六
第六話、よろしくお願いします。
私達が、ユキヒトの刀を回収して一週間が過ぎた。
しかしその後は、何も情報が入る事は無く、彼の捜索は停滞を見せた……。
そんな時、不意にラケニスからの呼び出しが来た。
彼女は、ユキヒトの情報でも入手したのだろうか?。
「ロゼ様、扉を開けましたよ。どうぞ……」
「ありがとう、行ってくるね」
私は、救護施設のイリスを訪ねラケニスの塔へと入った。
「ラケニス……、私に用事って何かしら?」
「うむ、まぁロゼよ、そこへ座ってから話を聞け」
珍しい事に、彼女は私の名前を呼んできた。何時もは、小娘から始まる彼女の話だが、どうにもこそばゆい気がして仕方ない、一体何を私に話すつもりなのか?。大きな椅子に肩肘着いて、偉そうな態度で笑っている、何時もの彼女の雰囲気とはどこか少し違う。
「単刀直入に言うぞ、ユキヒトはこの世界には居らぬ!」
「えっ!、貴女は彼が死んでいると言うの?」
「そうでは無い、そうは言っておらぬ」
この世界には、彼は居ない。
だが、死亡が確定した訳では無い……。
「わしは、小僧が国外へと飛んで居るのではないか?、と、世界中に使い魔を派遣してみた。お主を呼ぶまでに時間が掛かったのは、全ての使い魔が戻るのを待った為じゃ。結果は今言った通りじゃ、小僧はこの世界には存在せぬ……」
「………それって、七夜城と共に次元の闇にって意味?」
「お主達の話と、使い魔が何も得られなかった事を考えたら……」
私達が彼を捜索しても、タカが知れている。
まだ捜していない場所に、彼が生きて居ると信じたかった……。
彼女が言わんとした事は、ユキヒトを捜す為に、使い魔まで飛ばして隅々まで調べたが、どこにも痕跡が無い。ユキヒトが皇帝を倒した後、あの脱出劇の最中に彼だけが転移できず、七夜城と一緒に次元の彼方へと落ちてしまった。
もし彼の遺体と対面したら、私は泣き崩れてしまうだろう。
けど……、次元の彼方へ消えたのなら彼の遺体とさえ、対面出来ない。
私はラケニスの話を聞いた後、目から涙すら浮かべる事もでぎず、只座っていた。私の頭は真っ白になり、虚脱感だけが、私の心と体に圧し掛かっている。
生きた屍の様な顔をする私を前にして、彼女は言葉を続けた。
「だが、使い魔も万能ではない、行けぬ場所も在る」
「どういう事?」
「ふむ、強力な結界を施されている場所や、この世界と関っているが隔絶された場所には入れぬ。内緒じゃが、使い魔を飛ばす時と戻って来た時は、一瞬この塔の結界は解いている」
彼女の言葉は、絶望するにはまだ早いと、私には取れた。
「つまり、使い魔が入れない場所を捜せと?、彼はそこに居ると?」
「断言は出来ぬが、諦めるには早いのではないか?。のぉ小娘」
使い魔すら入れない場所に、ユキヒトは居るかもしれないと、彼女は言う。捜索場所が限定され、範囲が一瞬狭まった様に感じたが、強力な結界の場所や、関わりが在っても隔絶された場所?。そんな物を捜す事自体が、膨大な時間を費やすように想え、大きく溜息を吐いた。
有難うございました。