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第五話投稿です、よろしくお願いします。


ユキヒトが持っていたかもしれない刀が見付かったという。

しかし同所では、刀の傍に死体も確認されていた。


私達は、事の真偽を確めなければ成らない。そこに、最悪の結果が待っているのを覚悟して、私達は報告の場所であるドアの森の奥地、旧開拓村跡地へと向っている。先頭の地竜を駆るアネス、その見慣れた後姿を見ている内に、知り合って一年にも足らない彼女達と、もう随分と長い付き合いの友人に感じている自分がいる事に気が付いた。


この数ヶ月間の出来事を思えば、納得も出来る。

普通の友人達と、気楽に居られる様な事は何一つ無かった。

どれを取って考えてみても、命を賭けて切り抜けてきた。


いや……、一人はもう本当に命を失った。


もしあの時、時間を飛越えてなかったら。

更に二人が、命を亡くす処だった……。


〝そりゃそうよねぇ……〟


短い期間で、普通の友人以上の間柄に成ったのは、そういう危険な修羅場を幾度も切り抜けてきたからだ。翌々考えてたら、仰天するほど不思議な事では無いのかもしれない。


そんな事を考えている内に、開拓村へと到着した。

覚悟は出来ていた筈だけど、やはり鼓動が早まるのが分かった。


私達が到着すると、衛兵が駆け寄ってくる。


「発見した二つを安置してある場所へ、皆様を御案内します」


彼の言葉を聞いた後、私達の表情は強張った。

そして、全員が同一の心境に成っている事が分かる。


ユキヒトだったらどうしよう……


っと……。


安置場所に到着。

テントの中には、布を被せた死体と台の上には刀が在った。

私達の鼓動は、最大になり息苦しさを覚えた。


衛兵が、台から刀を取り私達に見せ、本人の物か確認を求めてきた。

アネスが受け取り、私達はその両手にある物を見詰めた。


「これは、間違い無いな……」

「ええ、ユキヒトの神殺しの刀だわ……」

「じゃあ……あの遺体は本当に、そんな……嫌ーっ!」


マリネは確認する前に、絶望してテントの床へ崩れた……。

全員の顔から血の気が引き、青ざめて行く。


「こちらも、御確認お願いします」


布に隠れた顔を見る事に、体が拒絶反応を起こし前へと進まない。

だが、私達には確認する義務が在る。


「ロゼ、お前が確認してくれ。私には無理だ……」

「そんな、私だって…………

「頼むロゼ……」


六人の目は縋る様にこっちを見詰め、私にユキヒトの死体か確認を求めている。彼の死に顔を、私に確認しろと?、誰か一人がその辛い責任を果たす事に成るのだが、その役を私に求めた。


衛兵は、腰を下ろすと横たわる遺体に被せた布を、ゆっくりと剥いでいく。

その腕と指に、全員の視線が集まる。


顔が現れる瞬間、今迄食入る様に見詰めた視線を背け、目を閉じた。しかし同じ行為を私だけは許されない、しっかりと遺体を確認するのが私に課せられた義務。




布から現れた顔は…………。

私の目が、確認したものは…………、ユキヒトでは無かった!。

緊張が一気に解き放たれ、私はその場にへたり込んでしまった。


「ユキヒトじゃないっ! 、皆……これは別人よ」

「良かったぁっ! 、ユキヒト様じゃなくて……」


マリネは、嬉しさと安堵のあまりうっかり本音を口に出し、良かったと発したが死者への冒涜に当る。彼女の気持ちは他人事では無い、下手したら全員が口にしたかった事、それを彼女が代弁してしまった。


「マリネっ! 、口を慎みなさい、死者に対しての冒涜よっ!」

「あっ! 、申し訳ありません……」

「ユキヒトでは無かったが、この者は誰だ?。何故この刀を持っていた?」

「誰か、この方に見覚えは無いのですか?」


見付かった刀は彼の物と断定したが、同時に発見された遺体は、ユキヒト本人ではなかった。ほっと安堵して、胸を撫で下ろしたのも束の間、この遺体が彼の物とは違った事が判明した事で、新たに別の疑問と謎が表面化してきた。


「この男の死因は?」

「これです……」


足の方の布を捲って、衛兵は私達に男の傷足に在る傷を見せた。

脹脛の辺りに、丸い赤い穴が在る蛇に噛まれた痕。


「ふむ、毒蛇に噛まれて死亡したのか……」

「はい」


死亡したのが誰なのかは、私達にも心当たりが無い、二つが発見された場所に移動する事にした。ひよっとしたら、その発見場所で何か手掛かりが残っているかもと、考えての事。


だが、期待虚しく何も見つける事は出来なかった。

彼が生きているなら、こんな場所に宝刀を放置するのは考え難い。

それとも、放置する必要があったのだろうか?。


遺体は私達の縁者では無い為、引き取れないが、宝刀は放置出来ない。

私達が、預かる事に成るのだけれど……。


「私は、剣の類は持った事かないしなぁ……」

「それは、私も同じだぞ」

「私も短剣しか……」


ハルとイリスは論外と思われ、残り二人のどちらかに彼の刀を預ける。

勿論、こういう事にすぐに食いつくのは。


「はいはいはいっ!、私が預かりますっ!」


やはりマリネが手を上げた……。

一応ズグロにも聞いてみたが、彼女は首を振った。


「マリネ殿が預かる事で、特に問題無いかと」

「そう……、じゃマリネ頼むわねっ!」

「はいっ! 、責任持って預かりますっ!」


ユキヒトが見付からない事で、刀を彼の代わりにしようと言うのか?。

如何にもそういう乙女っぽい事は、私は苦手だ……。


「では、マリネ……頼む」

「はい」


マリネは、アネスからユキヒトの刀を受け取ると。

大事そうに、抱きかかえた。


後に成って思い返すと、この時に私が受け取っていたら。

彼の居場所を、もう少し早く推測出来たのかも知れなかった。


結局、遺体はユキヒトでない事に安心し、宝刀のみを回収して私達は首都へと戻った。


その翌日、遺体は近くの農民の物と連絡が入った。七夜城から襲撃された時、森へと逃げた農民が遭難して彷徨っている内に、偶然にも宝刀を見つけた。命が助かり無事に外へと出れたら、売って金にしようと持っていたのだろうと。


そして運よく、開拓村駐屯地を発見した。

助かったと思った矢先に、毒蛇に噛まれ死亡した。

私達は、そう結論付けた。


っと、言うより他に想いつかなかった……。

刀だけが、森に残された事に付いては。

誰も、口にしなかった。







有難うございました。

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