最終手段~人は人によって裁かれる
高校生は、こちらに振り向き、クス、と口の端で笑うと、
「この飛行機、自動操縦になってないよ」
とニコニコしながら言うのだった。
志保ちゃんは、
「え?そんなはずありません。今だって……」
高校生は携帯電話についているストラップに指を入れ、携帯電話をくるくる回し
ながら、
「これ、僕の能力」
と、軽く言ったが、私達は驚いた。同じ空間内に能力者が少なくとも、四人。犯
人を合わせて五人、もしかしたらそれ以上いるかもしれない。
詳しく説明を訊くと、機械を操る能力者らしい。ガタン、と音がしたので、操縦
室に何かあったな、と思い、行ってみたら、誰もいなかったと言う。
このままではまずい、と思った高校生は能力を駆使し、
飛行機を操縦することに決めた、つまり、そういうことらしい。
志保ちゃんが、私達も能力者なんです、と説明した。
高校生はどうりで驚かないはずだ、と言い、話を続けた。
「でも、僕の能力でも、この大きさ、飛行の維持が精一杯なんだよ。コントロー
ルが難しいんだ。だから、時間稼ぎにしかならないかもね」
と、さらりと言った。
ここで一つの疑問を抱いた。私は
「あんたが犯人で私達をごまかしているってことは? あんたの身の潔白を証明
するものは?」
と、高校生に訊いた。
今度は高校生がキリッとした顔をして、
「僕が犯人だったら、こんなところにゆっくりいないね」
と声をはりつめて、言った。
蘭子は、なるほど、と頷いていた。
「確かにそうね」
私も納得した。
志保ちゃんは、でもでも、と、
「じゃあ、あなたがきたとき誰もいなかったんですよね? じゃあ、犯人は誰な
んですか?」
高校生は余裕を持った声で、僕にはわからない、と言うと、
「だからさ、犯人、見つけてきてよ」
とニコニコ顔で言うのだった。
私が、
「本当に、何もなかったの?」
と、半信半疑になっていると、高校生はそう言えば、と言い、ポケットからこん
な石が二つ落ちていたよ。と、私に石を手渡した。
私は蘭子にこの石を渡し、能力を使ってもらった。
すると、蘭子は、驚くべきことに、
「この石、生きてる。おそらく、機長と副機長だわ」
「え……」
志保ちゃんの口から声が漏れた。
私は
「つまり、こういうことよね、犯人は何らかの目的を持って機長、副機長を石に
した」
蘭子は、そうだと思うけど、と言うと、
「ちょっと、待って。まだ誰かが操縦してる、とわかったら、犯人、ここに来る
んじゃない」
あ。と、三人で顔を見合わせた。
その時、ガチャ、と操縦室の扉が開いた。私は固唾をのんで、見ていると、
入ってきた男性が、
「犯人は、その高校生と三十路の女だ」
と言うのと、志保ちゃんが、副機長!というのが、ほぼ同時だった。
私は、動かないで、そこで話して。と促した。
後ろから何か薬品を嗅がされ、気を失う寸前に後ろを向くと、蘭子と高校生がい
たと言う。確実ではないが、たぶん、確かだと言う。
志保ちゃんが言うには、確かに副機長だと言うし、
……。考えられることは、まず、この男性が能力者で、
副機長に化けている。次に考えられることは志保ちゃんと男性がグル。そして考
えたくないが、私は蘭子の方をちらっと見た。蘭子は
「何、私を疑っているの?」
私はちょっと、黙っててと制止した。ついでに今から一歩でも動いた奴、焼き殺
すから、とつけたした。
最後は蘭子と高校生がグル。蘭子と高校生が犯人の場合、犯人は男性と、他にい
るかもしれない。志保ちゃんと男性が犯人の場合、えーと、あー、もうこんがら
がる~。決めた、自分の身に危険が及ぶよりマシだ。私は、かわいい声で、(高校
生のマネ)
「ゴメン、みんな死んじゃって」
なんか高校試験の時にもらった、だるまに髪が生えてます。
別に心霊現象などではなく、埃が……。
拭いてあげたほうがいいのかなあ。