32話 獄中で出会った者
「はあ..........................」
俺は、刑務所の独房の中で悲しく一人で、そうため息を付いていた。
あのあと、駆けつけてきた憲兵に俺とガスターは捕まった。
そして、その後に俺はガスターと引き離されてこの独房に入れられたのだ。
しかし、こんななにもない牢屋に入れられていると退屈になってくるものだ。
本当は、こんな「退屈だ」と考えている暇などないはずだ、しかし、この牢屋は脱走できそうもないのだ。
なぜなら、この牢屋はなぜか環境操作の魔法が使えなかったのだ。
これまで、前世で異世界転生系のラノベを腐る程読んできた俺の経験からして、おそらく、異世界特有の魔法とかを無力化するようなわけわからない結界みたいなのが張られているのであろう。
そうなれば、こちらからできることは特にない。
まあ、おそらくリアルヌとパウルが外でなんかしらはやってくれているであろう。
当時、そんな楽観的な考えをしていた俺は、その後、とりあえず外からなんかしてくれるであろうことを期待して、大人しく牢屋の中で待つことにした。
さて、それでは結果はどうなったのか?
結果は、二日ほど待っても、飯を届けに来る看守以外誰も来なかったのだ。
さすがに、このときの俺は必死にあたふたしていたのを覚えている。
だが、この二日間、ただ俺は獄中でのんびりしていた訳では無い。
実は、飯を届けに来てくれる看守から、とある話を受けていたのだ。
そのときの話を思い返すと、こんな感じだ。
その日、俺は朝食の時と同じように看守から夕飯を受け取ろうとした、その時に看守である赤毛の、俺と同じぐらいの歳の見た目のやつから言われたのである。
「いきなりすみません、グレース様、私を配下に加えてもらえないでしょうか.............?」
その看守は、いきなりそう言ったのだ。
このときは、まず、は?という考えで頭の中が埋め尽くされた。
しかし、配下に加わりたいのなら、何かしら理由があるのだろうと思った俺は看守に向かって質問した。
「なあ、なんで配下に加わりたいんだ?」
そう言うと、看守は淡々と俺の配下に加わりたい理由を話し始めた。
思い出すと長くなるので、要約するとこんな感じだ。
この看守は、どうやらもともとこの国の科学者だったらしい。
「そんなにすごい人材が、どうしてこんなところの看守をやっているんだ?」そう思うだろう、俺も実際に当時はそう思った。
しかし、この国の王が二年前に変わったときに、この国の科学者は殆どがクビになったらしい。
ちなみに、この国のクソみたいな法律である三日以内に外からやってきた者は立ち去らなければいけない法律も、今の王になったときに作られたそうだ。
話を戻そう、そういうことでこの看守は、食いつなぐために看守をやっているそうだ。
そんなときに、俺とガスターが事件を起こしたことを聞いたそうだ。
普通、この国の国民や、この国の外からやってくる者は、憲兵のことを恐れてトラブルや犯罪を侵さないそうだ。
だが、この看守は俺達のその行動に興味をもったのだ。
そして、この看守は俺とガスターを解放しようと動いているリアルヌとパウルから、俺が誰にも邪魔されないような国を作ろうとしていることを聞いたのだ。
そして、今のこの国に不満を持っていたこの看守は、「この人たちなら、自分の才能を使ってくれるかもしれない」、そう思ったそうだ。
「わかった、俺の配下に加わってくれ!」
気づけば、この看守の話を聞いているうちに、俺は自然とそう口に出していた。
「怪しい」そう思うかもしれないが、俺達がこの星に来た目的は、俺達の村を発展させるうえで必要な、人材と物資の確保だ。
俺は、ぶっちゃけ科学者なんかは絶対にこんな短期間で仲間にすることなんてできないだろうと思っていた。
しかし、実際には科学者が自ら仲間になってくれたのだ。
こんな、ラッキーなことは長い人生でめったに無いだろう。
「はい! グレース様のお役に立たせてもらいます!」
赤毛の看守はとても嬉しそうに微笑んでそう言った。
しかしまあ、看守の微笑んだ顔を見ると、やはり若い。
歳的に、十八ぐらいの歳だろうか、そのことを踏まえると、この看守は天才型の人間ではないか?
しかし、配下になったのなら看守ではなく、しっかりと名前を聞いておこう。
そう思った俺は、赤毛の看守に名前を聞いた。
「なあ、名前はどんなだ?」
「私の名前はロンメルです、よろしくお願いします!」
こうして、後に宇宙へと名を轟かせる科学者が仲間になったのだった。
しかし、新たな仲間が配下に加わったのは良かったのだが、俺がいるのは牢屋の中なので、何かをすることは出来ない。
なので、その後の俺は五日ほどを獄中で過ごした。
そして、自体が動いたのは実に、牢屋に入って十日が経過した日だった。
その日、いつも飯を運んでくるロンメルが、リアルヌ、パウル、ガスターを連れて牢屋に来たのだ。
そして、牢屋の前に来るなりパウルはこう言った。
「グレース様、申し訳ございません、牢屋から出すのに意外と時間がかかってしまいました..........」
「謝るなよパウル、むしろ牢屋から出してくれたんだから感謝しかないよ!」
俺がそう言うと、パウルはすぐに、こう言い返した。
「グレース様、礼を言うんだったらロンメル殿に言ってください、ロンメル殿がいなかったら、おそらく今でも牢屋の中でしたよ」
これはあとから聞いた話なのだが、このときはロンメルがものすごく頑張っていたらしい。
危険を顧みず、上層部に俺とガスターを保釈するように取り合ってくれたらしい、そのおかげか、金貨十枚で保釈になったらしい。
しかし、俺の勝手な行動でパウルにさらに金銭面の負担を強いてしまったのは、本当に申し訳なかった。
パウルは、「家来なのだから、そんなの気にしなくていいですよ〜」そう流していてくれたが、それでもかなり申し訳なかった。
まあ、そんなこんなでトラキア王国での旅は終わってしまった。
しかし、逮捕されて完全に失敗したわけではなかった。
むしろ、成功したのだ。
どうして成功したのかというと、それにはリアルヌとロンメルの働きが大きかった。
リアルヌは、俺とガスターがいない分、村の発展に必要なものを一人で頑張って調達してくれたのだ。
それに、ロンメルも完全に俺達の星に移住する予定だったので、星の開拓に必要な機材とかを、自費を使ってまで調達してくれたらしい。
本当に、二人の働きには感謝するばかりだ。
ちなみにパウルも、俺達を保釈してもらえるように動いていた傍ら、商人としての仕事をしっかりとこなしていた。
それなのに、パウルはこのときに白金貨五枚を稼いだらしい。
まあ、その金はこの後、俺達の国の宇宙艦隊設立のためにすべて費やされたのだが.................
そして、俺達は帰路についた。
俺達の星を出発して、実に十五日が経っていた。
そして、行きと同じように三日が経った頃、俺達は自分たちの星に帰還した。




