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Monochrome  作者: 自由帳
2章 -モノクロの虹-
9/11

-2- ハイシャ

 私はその後、野犬の死体は一先ず崩れていないビルの陰に置いておき、生き残りの捜索を再開する事にした。 

 秋特有の茜色の夕焼けが空を侵食していくのをマジマジと見つめて、人の気配すらしない廃墟の街に腰を下ろす。

 

 ――今回もまた私の思い過ごしだったのだろうか。

 

 数年前に貰った銃弾も、今じゃ数える程しかなくなっているのだ。それだけ頑張って来たのだから、もうそろそろ願いの一つくらい叶えてくれたって良いじゃないか、神様とやら。

 実際私は神様などを信じてはいないのだが、人並みに祈れば何かが変わる気がした。

 

 



 

 日が暮れだして数時間が経った。

 辺りは月光だけが照らす、暗い闇に包まれていて、私はと言うと、既に錆び付いたトラックの運転席にしゃがんでいた。

 結局生き残りの痕跡は見つからず、見つかったのはバケモノの大群だけ。

 今はそのバケモノから身を隠している状況だ。

 

「……本当に、何者なのあれ」

 拳銃に弾を込めて、夢遊病の人のようなバケモノを見る。

 人間である事は確かなのだが、やつらは確実に人間ではない。強いて言うのならば、やはりゾンビなのだ。

 

 そのゾンビ(と、呼ぶことにする)は、軍人や女性の姿、子供と様々な形をしているのだから、やはり彼らは元々人間であったと考えるのが妥当だ。

 

 変化の原因は新種のウイルスや寄生虫か、或いは軍の作り出した出来損ないの兵器か――そんな所なのだろう。

 それじゃまるで子供の頃に見た、古い映画のようだ。

「本当に映画なら、私はここで生き延びるはずなのだけれど……」

 生憎、今の状況は芳しくない。

 夕方野犬に噛まれた後が痛んで、左腕は満足に動かせそうにないし、私に残された銃弾はわずか十発。

 そして周囲にはゾンビが、少なくとも五十以上はいるだろう。

 

 だが、策が全く無い訳では無い。

 

 一つ目の選択肢は、ここに朝まで身を潜める事。

 これは完全にやつら次第の賭けだ、仮にやつらが私に気づいたら、まず間違いなく死ぬ事になる。

 

 二つ目は何処か近くの建物に逃げ込む事。

 私の考えが正しければ、やつらは暗闇の中で私を確認する事は不可能だろうし、何よりも建物となれば囲まれる事を防ぎやすい。

 問題は「音」だ。

 トラックのドアを開けたら、やつらはその音に反応して私に襲い掛かるだろう。

 同じ理由で、銃を使うのも好ましくない。

 

 最後に三つ目、神様とやらに祈って、少ない銃弾でやつらと戦うって選択肢だ。 

 

 どれも馬鹿らしい。

 ならば四つ目を作ろう。

 手にある拳銃を咥えて、引き金を引くという選択肢。

 

「……二つ目が得策ね」

 

 トラックの助手席に置かれていた、消防車から奪ってきたであろう斧を手に持って、タイミングを伺う。

 見えはしないが、こちらも耳には自信がある。足音と唸り声で、ゾンビ共の居場所を把握する。

 

 ……今だ。

 

 ドアを勢いよく開け、前方にあるビルの入口に向かって走り出した。

 案の定ゾンビ共は音に反応して、トラックの方へと群がっていくのが、月明かりで見えた。

 そう、見えてしまった。

 つまり、見られてしまった。

 

 ゾンビ共は私の方に身体を向け、ものすごい速度で私の方に向かい始めたのだ。

 その距離、僅か200mと言ったところだ。

 足にも自信はあるが、如何せんこちらは腕を負傷しているし、斧も持っている。

 ビルに入れるかどうかは、五分五分と言ったところだ。

 

「前方には二体……やるしかないわね」

 トラックとは別方向、ビル側のゾンビも私の存在に気づき、こちらに走り出した。

 

 子供二体。斧だけで十分な相手だ。

 

 斧を構えた僅か二秒後、私はゼロ距離でゾンビの顔に斧を振りかざした。

 酷い臭いと、不快な感触が手に伝う。

 

「次!」

 

 斧を顔から抜いている暇などなく、二体目のゾンビに蹴りを入れる。

 ゾンビは奇声を上げて、地面に崩れ落ちた。どうやら運良く一撃で首が折れたようだ。

 

 と、そんな感想を言っている場合ではない。

 既に手の届く距離までゾンビが後ろについていて、少しでも脚を止めたら餌食だ。

 

「詰んでるわ……」

 

 ビルに入ったところで、逃げ切れる保証は全く持って無い。中にゾンビが溜まっていたら、有無を言わさずはさみ打ちだ。

 だが、悩んでる場合じゃない。

 

 ビルの扉は開いている……開いている? おかしい。先程までは閉まっていたはずなのに……。

 

「遅い!! あんた死にたいの!?」

 

 その疑問の答えを出すかのように、ビルの中から出てきたのは人間。

 暗くてよく見えないが、ゾンビではない人間。

 

 ここに来て、私が求めていた生き残りが、都合良くもこんな状況で現れたのだ。

 

「あーもう!! ちょっと撃つから当たんなよ!!」

 

 求めていたものまでの距離、おおよそ300m。






作者さえ予想してなかった展開に向かいつつあります。ここからどうなるのか、どうすればいいのか、誰か教えてください。

果たしてこの生き残り、何者なんでしょうね……?作者にもまだわかりません。

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