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太陽のひかり  作者: full moon
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ぬくもり



希と別れ、光は自分が帰るべきところへ帰る。

親戚の宮野邸である。大きくて立派な建物の主である宮野隆文みやの たかふみ

北条病院に勤める医師である。

宮野の娘、25歳の真里も、看護師となって宮野を手伝っている。


「ただいま~!」


いつものように、玄関で大きな声で宮野達に届くように叫んだ。


「お帰りなさい。」


真里が玄関まで光を迎えに来てくれた。

明るい茶髪のロングヘアで、身長は170センチある綺麗な真里に、光も憧れているのに。


「真里さん!今日は仕事早かったんですね。」


「ええ。でも、今日は早く上がらせてもらったの。風邪ひいちゃってね。患者さんに、うつすわけにはいかないでしょ。」


「確かに!」


「夕食、もうできてるわ。父さんも帰っているのよ。一緒に食べましょう。」


「はい!わぁ~い おじさんも!」


ずっと空腹だった光のお腹から音が鳴る。

二人は笑いながらキッチンに向かった。

テーブルの上にはカレーライスが並べられ、おいしそうな香りが漂っている。

光は宮野親子に今日の出来事などを伝える。

無邪気な光に二人は微笑みを浮かべ、うなずきながら話を聞いていた。


「ただいま~!」


玄関のほうから低い声が響き渡り、三人の耳に届いた。


「あ、お兄ちゃんだ!お兄ちゃん!!」


テーブルの椅子から立ち上がり、玄関にいる兄のところへ走って行った。


「お兄ちゃん!お帰り!」


「光。ただいま。」


将は幼子のように駆けつけてくる光を見て、なにか良いことでもあったのだろうかと思いつつ、

柔らかく微笑んで光の頭を撫でる。


「今日は早かったね!珍しい!」


「ああ、今日捕まえた子は意外にも素直の子ばかりだったからな。」


「そうなんだ!(それはきっとお兄ちゃんの怖い顔に耐えられなかったから…なんて言えない。)」


将は巡査部長に昇進してから夜中に帰ってくることがしょっちゅうになってしまった。」

だから光は兄がいつもより早く帰ってきたことがとても嬉しかったのだ。


「夕食、真里さんがカレー作ってくれてるから、食べよう!!」


「ああ。」


将は着替えをすました後、キッチンで宮野親子と妹と楽しく会話をはずませた。

4人そろって食事をするのは1か月ぶりである。

全員が嬉しく思い、そんな中、宮野の親父ギャグが連発する。笑顔がたくさん溢れた。

あっという間に時間が過ぎ、4人とも自分の部屋に戻った。

光は、次はいつそろうのだろうと、少しさみしさを感じながら、北条高校の量の多い宿題に取り掛かった。


外はしんしんと雪が降り始め、気温はぐっと下がっていった。

そして北条市は真っ白な世界に変わっていった。

光はペンを走らせつつ、眠そうな表情に変わっていく。


コンコン


「光?風呂空いたぞ。」

急に響いたノックの音と扉の向こうの声は確かに現実のもの。

将が風呂に上がったことを知らせに来たのだ。


「は~い!問題が解けたら行くね。」


光は気を引き締め、ペンを加速させていった。


「よし、できた!」


シャーペンを置いて椅子にもたれかかり、背伸びをした後に着替えを手にし、扉を開けた。

廊下にはまだ将の後姿があった。将は扉の音に反応し、光のほうに顔を向けた。

光は風呂から上がったら、久しぶりにゆっくり話がしたいと伝えようとする前に、

先に将が言葉を発した。


「俺、明日も早いから寝るな。」


光は少しショックだったが、仕方ないと諦め、無理やり笑顔をつくって頷いた。


「わかった。」


本当は少しでも話がしたいと言いたかったのだが、疲れている将の様子を見てやむを得なかった。


「おやすみ。光。」


下をむく光の顔を上げ、頬に口づけ、部屋に戻っていった。

将は数年、欧米に留学したことがあるせいか、外国人が挨拶代わりにキスをする習慣がうつったようだ。

光は自分より大きな兄の背中を見つめながら、早歩きでお風呂場へ向かった。




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