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売られた喧嘩は色を付けて買いましょう

試合場に二つの人影が立っていた。一つは筋骨隆々で如何にも場慣れした空気を持つ中年男性。

もう一つは、全体的に細いシルエットだが、よく見ると極限まで無駄を削ぎ落とし、絞り込まれた筋肉を持った、髪から肌の隅まで真っ白な青年。


彼らは互いに向き合い、男はニタニタと笑いながら青年に視線を向け、青年はそれを興味なさげに受け流している。


男の名はグリム。通称“新人潰しのグリム”。貴族の次男などの金にモノを言わせた装備の新人ハンターに絡み、賭けなどで装備を剥ぎ取るギルドの膿として知られる男だ。しかも、ギルドランクはBなのでギルドも下手に口を出せないでいた。


そして、青年の名はタクト・Q・ダグラス。グリムは苗字を持っているから貴族の次男か何かかと勘違いしているが、周知の通りゾンビである。今さっき登録したばかりのランクGのハンターである。


二人がそれぞれ賭けたのは、グリムは勝ったら相手の装備と所持金を全て自分に譲ること。これに対しタクトが賭けたのは、グリムのハンターカードとギルドランクの返上。


遂に受付嬢がコインを弾いた。


試合が始まった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


俺は今、信じられねぇ状況を見ている…何だこりゃ!?一体俺は悪い夢でも見てんのか!?

何で俺の剣が一掠りもしねぇんだ!?スキル・身体強化:クイックアップを使って四倍速になってるんだぞ!?

あり得ないあり得ないあり得ない!!!


「…遅いな」


!?な、これで遅い…だと!?コイツ本当に新人か!?こんな動きベテランでもそうそう居ないぞ!?


「くっ!身体強化・クイックアップ並列作動!」


これでどうだ!?クイックアップを三つ並列作動させれば三乗の六十四倍速だ!


「お、少し速くなった…でも大差ねぇな…」


は!?そんな馬鹿な!?人智を超えた動きと言われてるんだぞ!?これはBランクでも使えるのは俺だけたのに!


「じゃあ、少しスキル使うか」


……へ?今迄のその動きは素なのかよ?

嘘だ!?そんなのあり得ねぇ!人がそんなに速く動けるはずがない!


「スキル・身体強化・・・・


スキル…身体強化…だと?何だそれは!?


「ふざけるな!何だそれは!?身体強化はスキルの大元の項目みたいなやつだろ!?そんなスキル何処の書物にも話にも出たことはないぞ!?」

「そうなの?まぁ、使えそうだから行くぞ?」


そいつはそう言った直後俺の視界から消えた。その瞬間何故か、死の予感が脳裏を過ぎった。慌ててそこから横に走って逃げた。途端、俺の居た石造りの床にクレーターが出来た。しかも走って逃げた俺の足元ニセンチ程の所まで抉ってやがる。

そして、ヤツから当てられたのは.今迄感じた事のない程の濃密な、俺自身の死んだ姿すら脳裏に浮かぶ程の殺気だった。


やべぇやべぇ…殺される……!


「はひゅっはひゅっ…助けて…!」


多分俺は凄い顔になっているのだろう。それでもいい!死にたくねぇ!あぁ、こんな事になるならもっとまともに過ごしていれば良かった!

股の間から何か温かい液体が漏れている。きっと漏らしたんだな、俺は…


「あれ?やり過ぎた?受付嬢さーん、これって俺の勝ちで良いですか?」


は?殺されないのか俺は…

助かった助かった助かった助かった!!!

もう嫌だ、こんな目に会うくらいならハンターなんぞ辞めてやる!これ以外でも稼ぐ方法はあるんだ!

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