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竜人のまつわり

童話を書くつもりがどういう訳か下手な短編になった。それでもよければ、どうぞ。

 むかしむかし、あるところにふたりの兄妹がいました。

 兄の名はサリオン、妹の名はロレンナといい、二人は仲良く暮らしていました。

 ある日、妹のロレンナが熱で倒れました。兄のサリオンは懸命に看病をしましたが、ロレンナの熱は一向に下がりません。困ったサリオンは、町一番の祈祷師を呼んで、ロレンナを見てもらいました。

 悪夢にうなされているロレンナを見て、祈祷師はこう言いました。

「ロレンナは恐ろしい病魔に侵されている。ロレンナを助けるには、東の山にある廃城の庭に生える幻の薬草が必要だ」

 サリオンは早速幻の薬草を取りに行こうと家から出ようとしましたが、慌てた祈祷師に止められてしまいます。

「待ちなさい。東の山には恐怖の竜が住んでいるのだぞ。お前のような子供が行って、無事に帰ってこられる筈がない」

 しかし、サリオンの決意は固い。

「ロレンナを助けるためなら、どんな生き物だって怖くない!」

 最愛の妹に軽く口づけをしたサリオンは、家から飛び出しました。


 東の山の麓に到着したサリオンは、一度休憩を取ることにしました。町と東の山は遠く離れており、歩き続けてくたびれたからです。

 サリオンが大きな白い大岩に腰をおろすと、なんと大岩が喋り始めました。

「やあ、こんにちは。東の山に、何かようかい?」

「妹のロレンナを助けるために、幻の薬草を取りに行くんだ」

「幻の薬草だって? 幻の薬草は恐怖の竜の住処の近くに生えているんだよ。それでも行くのかい?」

「うん。ロレンナを助けるには、幻の薬草が無いといけないって祈祷師様が仰っていました」

「そうかい。それじゃあ、これを持っていくといい」

 大岩がそう言うと、なんとサリオンの右腕が光り輝き始めました。仰天するサリオンに、大岩はそれは武器だと言いました。

「その右腕を振るうと、三回だけ不思議な力が使える。危なくなったら使いなよ」

「どうもありがとう、大岩さん」

 サリオンがお礼を言うと、大岩は物言わぬ大岩に戻りました。

 休憩が終わって、いよいよサリオンは東の山に入りました。うっそうと茂る草木をかいくぐりながら進んでいると、トカゲが怪鳥に襲われていました。トカゲが可哀想に思えたサリオンは、大岩から授かった輝く手で怪鳥を殴りつけました。光り輝く腕は一瞬だけ大鬼の腕に化け、大鬼の腕に殴られた怪鳥は死にました。ところがトカゲは、お礼も言わずに逃げていきました。

「なんて恥知らずなトカゲだろう」

 しかしサリオンは気にせず、先に進むことにしました。

 森を抜けると、今度は沼地にたどり着きました。するとまたもやトカゲが沼地の中で襲われていました。今度は大蛇に襲われています。

「助けてー! 助けてー!」

 本当は無視して先を急ごうとしましたが、トカゲの哀れな叫び声を聞いて可哀想に思ったサリオンは、再び輝く手を振りかざしました。

 すると、一瞬だけ腕が凍てつく氷になり、大蛇の体ごと沼地が凍ってしまいました。

 今度こそトカゲからありがとうと言われるかと思ったサリオンですが、またしてもトカゲは一言も告げず姿を消していました。

「あの恩知らず! 今度は、助けてあげないぞ!」

 固く決心し、サリオンは三度歩き始めました。


 日が沈んだ頃、ようやくサリオンは廃城に着きました。

 ようやく幻の薬草が見つかると喜んだのも束の間、廃城から一匹の巨大な化け猫が現れました。

「おやおや、なんて美味しそうな小僧だ。どれ、今日のディナーにしてやろう」

 そう言うと、化け猫はサリオンに飛びかかりました。サリオンは咄嗟に輝く手を振りかざしましたが、輝く手は緑色に変色しただけで何も起こりません。サリオンはあっさりと化け猫に押し倒されてしまいました。

