ということで……
臨時教師 一日目
「え~、今日から臨時教師兼生徒としてこの学園に入学することになった、柊 優耶です。皆、同じ年なのでタメ口でいいですよ。ではよろしくお願いします」
あれから半月が過ぎ、ついに入学式の日になった。
俺と綾沙美冬華はあくまで臨時教師ということで、甘崎学園の生徒として入学式に出席していたわけだが、終わった途端職員室に呼び出されてしまい、挙句の果てこうして13HRの教壇にあがり自己紹介する羽目になってしまった。
「同じく綾沙美冬華です。よろしくお願いします」
幸い別々に指導するのは無理だと判断されたのか、冬華とは同じ組を任されることになっている。
「は~い。皆さん、この子達は教師同然なのでこの子達が授業を補佐している時などはちゃんと先生をつけるように!」
横から入ってきたのがこの組の担任だ。名前は夕陽ヶ丘幸
「え~、でもさっき優耶くんがタメでいいって」
「普段は構いません、限定的です。それから、私への敬語も忘れぬように。いいですか?」
幸は視線を鋭くした。それによりさっき質問した軽い感じの生徒が萎縮してしまっている。
「……他に質問がある生徒はいますか?」
つい先程の先生を見て質問する気をなくしてるのが大半。質問がないのが一人を除いて残りの人。そして居眠りをしてるのが一人。
その一人は、机に突っ伏していて顔が見えない。
幸が生徒の座席表を見て寝ている者を呼んだ。
「奏月葉! 起きなさい!!」
「――え⁉ 葉⁉」
慌てて俺たち臨時教師にも配られている座席表を見る。
そこには確かに奏月葉の文字があった。
「ん~、なんすか~」
葉がのそのそと顔を上げた。寝ぼけ眼で辺りを見回す。
そして
「ありあとーございあしたー」
なぜか挨拶した。
「まだ終わっていませんよ! まったくしっかり起きてなさい、HR中ですよ!」
幸先生は結構お怒りだった。
めんどくさい雰囲気だな。
優耶はこういう雰囲気が苦手なのだ。どっちかって言うと幸も苦手。
「そこの君。一発ギャグをしなさい」
「え? 俺っすか? なんでそんなこと――ってお前優耶じゃねぇか!!」
俺が冗談を言うと、ようやく俺の存在に気づいたようだ。
「よっす。お前も受かってたんだな。おめでと」
「あ、ありがと――じゃねぇ!! なんでお前はそっち側なんだ! 試験の時も急にいなくなりやがって」
あ、そっか。何も言ってなかったもんな。
気づけばもう俺と葉の会話で教室の雰囲気が和らいでいた。
「し、静かにっ! とりあえず、一旦HRを終わりにします。起立! 礼!」
さすがにこのままではダメだと思ったのか、足早にHRを終わらせた。
ほとんどの生徒は、突然の号令については行けていなかったが。
それより葉だ。彼は魔法を使えないはずだ。それがなぜこの魔法学校的なところに入学できたのか?
とりあえず気になったので聞いてみることにした。というか、話しかける前に話しかけてきた。
「いや~、入学できてよかったわー。どんな試験やるのかと思ったけど、変な円柱のでかい筒に入ってじっとしてるだけでいいなんてなー」
なんだそりゃ?
ツッコミたくなったがなんとなく仕組みは理解できた。
多分、その筒が魔力か何かを測るためのものなのだろう。
そこで葉は引っかからなかった。少なくとも、入学できるほどの素質は持っているのだろうな。
優耶はそう判断した。
「なんだそりゃ……」
他に言うこともなく結局口に出していたが。
「まぁ、なんだー。これからも宜しくなっ!」
「……へへっ、おうッッ!」