新たなる道
私はそう言うと、能力を駆使し、みんなを燃やした。赤い炎が私以外のみんなを
一人一人包みこむ。……が、実際に燃えているのではない。さすがに私も機内で
燃える炎を使うほど馬鹿ではない。そう、これは、燃えない炎なのだ。志保ちゃ
んは叫び、蘭子はどういうこと、ちょっと、止めなさいよ、とのんびりした声だ
ったが、親友の私にしかわからない焦りが確実に入っていた。高校生は冷静に、
ねえ、僕殺したら、おばさんも死んじゃうよ? と、そのとたんに、ガタン、と
一瞬飛行機が揺れた。 このガキャー、かわいくない! 残りの副機長らしき、
人物は辺りをキョロキョロしている。私は説明した。
「この炎は真実を炙りだす。死ぬわけじゃないので、安心して。そして、犯人が
、わかったわ」
私は炎を消した。
「え? 誰なの?」
蘭子はまだ白々しく、知らないふりを通している。
「もう、わかってんのよ、蘭子! と、あんたよ、あんた。そこの、苦い顔して
る(ように見える)高校生! あんた達、わかりやすいのよ! 志保ちゃんの反応
は当然、蘭子は声にでていたし、高校生は冷静を装おっていたけど、顔に出てる
。……なんてね。まあ、何よりの決め手は副機長。彼は私の炎に気づいてない。
つまり、能力者ではない。自分の体が燃えて(いるように見えて)演技ができる生
物などいない。わかった!?」
高校生がいきなり、
「チクショー、こうなったら、全員、海のもくずだぁー!」
と飛行機を右へ左へ傾け始めた。
その後、後ろ(私達の方)を向き、満面の笑顔で、
「なーんて、行動にでたらどうします?」
なんて言うもんだから、私はぺたり、とその場に座りこんでしまった。
心臓が止まるかと思った。横を見ると志保ちゃんも座りこんでいて、後ろ(乗客席
の方)を見て口をパクパクしていた。
「機長!」
え? そこには確かにパイロットの制服を着た人物が立っていた。その人物は、
「合格だ、おめでとう!」
と、私に握手を求めて来た。……、え~と、
「これはどういうことかしら?」
蘭子に尋ねると、
蘭子はかわいらしく(憎々しく)舌を出し、ウインクすると、
「ごめんねぇ~。これは試験だったのよ」
まだわからない。
高校生は
「そう、け・い・さ・つ・の」
私は間をおいて、やっと理解した。
「はぁ~? どういうことよ、蘭子!ことと次第によっては!」
私は手のひらで炎を転がす。半分本気だ。
「ちょっと、待ってよ、ストップよ、スト~ップ」
蘭子が慌ている中、機長が間に入りこんできて、胸を反らすと、咳払いし、
「太手君。近年、起こっている原因不明の事件達を知っているね?」
私はやや、怒りぎみに、
「知ってるわよ、それが能力者の仕業だってことも知っている、それが、今回の
ことと何が、関係あるの!!」
高校生はにへらっとして、
「簡単に言えば、ね。警察で解決できない、能力者に
よる事件を解決するのが、僕ら、特殊捜査課、なんだよね。もちろん、蘭子さん
も所属しているよ。おばちゃんはその試験に合格したわけ」
志保ちゃんの方を見ると、何故か泣きそうな顔をしていたが、立ち上がると、
「私も、やります。やりたいです。不合格だったかもしれないけど、誰もが能力
を手に入れることができる訳じゃありません。この能力を、人の為に活かしたい
、ダメですか?」
機長はにっこり笑うと、
「よし、君も合格!この試験は人間性をみるためのものなのだからね」
私はさっきから、無視されてる気がする……。壁を叩くと、
「ちょっと、私の考え、無視? さっきから聞いていれば、勝手に人を試して、
合格。とか、何なの!? 一体。私はしないよ」
蘭子は私の近くに寄ると、私に耳打ちした。
「あの、事件、解決したくないの? 梨花ちゃんが……」
「あの事件は、事故だったのよ」
そう、私はそう思ってきた。当時五歳の孫、梨花は……。目を離した隙に、プー
ルで溺れ……。
「違うのよ、能力による解析で、あれは能力者による仕業だってわかったのよ。
それも、相手の動きを止める能力者。私の能力は、わかるわよね?」
「物に残る記憶や想いをたどれる能力者……あ」
「そういうこと」
私は理解し、納得した。そして、
「わかったわ、でも、スイスへの旅行の後よね?」
機長は、またしても、無意味に胸を反らし、
「はっはっは、スイス旅行等、君らをだますための、嘘だ。私は幻をみせる、能
力者。当然、乗客等いないし、同じところを回っているだけだったのだよ。景色
も能力での私の創作だ。太手君、君が乗ってから眠るまでの一時間くらいしかた
っていないよ」
私は、両目を光らせ、そして。
「あんたねぇ~、何様のつもりよぉ~!」
「太手さん、首ねっこを掴んで揺さぶるのは危険です」
と、志保ちゃん。
蘭子はやれやれ、とオーバーリアクションし、高校生は、微笑し、
「先が思いやられるなぁ」
と、一言。
何はともあれ、ここから、私達の警察としての仕事が始まったのだった。しかし
、この時点で、私の想いに気づいているものはいないだろう。
そう、梨花の敵を取りたい。あれが、能力者の仕業だってんなら、私は何でも利
用してやる、そう、こいつらでさえも。
という想いに。
更新に……一年ぐらいかかったのかな?
一週間に一回はおばちゃんの力か、いしの力改訂版か、今世紀に俺ができることを更新したいなあ。
なかなか忙しいのですが、頑張りたいと思います。