「輝く手か? そんなもの、俺には効かん。よし、まずは生意気なその腕から食ってやる」

 化け猫はベロりと舌なめずりをして、味見をするように輝きを失った腕を嘗め回しました。サリオンは恐ろしさのあまり、泣きそうになりました。

「うわははは、やはり美味いな、人間の小僧は。さあ、食ってやろう」

 ところがその時、化け猫が急に苦しみ始めました。

「ウワーッ! 痛たたた! 痛い!」

 たまらず化け猫は転げまわり、サリオンを離してしまいました。サリオンはその隙に廃城目掛けて走り出し、なんとか化け猫から逃れることが出来ました。

 ほっと一安心したサリオンですが、輝きを失った右腕を見て不安になりました。

「今、恐怖の竜が襲い掛かってきたら、一たまりもない!」

 サリオンは心の中で恐怖の竜と出会いませんように、と祈りながら庭を歩き回りました。

 しばらくすると、庭の片隅にほんのりと光る鮮やかな若草色の草が見つかりました。

「あった! 幻の薬草だ!」

 サリオンは大喜びでそっと幻の薬草を摘み取り、懐に仕舞いました。

 その時です。

 バサッ、バサッ

 大きな羽ばたきの音が聞こえ、サリオンの周りがサッと暗くなりました。恐る恐る振り返ると、そこには――月を背に構えた、巨大な竜がいたのです。

「きょ、恐怖の竜だ!」

 サリオンは恐怖のあまり、今度こそ泣き出してしまいました。そんなサリオンを見下ろしながら、恐怖の竜はゆっくりとサリオンの前に降り立ち、話しかけました。

「人間の子供、サリオンよ」

 そう言うと、震えるサリオンの目の前で恐怖の竜の体が縮んでいき……なんと、サリオンが何度も助けたトカゲになったではないか!

 呆気に取られたサリオンに、自分は邪悪な祈祷師に呪われてトカゲとなっていた事、化け猫に丸のみにされていた事、化け猫が舐めていた緑色の輝く手の成分が胃袋に入ってきた事で元の姿に戻れた事をトカゲが話しました。

「お前は三度も我の命を救ってくれた。お礼になんでも願いをかなえてやろう」

「それじゃあ、幻の薬草をください」

 懐から幻の薬草を取り出したサリオンに、元の姿に戻った恐怖の竜は頷きました。

「ああ、良いとも。なんなら、我が町まで送り返してやろう」

 それを聞いたサリオンは、大喜びでありがとうと言いました。夜が更けて、どう帰ろうか悩んでいたからです。

 サリオンは恐怖の竜の背に跨り、ロレンナの待つ町へと戻りました。


 町に到着した恐怖の竜は、再びトカゲの姿に戻りました。町の人々に見つかると、攻撃されてしまうからです。サリオンとトカゲは一緒に家へ戻りました。

「ロレンナ! 幻の薬草を採ってきたよ!」

「さ、サリオン? どうしてここに!?」

 しかし、そこにはロレンナを縄で縛り上げていた祈祷師がいました。祈祷師はロレンナに一目惚れしており、邪魔なサリオンがいなくなった時に、ロレンナを誘拐しようとしていたのです!

「お前! ロレンナに何してるんだ!」

「貴様! 邪悪な祈祷師だな!」

 サリオンがカッと怒って近くにあった鉈に手を伸ばした瞬間、半分だけ恐怖の竜に戻ったトカゲが、祈祷師に飛びかかりました。祈祷師は悲鳴を上げて逃げようとしましたが、トカゲは祈祷師の喉に噛みついて、殺してしまいました。恐怖の竜をトカゲに変えていたのは、この祈祷師だったのです。


 翌日。

「お兄ちゃん、恐怖の竜さん、ありがとう!」

 幻の薬草の力で、ロレンナは見違えたように回復していました。無事に治った妹を見て、サリオンは大喜びしました。

 しかし、このままこの町にいる訳にはいきません。トカゲが祈祷師を殺してしまったせいで、サリオンはこの町にいられなくなったからです。

 これからどうしよう、と頭を抱えたサリオンに、トカゲが言いました。

「よかったら、これから我の住処で暮らさないか?」

 恐怖の竜は、何度も命を救ってくれた上、自分のトカゲにした祈祷師に復讐させてくれたサリオンを大層気に入っており、また可愛らしいロレンナの事も気に入っていたのです。

「良いの?」

「やった! ありがとう!」

 トカゲの提案に、サリオンとロレンナは喜んで頷きました。

 二人は恐怖の竜と共に町を飛び出し、仲良く暮らしました。ロレンナと恐怖の竜は結婚し、サリオンは恐怖の竜の娘と結婚しました。二人と一竜の子孫たちは竜人と呼ばれるようになりますが、それはまだ先のお話。

                                      おしまい

気が向いたら短編として書き直します。

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