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帝国のつくり方  作者: ムックk
開拓編
37/37

37話   初陣

 俺が命令を下してから二十秒ほどの時間が立った頃、各艦が先頭を航行する敵軽巡に向けて一斉に砲撃を開始した。

 レールガン八門とビーム砲十六門、それはあまりにも無慈悲な暴力だった。

 砲撃が開始されてから数秒後、全弾が狂いもなく正確に命中した敵軽巡は、大きな爆発とともに宇宙の塵となったのだ。

 

 「敵軽巡に全弾命中、撃沈を確認!」


 艦橋のロボットが、機械的な音声で正確にそう伝える。


 「よし....................!」


 俺はその報告を聞きながら、少し高揚した声でそう呟いた。

 だが、喜んでいる暇などない。

 すぐさま俺は、命令を下した。


 「二隻目の軽巡に照準を合わせろ! 間髪入れずに撃沈する!」


 だが、敵も手練れだ、当然体制を立て直してくる

 すぐに、距離を取っていた敵駆逐艦がものすごい速さで迫ってきた。

 俺は、駆逐艦を相手にするために、次の命令を考える。

 だが、俺が命令を考えている間に、ガスターが命令を下した。


 「アイゼンヘルツとドンナーは駆逐艦を迎撃しろ! 本艦とレーヴェは、グレースの命令通りに敵軽巡を仕留める!」


 その指令は、最高司令官の俺の命令を的確に補強するものだった。

 やはりガスターはすごい、この時から軍人としてのセンスを存分に発揮していたのだ。




 俺とガスターの命令を受けた各艦は、すぐさまその指示どおりに行動を開始した。

 宙賊は照準器が粗悪だったのかもしれない。

 そのおかげか、俺達の艦隊は命中弾を受けることなく一方的に戦闘を進めていった。

 戦闘開始から五分で、二隻目の敵軽巡が撃沈。

 そしてその二分後には、後を追うように、敵の駆逐艦が二隻沈んだ。

 それを見たからだろうか、残っていた二隻の内、一隻は逃走、残るもう一隻は降伏という行動を取ったのだった。

 何はともあれ、俺達の初陣は、俺達の圧倒的な勝利であっけなく終わったのだった。




 「あんたら、艦隊を指揮できる人材を探しているだろ?」


 戦闘終了から約一時間が立った頃、俺達の旗艦アドラーの艦橋にて、投降してきた駆逐艦の艦長らしき男はそう言った。

 男の名は「グライム」、真っ白な髪と、碧色の瞳をもつ南米系の整った顔立ちのイケメンだ。

 投降してきて俺達の捕虜となったにもかかわらず、こうも堂々と言えるのは大したものだ。

 俺がそんなことを思っているのをきにせず、男は話を続ける。


 「さっきの戦いを見ていてわかったが、ありゃまるで素人の戦術だ、陣形もクソもない。

 そんなんでもあんたたちが勝利したのは、持つ軍艦の性能差が原因だろう。」


 グライムは、俺達の痛いところを完全についてそう言った。

 たしかに、今思い返してみればこの戦いで俺達が飛ばした命令は、かなりひどいものであった。

 「軍艦の性能差でなんとか勝った」、まさにその言葉は的確なものであった。

 だが、このときの俺はそのことを認めようとせずに、グライムに対してキレそうになってしまった。

 

 「やめろグレース、こいつの言っていることは、悔しいがすべて合っている................」


 ガスターがそう言って、俺を止めた。

 だが、そんなことで俺の怒気が収まる気はしなかった。

 しかし、次のことを聞いた瞬間、俺の怒気は完全に収められてしまった。


 「しかし、敗者がいくらこう言ったって負け犬の遠吠えだ、好きにしろ..........」


 このことを聞くまでは、ただの負けた悔しさからなにかをほざいている奴としか思っていなかった。

 しかし、この男は敗者という立場を理解していて言っていたのだ。

 そして、最後に言った「好きにしろ..........」この言葉に俺の怒気は収められたのだ。


 「気に入った! お前、俺の部下になれ!」


 気づいたら俺はそう言っていた。




 しかし、男は少し笑いながら言った。


 「おいおい、冗談だろ? 俺は投降した、いわば逃亡者だ。

 部下に加えたところで、またいつ逃亡するかわからんぞ?」


 グライムの言ったことは、当然のことだった。

 普通、こんなのを信じるやつはいないだろう。

 しかしこのときの俺は、グライムが宙賊に不満をいだいているから降伏したんではないかと思っていた。

 そのことがわかるのが、生き残ったもう一隻の駆逐艦の様子からうかがえる。

 駆逐艦なら、軽巡よりもはるかに素早い足を持っているので、俺達の艦隊から逃走することなんて簡単なもんだ。

 しかし、グライムはあえて「投降」という選択肢を選んだ。

 なんの交渉材料を持たないのに捕虜になったら、相手によっては殺されるかもしれないのにだ。

 このことから、グライムが所属している宙賊という組織にかなりの不満をいだいていることが安易に想像することが出来た。

 

 「投降したのは、所属していた「宙賊」という組織がクソだったからだろ?」


 俺は、グライムにそう聞く。

 案の定返ってきたことは、俺の想像していた回答と、そこまで変わるものではなかった。


 「どこまで見抜いてんだか..........................

 まあ、そのとおりだ。俺はあんたが言うように宙賊がクソだったから降伏を選んだんだ。

 俺はもともとイスリト帝国の軍人だった、しかし、あそこではまともに飯を食わせてもらえなかった。

 だから部下とともに宙賊に入ったんだ、しかし、宙賊に入ったところで飯はたいして食えない、だから投降したんだ」


 グライムの言っていることは、単純なものだった。

 

 「つまりお前は、自分と部下に飯を普通に食わせてくれれば逃亡しないってことだろ?」


 それを聞くとグライムは少し微笑むと、「ああ」という短い言葉を口から放った。

 その短い言葉を聞いた俺は早かった。


 「じゃあ、飯は困らせない、それなら裏切らない部下になってくれるな?」


 そう言うと、グライムは笑って言った。


 「ああ、それなら部下になろう!」


 「契約成立だ!」


 俺達はそうして、握手をした。

 こうして、俺達には実戦経験が豊富なグライムとその部下三十名が仲間になったのだった。

 

 

  

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