~もう滅茶苦茶だよ」
三浦「そうだよ(便乗)」
木村「うるせえ!!(やけくそ)」
野獣「すいません(超小声)」
三浦「ポッチャマ…」
木村「さて、本題に入りましょう。先ず最初に…と言うより、もはや恒例になっていますが…先輩がた、スペイン人が新大陸を発見した出来事を知っていますか?」
三浦「チコリータ…(諦め)」
野獣「三浦さん少しは考えてみましょうよ…。…あれだろ、コルテスやピサロが行った虐殺行為だっけ?」
木村「ええ、その通りです。コルテスやピサロが筆頭として行った虐殺行為は有名ですね。彼らは新大陸…今の南北アメリカ大陸に住む現地人を虐殺したんです」
三浦「虐殺なんて現地人が可哀想だゾ…」
野獣「これに関しては本当に何も擁護出来ないんだよね、それ一番言われてるから。しかも現地人は友好的に接してきたらしいし。…スペイン人の悪しき伝説を作った2人を「英雄」と呼ぶのはいや~キツイっす(素)」
木村「はい、鈴木先輩の言う通りです。決して虐殺行為が肯定されてはいけませんし、いけないと思います。…そんな僕たちのような考えを持った哲学者が出てきたのです」
三浦「てか可哀想と思わない人はどうかしてると思うゾ…」
木村「まあ、それは世界史の要領になってしまうので、今回は紹介しません。しかしスペイン人のやった非道な事の数々を知りたい方は、ラス・カサスの『インディアスの破壊についての簡潔な報告』を読んでみてはどうでしょうか。…精神が弱いと自負している方は本当に読まないで下さいね。読後はかなり胸糞悪いですよ」
野獣「(虐殺は)やめようね!」
木村「さて、話を戻します。…スペイン人の虐殺行為について疑問を抱いたのが、モンテーニュです。彼は考え方や文化の違う人間に対して、偏見などを捨てるべきだと言いました。そして相手の考え方や文化を理解する必要がある、と述べました。このような考え方を持つ人を『モラリスト』と言います」
三浦「なんか良識的な人に思えるゾ…」
木村「事実、モンテーニュみたいな人を生み出すほど虐殺行為は悲惨だったんですよ。…そんな彼は、人間のありのままを書いたのです。彼はその中で、人間は多様性こそ最大の特徴だ、と考えました。これを"随想録"、言い換えて『エセー』と言います」
野獣「エセーって、よくある文体のジャンルの「エッセイ」に名前が似てるな」
三浦「あっ、確かにそうだゾ」
木村「いい所に気づきましたね、鈴木先輩。…彼の書いた『エセー』は、後々"エッセイ"として影響を及ぼしたのです。つまり、『エセー』はエッセイの語源なのです」
野獣「はえ^~すっごい…」
木村「そんなモンテーニュには名言があって、『ク・セ・ジュ?』と言うものがあります。この言葉は彼が書いた『エセー』の中に載っているものなのですが、日本語訳して『私は何を知るか?』、つまり彼は「人間とは何だろう?自分とは何だろう?」と言考えたのです」
三浦「それがどういう意味を成しているのかゾ?」
木村「彼は、スペイン人の虐殺しかり戦争しかり、多くの争い事は「自分とは何か、人間とは何か、と言う疑問を抱いたことが無いから起こるのだ」と考えたのです。そして彼は『謙虚』になることを説いたのです」
野獣「スペイン人の傲慢さは頭に来ますよ!」
三浦「皆が謙虚になれば、確かに争いも起こらないと思うゾ…」
木村「ええ、三浦先輩の仰る通りだと僕も思います。…そこからデカルトの『我思う、ゆえに我あり』と言う思想が生まれたのです」
野獣「つまりデカルトは、モンテーニュの疑問を発展させたんだな」
木村「はい。この考え方を『懐疑主義』と言い、モンテーニュの影響を受けた人の多くが色々な事を疑い始めたのです。そしてデカルトが出てきたのです」
三浦「やっぱりデカルトは偉大なんやなぁって…」
木村「そんなモンテーニュに影響を受けた哲学者を紹介していきたいと思います。…その人物は、大陸合理論やイギリス経験論などと言った近代哲学が普及してから、人間の理性は万能であるという考えが広まったことに警鐘を鳴らしました。その人物こそ、かの有名なパスカルです」
野獣「パスカルって、確かヘクトパスカルとかで有名な人だろ?」
木村「はい、その通りです。彼は数学者として有名ですが、哲学者としても有名な人物なんですよ」
三浦「確か『人間は考える葦である』って言った人だっけ?
