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(二)

外伝の二話目です、よろしくお願いします。


 七夜城の脅威は、ハインデリア一国では済まない。

 この国が、陥落すれば当然の様に、近隣諸国へもその侵攻は開始される。

 私達が勝利した事で、近隣諸国も七夜城の脅威は去ったと言う事だ。


 勝利の報告は、瞬く間に拡がって行き、各国からの救援物資が我が国へと届いた。そのなかでも帝国からは、宮殿再建の為の人員と多額の費用が送られて来た。


 いまだに、帝国政府に対して懸念を抱く者も居て、大きな借りを作る事を避けるべきではないか?、との声も上がり、これに対してイリスが口を開いた。


「送られた人員と再建の資金は、兄上様の個人資産から送られた物です。帝国政府はこれに、直接関与していません、安心して御使い下さい」


 皇帝の妹から、そう言われると異を唱え様とした者も、一応の納得をした。

 この恩は、何時か返す事には成るだろうけど……。


 各国の援助で、ハイデ宮殿の再建は大幅に短縮される見込みに立った。父である皇王と皇后は、母の実家である元大公屋敷へと、居を一時的に移す事に成った。


「私は、首都を離れる事は……」

「御父様、亡き伯母様の墓参りに、丁度良いのではない?」

「だが、皆が必死で再建しておるのに私達だけが……」

「陛下……、私からもお願いします。久し振りに、二人で懐かしい場所にも」


 っと言う。だが本当の処は……、御父様に宮殿再建の現場をうろつかせない為の、御母様の機転だった。連日の様に、皇王から作業現場をウロウロされたのでは、現場で働く者達には邪魔でしょうがない!。


 結局、御母様の頼みを、御父様は断る事ができずじまいに終わり。

 翌日、二人は騎士団に護衛され出立した。


 首都の中央では、宮殿の再建が急速に進んで行く。


 後は━━━━。


「ユキヒト様が、無事に帰って来るのを待つだけですねっ!」

「うん、そうね……」


 〝本当にユキヒトは……、あの人は無事なの?〟


 私の心の中は、一抹の不安が消える事が無かった。直接彼の捜索に出向きたいが、皇王、皇后が留守にしている以上は、皇女の私が首都に残るしか無い。その代わり、アネスとラミカそしてズグロの三人が、数名の衛兵を連れて捜索に出てくれている。


 だが……。

 七日も過ぎても、彼女達から何の痕沙汰も無いのだ……。 

 私の不安を隠し切れない表情を見て取ったマリネ。


「ユキヒト様は、絶対に無事で帰って来ます!」

「マリネ……、ありがとう。うん彼はきっと戻って来る」


 夕日を背に、再建されて行く宮殿の傍。

 私とマリネの二人は、彼の無事な帰還を祈っていた。


 翌日、私は救護施設に足を運んだ。

 そこには、ハルとイリスが居る。

 今回は、イリスに用事がある、彼女に塔への扉を開けて貰うためだ。


 私設の屋上へ移動した後、イリスは次元扉を開いてくれた。

 戻って来るときは、ラケニスが開けてくれる。


「ロゼ様、私はまだ手伝いが残っているので戻りますね」

「うん、有難う。イリス」


 彼女は、今上ってきた階段を下って行き、私は扉へと足を入れた。

 ロケニスと話すのは、ズグロの居場所を聞いた時以来だけど、長いこの国の歴史の中でも、私達ほど伝説の魔女と対面した者も、少ないだろう。

 

 私達は三魔女と面識が有るだけでなく、第一の魔女とは戦いを経験。第三の魔女とは、一緒に戦った。第二の魔女に至っては、かなりの交流がある。


「もう来る頃だと想っていたぞ、小娘……」

「もう……、その小娘って言うのどうにか成らない?」

「実際、小娘じゃろうがぁ」


 五千歳の彼女からしたら、私なんか確かに小娘にしか…………。

 だが、今日はそんな事を問題にしに来た訳じゃない!。


「まぁ、主の用件はアレじゃろ?。何も問題は無い、見てみるか?」

「うん、見ても良いの?」

「当然じゃ……」


 私は以前、ニクスが攫われた一件でこの塔へと訪れた帰りに、ラケニスからの提案を受けて、掛け替えの無いものを彼女に預けている。今日は、それが無事な事を確認する為に、この塔へやって来たのが目的であり、私がそれをじっと見詰めていると彼女から話しかけられた。


「小娘に、それを戻す日は何時になるのかのぉ?」

「ちょっと……、もう少し預かっていて貰えない?」

「うむ、それは構わぬが……」


 今、それを戻されても困るのは目に見えている。

 周りの状況が、もっと落ち着いてから……。


「処で……、小僧はまだ見付からんのか?」

「ええ、アネス達が国中を回ってくれてるけど、まだ何も連絡が無いわ」

「あの戯け者が、何処をうろついて居るのやら……」

「もう良いわ……、私帰るわ」


 私が帰る事を告げると、ラケニスは扉を開いてくれた。

 扉を抜ける直前に、彼女から呼び止められた。


「わしも、使い魔で小僧を捜しておる、何かあれば主に伝えよう」

「うん、ありがとうラケニス。じゃ帰るわ……」

「全く、小娘一人に背負わすつもりかっ?、あの愚か者がっ!」

「…………」


 

 ◇   ◇   ◇



 私が、ラケニスの塔から戻った二日後。

 ユキヒトを捜索に行ったアネス達が首都へと帰還した。


「アネス、ユキヒトの手掛かりは……?」

 彼を見付けて連れているのなら、私が聞くまでも無く、大騒ぎに成っている。

 だが、彼女は首を横に振るだけ……。


「地竜を飛ばし、ほぼ全域を回っては見たのだが……」

「ロゼ様、申し訳有りません」 

「生きていれば、何処かの町か村に手掛かりが有るかと、想ったのですが」


 三人からの報告は、絶望を意味していた……。

 彼だけは、七夜城と共に深淵へと消えて行った?。


 

 悲しむ私達に、更に追い討ちをかける様な急報が、首都へともたらされた。


 それは、アデル領からの届いた知らせだった……。

 アデル領で何か起きたのだ。



 


 

有難うございました。

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