七
第七話です、よろしくお願いします。
「皆で手分けして、そう言う場所を探して見る事にするわ」
ラケニスから、彼を捜す場所の手掛かり?に成る様な話を聞いた私は、皆にもこの話を聞かせる為に、外へ帰ろうとしたが、彼女からまだ別の話を聞かされる事に成る。
「呼んだ理由はもう一つ在る。わしが小娘から託されているやつの事じゃ」
「ああ……、うん」
「小娘に返そうと思う」
「え、でもまだそんな……」
「案ずるな小娘、あの状態でお主に返す。時が来れば魔法の封印を解こう」
「心配要らないのね?」
「うむ」
こうして塔で彼女の要件を済ませ、首都へと戻った私は、早速全員を集めて塔で聞いた話を聞かせた。彼女達がこの話を聞いて、何か思い当たる者が居る事に期待をした。
たが、その期待は簡単に崩れ去った。
やはりそんな場所に、心当たりの在る者は居なかった。
「強力な結界と言っても……」
「隔絶された場所……、すいません。全然見当がつかないです……」
ユキヒト捜索は、またもや暗礁に乗り上げた。幾ら期待しても、何も得られない事にイラついた私は、自分の感情を抑える事を忘れ、遂に切れてテントに置かれている台を叩き、大声で癇癪を起こしてしまった。
「どうしてっ! 、何も進展しないのよっ!!」
「ロゼ様……」
「落ち着けロゼっ!」
「これが落ち着いて居られるっ? 、何も手掛かり掴めないじゃないっ!」
マリネとアネスの二人は、私の気を鎮め様と体に触れてきた。
その手を振り払い、私は彼女達に罵倒を浴びせてしまった。
「放しなさいっ! 、貴女達なんて何もしてないじゃないっ!」
私から押される形になったマリネは、足元を取られ転倒した。ラミカは、彼女に駆け寄り手を貸しながら、私に対しては抗議した。
「言い過ぎです! 、私達だって必死に捜そうと努力してますっ!」
「はぁ?何をしてるって言うの?。ぼけっとここに居るだけじゃない」
私の癇癪は一向に収まらず、彼女達への罵倒が続いた。宮殿建設エリアには、沢山の人が常駐している、騒ぎ聞きつけた野次馬が、この場所へと集まってきた。醜態を晒しているのが皇女と分かると、私の痴態を見物し始め、私の理不尽な怒りは、野次馬と化した大衆にも向けられた。
「貴方達は何してるのっ! 、サボってないで仕事をしなさいっ!」
アネスが私に詰め寄り、手を振りかざす……。
パーンっという音、同時に冷たい手の感触を顔に覚えた。それは直ぐにヒリヒリとした痛みへと変わり、私を叩いた相手を睨み付ける。
平手打ちを浴びせて来たのは、イリスの手だった。その悲しげな顔を見詰めている内に、嘘の様に怒りとイラついた心が覚めて行くのを感じた。
「イリス私は……、皆に何て事を……」
「ロゼ様、少しは落ち着きましたか?」
「アネス、マリネ……、ラミカも、御免なさい……」
「もう……、一時はどうなるかと……」
本当に情けない……、立場上私が皆をまとめないといけないのに、こんな醜態を晒してしまった。こんな姿をユキヒトに見られていたらと想像しただけで、恥かしくて会わす顔が無い。
「ありがとうイリス、貴女が叩いてくれて良かった」
「いえ、皇女様に対して御無礼を働きましたお許し下さい」
膝を着き謝罪するイリス、その体を私は立たせ。
彼女の顔を上げさせ、首を振って答える。
「貴女は正しい事をしたわ、何も悪くない。私は償いをしないと……」
「それでは、一つ提案があるのですが……」
「何でも言って、」
彼女の提案は、一理在るかもしれない。
彼を捜す事を、私は焦り過ぎているのかも、そのせいで大事な友人達に酷い事を言った。イリスが私の目を覚ましてくれなかったら、険悪な関係に成ってしまい、最悪の場合は彼女達と喧嘩別れをしてしまう処だった。どんなに焦って走り回っても、無理な物は無理、少し頭を冷やす時期なのかもしれない。
「いいわ、少し彼の事は忘れましょう、捜索は一時中断という事に」
「ロゼ様、辛いでしょうけど皆も一緒だと忘れないで下さいね」
「勿論、二度と貴女に叩かれる様な真似はしないわ、約束する」
「ふぅ、一件落着っということかな」
「アネス、御免なさい……」
「いや……、それより本当に中断でいんだな?」
アネスの問いに、私は頷いて答えた。皇王が首都を離れて居る今、皇女としてすべき事が他にも在る筈、これまでは、ユキヒトを捜す事ばかりに気を取られ、皇族としての義務を蔑ろにしていた。宮殿が焼かれ、首都に居る民衆は不安に違いない。
こんな時に、皇女が見っとも無い姿をしていたら、民衆にも恥かしい。
少しは、皇女らしい所を見せなくては……。
「果報は寝て待て、ですよロゼ様っ!」
「あははは、ハル何よそれっ!」
「えっと、人がやれる事をした後は気長に良い知らせを待つしかないという事。だそうです、ユキヒトさんから教えて貰った言葉です」
「今の私達に、びったりの言葉ですね」
「そうね……その通りだわ」
危うく喧嘩別れも在ったが、それもイリスの御陰で回避できた。次はハルの言った言葉の通り、私達は今やれる事は全てやった筈だ。後は、良い知らせが入って来ることを願い、彼の捜索を優先する事を中断した。
この事を踏まえ、私達はひとつの決断をした。
何か起きた場合は、直ぐに掛け付ける事を約束し、私達は別々に分かれた。
私とマリネは首都に残り、アネスとハルはゾーイの街へ、そしてラミカはハーフ村に様子を窺いに行った。イリスは当然帝国領の自分の屋敷へと帰り、ズグロは雪山へは今回帰らず、ラケニスの塔で彼女の手伝いをするらしい。
私達が、再び揃う時は良い知らせが誰かに届いた時と信じて。
各々が、思う場所へと散って行った。
有難うございました。