野獣「流石っすね三浦さん…」
木村「三浦先輩の言った通りです。彼は『人間は考える葦である』と言いました。これは、彼が危機感を持った"理性は万能だ"と言う考え方への非難なのです。…先輩がたは葦ってご存知ですか?」
野獣「流石に知ってるんだよなぁ。茎が少し細くて、水辺や干潟で生える植物だろ?」
木村「ええ。パスカルは、茎が細い「葦」のように、人間は「か弱い生き物だ」と考えたのです。要するに、理性を持っている人間こそ最強だ、と言う考え方に対して苦言を呈したんです」
三浦「パスカルは『人間は考える葦である』と言う言葉を使って、「人間こそ最強」って言った人にイキスギィ!って言ったんだろ?」
木村「あながち考え方は間違ってないですね。…理性を持つ人間は一番万能だ、と言う考え方にパスカルは『人間なんて葦のように弱い生き物だ』と言ったんです。人間はそれを自覚しなければならない、と彼は思ったのです」
野獣「でも『考える葦』なんだろ、人間は。…ただか弱いだけの生き物じゃない」
木村「そうです、人間は『考える葦』です。それは、人間が自分の理性や知識には限界がある事を知っているからだ、と考えました。つまり「限界」と言う概念を我々は知っている訳です。そう言う意味では人間は尊いのだ、とパスカルは唱えました」
三浦「要するにパスカルも、モンテーニュみたいに『謙虚』さが大事って言ったんだろ?つまり彼はモラリストなのかゾ?」
木村「ご明察の通り、彼はモラリストです。モンテーニュの影響を受け、彼はモラリストになったんです。…そして行き詰まった演繹法に疑問を呈したのです」
野獣「演繹法って確か大陸合理論者が言っていた、『一般論』から『特別な例』を引きだす方法だろ?」
木村「はい。…しかしパスカルは、演繹法が全てでは無いと考えました。例えば『泥棒は悪い人だ』と言う一般論の中で、『誰にでも親切だったAさんが貧困のために仕方なく泥棒をした』と言う特別な例があったとしたら、それは悪ですか?」
三浦「確かに泥棒はいけないと思うゾ。…でも、今のAさんの特別な例は全面的に悪とは言い難いゾ…」
野獣「いや、泥棒は悪だ。幾らAさんの今までの行いや、彼が泥棒したきっかけが仕方ないと思われるものでも、泥棒をしたと言う事実に変わりはないのでは?」
三浦「野獣、それは言いすぎだと思うゾ。幾らAさんと言えど、家族を養っていかない立場だったかもしれない…。もしAさんが悪だとしても、彼に頼るしかない子供たちや配偶者は悪なのかゾ?」
野獣「悪でしょ。犯罪者一族だろ?」
三浦「お前には良心の欠片も無いのか」
野獣「ないです。さっきライプニッツで勉強したじゃないですか。…全ては神が操るモナドによって世界は作られる。彼ら一族が悪だと決まっても、それが世界にとっては"一番マシ"なんですよ」
三浦「この野郎醤油瓶…!(発狂寸前)」
木村「あ、あの先輩がた…」
三浦「野獣。…お前がライプニッツ哲学で言うなら、スピノザは俺ら全員の肉体や精神には神が宿ると言ったゾ。…つまり犯罪者一族と言えど、同じく神は宿っている。良心の少しは神によって肯定されるのでは無いのかゾ!?」
野獣「だったら三浦先輩は、快楽殺人者を肯定するんですね。…『人を殺すことこそ生き甲斐です』って言ってる人たちにも神は宿る。Aさんの仕方ない理由だからと言って許される訳は無いんですよ。まさか三浦さん、快楽殺人者を肯定するつもりじゃありませんよね?」
三浦「肯定する気はないゾ…」
野獣「ですよねぇ?…いやー焦りましたよ。まさか『言いすぎだと思うゾ』なんて仰るなんて。正直反吐が出そうでした。…犯罪は犯罪、永遠に覆らない。これが我々人間が定めた社会の在り方だ。如何なる理由であれ、それが赦されるとしても『悪者』と言うレッテルは避けられない」
三浦大先輩「いや、俺はその社会の在り方を定めたと同時に、レッテルを張る存在なんだゾ。レッテルによって『悪者』になるのなら、彼を『悪者』にするのも我々人間だ。…違うか、野獣?」
野獣「…流石、先輩ですね。敬服しました」
木村「まさかの論争、ですか。…確かに考え方には差異があるかもしれません。別に自分の考えを言うな、とまでは言いませんが…この場は『哲学者の思想を学ぶ』と言う会だから、なるべく流れ身であってほしいです」
野獣「ん、おかのした。三浦さん暴言吐いて悪かったっすね」
三浦「安心しろ野獣。俺も感情的になっていた、悪かったな。…そういや近くにラーメン屋の屋台があるって言ってたよな?仲直りについでに行こうぜ?(ドラゴン田中)」
野獣「あぁ^~いいっすね^~」
木村「僕も行きます(食い気味)……改めて本筋に戻りますが、パスカルは『Aさんみたいな人にも理由がある。一概に悪だと決めるのはおかしい』と考えました。つまり、今の三浦先輩みたいな考え方です。逆に鈴木先輩みたいな考え方はデカルトです。…彼は演繹法によって全てを見極めようとしていたんです」
三浦「俺はパスカルだった…?」
野獣「ないです(即答)」
三浦「あっ、そっかぁ…」
木村「このように、物事や人の心には沢山の矛盾…それこそ先程の例のようなものが存在します。それらの矛盾を含めたまま、我々は一度で理解する事をできます」
野獣「さっきの例で言えば、Aさんと言う『泥棒の悪』と『親切の善』と言う矛盾を一度に捉えられることだろ?」
木村「はい、その通りです。そう言った立場からパスカルはデカルトを批判しました。…デカルトの「一概に決めてしまう」考え方を『幾何学の精神』、そして「同時に矛盾を捉えて理解する」考え方を『繊細の精神』と呼んだのです」
三浦「どっちも間違ってない気がするのが如何にも哲学って感じがするゾ…」
野獣「さっきの俺と三浦さんとの間で起こった論争も、哲学の難しさを表してるんだよね…」
木村「さて、今日は此処までです。…どうですか、一旦休憩して、ラーメン屋に行きませんか?」
野獣「行きましょうよ」
三浦「行っちゃう?行っちゃうよ?そのための財布?」
野獣「あとそのための仲直り?」
木村「休憩!ラーメン!仲直り!って感じで…そう、休憩!ラーメン!仲直り!」
野獣「じゃけん行きましょうね^~」
三浦「おっ、そうだな」
木村「行きましょうか」




