36話 新たな資源を求めて
東暦7027年5月18日、この日俺はやっと行動を取れるようになった新鋭の宇宙艦隊を率いてとある惑星に向かっていた。
その惑星とは、この星系にある三つの惑星のうちの、まだ俺達が到達していない惑星だ。
この星の名前はDa3953、星全体の平均気温が八十度を越える、岩に包まれた惑星だ。
「そんなところに行く必要があるのか?」、おそらく、この惑星の簡単な説明を読んだ者はみんなこう思うだろう。
しかし、この惑星には当時の俺達からしたら、喉から手が出るほどの価値があった。
それはなぜか? 答えは、この惑星にはかなりの資源が眠っているとの情報を手に入れたからだ。
当然、そんな情報を手に入れた俺達は、すぐさま新設されたばかりの宇宙艦隊を派遣して、調査をしようとしていたのだ。
だが............................................
「識別信号不明の艦隊を補足!」
俺達の艦隊の旗艦である軽巡洋艦アドラーの艦橋内で、レーダー員のロボットが機械的な音声でそう叫んだのだ。
そのことを聞いた俺は、すぐさま自分の背中から冷や汗がでてきたことが感じた。
艦橋のモニターに艦隊の場所と数が映し出される。
モニターに映ったのは、不明な艦隊の数が六隻ということだった。
「六隻か...................... 俺達と同じ数だな」
俺と一緒に、モニターを見ていたガスターがそう呟く。
このときの俺達の艦隊は、軽巡洋艦四隻、駆逐艦二隻、輸送艦三隻、という編成だった。
「不明艦隊との距離は?」
俺はすぐさまレーダー員のロボットに質問をする。
すると、返ってきた言葉はとんでもないものだった。
「目視での補足まで、あと二十分です!」
その言葉は、あまりにも俺を焦らせるものだった。
おそらくだが、交易船の通らないこの近辺で遭遇する船なんて、おそらくは宙賊の船だろう。
しかも、識別信号のない船なんて、ほぼ確で黒だ。
となると、得策は逃げることである。
しかし、足の早い戦闘艦だけならまだしも、このときの俺達の艦隊には、足の遅い輸送艦が三隻もいたのだ。
となると、逃げるという選択肢はかなり難しくなってくるものである。
そこで、俺はすぐさま戦術書に載っていた内容を思い出して、指示を出した。
「駆逐艦は輸送艦を連れて離脱しろ、残った軽巡は識別不明の艦隊と接触する!」
このときの未熟な俺からしたら、それなりにちゃんとした内容の指示だ。
「やるんだな、グレース.....................!」
ガスターが、少し高揚したような声で聞き返す。
「ああ、俺達の初陣だ!」
このときの俺は、ガスターと同じように少し興奮していた。
理由は単純、俺達の宇宙艦隊が宙賊相手にどれだけ戦えるかが、気になっていたからだ。
二十分後、旗艦アドラーの艦橋のモニターに、識別不明の艦隊の画像が映し出された。
そこに映っていたのは紛れもなく、武装した軍艦だった。
見た感じ、トラキア王国の軍艦のように水上艦の形をしている。
「軽巡クラスが二隻、後の四隻は駆逐艦と言ったところか.......................」
モニターを見ていたガスターがそう呟いた。
「ああ、戦力的には互角と言ったところだな............」
こちらの戦力は軽巡四隻、普通に戦えば互角に戦える戦力比だ。
しかし、俺とガスターの心の中には、「本当に互角にやれるのか?」という疑問があった。
その疑問の核となっていたのは、「どんな戦術を使ってくるかわからない」という、漠然とした不安だった。
宙賊とは、普通の国家の軍隊とは全く違う、別種の存在だ。
まともな軍隊だったら、ある程度の常識のある戦い方をしてくる。
しかし、宙賊とはそんな常識から激しく逸脱した卑怯な戦い方をすると、戦術書に書かれていた。
だが、そのような戦術のほうが正しいのかもしれない。
これは今になってこそ言えることだが、ぶっちゃけ、戦場に卑怯もクソもない。
要は、戦場では最後まで残っていたやつが勝者なのだ。
しかし、このときの俺達はそんな考えを持ち合わせていなかった。
「どうする? 一応、どこの船か確認してみるか?」
ガスターが、識別不明の艦隊をモニター越しに見つめてそう言った。
本当は、俺は確認したくなかった。
だが、「万が一に宙賊との全く無関係の船だったらまずい」そんな考えが、艦隊を確認するという考えに俺を至らせてしまったのである。
「わかった............... 一応確認してみよう、不明艦隊に通信を繋いでくれ」
俺は、通信使のロボットに向けて、そう命令した。
当然、通信使のロボットは俺の命令に従って、どこの艦かを確認するために通信をする。
だが、五分ほどしても通信は全く繋がらなかった。
しかも、不明の艦隊は足を止めることなく、俺達の艦隊に距離を詰めてくる。
そして俺達の艦隊と、識別不明の艦隊の距離が八十kmを切ったとき、その出来事は起こってしまったのである。
識別不明の艦隊の軽巡二隻が、砲門を開いたのである。
予想していたはずだった、しかし、初めての戦闘という出来事に対して、俺はなんの指示も飛ばすことも出来なかったのである。
すぐさま俺達の座乗する旗艦、アドラーを一本のエネルギーの塊がかすめていった。
「識別不明艦による砲撃を確認!、どうしますか?」
艦橋内のロボットが機械的な音声でそう告げる、普段なら全く抑揚の内容な声で報告をしてくるのだが、この時ばかりは、少しの抑揚が声に重なっているような感じがした。
そして、その言葉を聞いて最初に動いたのは、俺ではなくガスターであった。
「距離を取れ!、駆逐艦が距離を詰めてくるぞ!」
ガスターは初めてであろう事態に、ただ呆然とすることなく、指示を出した。
だが、対する俺は初めてのことに、驚いてなんの指示も出せずにいた。
そんな俺に腹が立ったのか、ガスターが俺に対して怒りをあらわにして叱責した。
「グレース!なんでお前はぼおっとしているんだ! 速く指示を出せ、お前が最高指揮官だろ!」
その言葉は、まさに的確な言葉であった。
俺は、その言葉で我に戻った。
「すまない........................」
そして、戦術書に載っていたことを思い出して、今の状況下でできる最善のことを考えた。
「駆逐艦はまだ距離があるから大丈夫だ、その間に敵軽巡を沈める! 全艦、敵軽巡にたいして攻撃を開始しろ!」
その言葉で、出来たばかりの俺達の艦隊は敵を沈めるべく行動を開始した。
すぐさま、各艦が照準を合わせる。
狙うは、先頭艦の敵軽巡だ。




