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太陽のひかり  作者: full moon
4/4

寂寥感




将はずっと忙しい中だが時間ができてはなるべく妹の傍にいて、親代わりとなり、小さい頃から光の面倒を見ていた。




「光!泣くな!お兄ちゃんがついてるからな。」


事故のあの日、病院から帰る間に、泣き続けるまだ小さい光に何度もささやいたその言葉。


兄の優しい励ましの言葉に光の涙は止まった。

将は妹のために、恋人も作らず、常に傍にいてあげた。

むしろ、妹を恋人のように扱っていたので、気にしなかった。

逆に光は恐れていることが一つある。

もし、将に恋人ができて結婚してしまったら、もう将の傍にはいられなくなる。

ただでさえ将が昇進してから、一緒にいられる時間も話す時間も少なくなっている。

恋人の傍にいて、もう自分の相手をしてもらえないと思うと怖かったのだ。

これ以上わがままも言えない。将に迷惑をかけている自分が本当に情けないと光は自己嫌悪する。

シャンプーを髪全体に泡で張ると、両手でグシャッとショートヘアを握りしめた。


お風呂から上がると、兄がいる部屋のドアをノックした。


「お兄ちゃん。」


「ん?光か。入りな。」


ゆっくりドアが開き、光の姿が現れた。


「どうした。」


警察関係の資料を整理していた将は優しい表情をして微笑んだ。

光も微笑み返したが、すぐに笑顔は消えた。


「・・・あのね、今夜、一緒に寝たいんだけど・・・。」


「え・・・?」


おやすみを言った時は元気そうだったのに、急にどうしたのだろう。

そう思いつつ、またにっこり微笑み、


「まったく・・・。まだ子供だな!おいで。」


優しく声をかけた。


将は部屋の電気を消し、布団の中に入った。

光を自分のほうへ抱き寄せると、光の背中が震えているのに気付いた。

将は光の頭を撫でて問う。


「どうかしたのか。」


「・・・。」


光はその問いに答えず、背中の震えは増していくばかりだった。

将は気を遣ってそれ以上は聞かなかった。


「落ち着いたらなんでも話せよ。俺は、いつでも光の傍にいるからな。」


その優しい言葉に安心したのか、光の震えは止まり頷いた。

将もひとまず安心して微笑み、目を閉じた。




朝が来た。東の空から朝日が顔を出し、将の部屋にも太陽の光が差し込んだ。

窓の外には真っ白い雪景色が広がっていた。

将は携帯のアラームで目覚めた。

将の腕の中にいる光はまだ眠っていた。

よく眠っているので安心した。


「光、おはよう。朝だぞ。」


「ん・・・。おはよう。何時?」


「6時ジャスト。もう行かないとな。」


どうして自分が将の部屋にいるのか自覚がなかったが、少し時間が流れて思い出す。


「そ、そっか!ありがと。お兄ちゃん。」


少し照れてお礼を言った。


「言いたいことあったら、いつでも言えよな。」


「うん!」

言えるわけがない。こんなことで悩んでいるなんて飽きられる。

将に見られないように後ろを向いて、曇った表情を隠しつつ、心の中でつぶやいた。


自分の部屋に戻り、北条高校の制服に着替えた。

将もスーツに着替え、仕度をして玄関へ向かった。


「行ってきます!」


光はその声に反応し、玄関へ走って行った。


「お兄ちゃん、今日は何時ごろ帰れるの?」


「・・・わからない。なるべく早く帰るから。」


「・・・わかった!行ってらっしゃい!」


少し残念そうな顔をしたが、すぐに笑みを作った。

将も微笑みを返して光の額に口づけた。


「行ってきます。」


そう言って玄関から出て行った。

最近の光は、兄が離れていくと、寂寥感が襲う。

しかし、いつまでも兄に甘えてはいけないと自分に言い聞かせ、

通学かばんと部活用のエナメルバックを肩にかけて外へと出た。




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