31話 トラブル発生
俺がガスターにブチギレたあと、俺達は新たな食料となる農作物の種を選んでいるリアルヌを待っていた。
ちなみに、俺達の村ではイネガマという植物を作物として栽培している。
どんな植物かと言うと、前の世界にあったガマという植物の穂の中に、米みたいな食べられる実が入っている植物だ。
水があればだいたいどんなところでも栽培することができる、とても優れた植物だ。
しかし、中の実がまともに食べられるようになるまでに、二年の月日を要す。
流石に、いくらなんでも生産効率が悪すぎる、一発でも不作の年があったら、村は終わるだろう。
なので、俺達が手に入れようとしている作物は、半年から一年ほどの期間で生産でき、なおかつ日照りや水不足にとても強いという条件だ。
しかし、そんなすごい条件を満たしている作物なんぞ無いだろう、あったとしても破格の値段だ、俺はそう思っていた。
しかし、リアルヌが買ってきた作物の種は、俺の想像どころか、条件の斜め上を行く半端ないものだったのだ。
「これなら、完全に条件を満たしていますよね?」
と言って、リアルヌが渡してきたのは、チューリップの球根のようなものだった。
そんなにすごいものなのか?ただの球根にしか見えないが.....................
俺はそう思いながらも、リアルヌの説明を聞く。
「なんとこれ!、わずか三ヶ月で生産できるんですよ! しかも、光さえあれば勝手に育つそうです!」
「は?」俺の頭の中は、またもや真っ白になってしまった。
「いやいや、冗談でしょ?」
俺は、全然信じられなかったので、少し笑いながらそう言った。
だが、俺のその言葉を遮るようにパウルが口を開いた。
「よく買うことができましたね!さすがです、リアルヌ殿!」
その後の説明はとても長かった、二人が言うに、この作物はイモキュウコンという植物だそうだ。
この作物は、植えると最短三ヶ月で育つ作物で、なおかつ日照りに強い、そんな最強の特性からこの世界の作物の中ではトップクラスの需要を誇るそうだ。
なので、これを買うことができたリアルヌはかなりラッキーだそうだ。
「流石だ!」
俺は、二人からそのことを聞いたとき、さっきの全く信じていないような態度から一転して、そう言っていた。
まあ、とりあえず良いものが手に入ったので結果オーライだ!
さっきまで全く信じようとしなかったので、なんとも恥ずかしい。
しかし、部下がここまで優秀で頼もしいと、なんとも嬉しい。
やはり、仲間を手に入れるということはとても良いことだ。
だが、そんな嬉しい気持ちは一瞬にして飛んでしまった。
なぜかって?明らかにヤバい盗賊みたいなでかい男たちが五人、こちらに絡んできたのだ。
「おい貴様、そのイモキュウコンは俺達が目をつけてたものだ!」
そう言うと、リーダーっぽいひときわゴツい顔をした男が、リアルヌが手に持っているイモキュウコンを指さした。
それに続くように、周りの奴らがさっさとよこすようにと、はやし立ててくる。
そして、さらにそれに続くように広場も段々と静かになる。
「ヤバいんじゃない、あれ..................」
「早く渡したほうがいいぞ!」
周りの人間は、小さな声でそんなかんじのことをざわざわと言っている。
周りの反応からするに、なかなかヤバい奴らなんだろう。
しかし、せっかく運よく手に入れたイモキュウコンを手放したくはない。
だが、見た感じなかなかゴツいので、戦っても勝てるかはわからない。
俺の考えは完全に割れていた。
だが、俺が迷っているのをよそに、静寂の広場に、ある陽気な声が響き渡った。
「何やってんだグレース?」
声の主はガスターだった。
よりによって一番まずいやつが来た、絡んできた奴らが変なことを言わなければ良いのだが....................
だが、絡んできたやつらの一人が無謀にも口を開いてしまった。
「なんだお前、ボコられたいのか?! 弱そうな見た目だな!」
あ、終わった。
俺がそう思ったら、ガスターが蒼色の目を輝かせて、まるで子供のような顔で言った。
「グレース、コイツらシバいていいか?」
「シバいていいか?」なんとなく肌で感じるのだが、これはおそらく「殺していいか?」ということだろう。
さすがに、それはヤバすぎる。
ただでさえ、外からの者に厳しいのに、そんなことをしては、この国から叩き出されてしまう、いや、そんなことではすまないかもしれない。
しかし、人間とはやはりおかしな生物だ。
やらせてはいけない、だが、心の中では腹立つしやらせたいと思ってしまう。
俺の心は割れていた。
だが、そんな俺の迷いは、ガスターの発言によって一瞬にして完全に消し飛ばされてしまった。
「グレース、国のトップならば決めろ! こんなことはいくらでもあるぞ!」
その言葉を聞いた瞬間、俺の心の中で、爆弾のようなものが爆発した感じがした。
今思えば、あれは、改めて国を作る覚悟を決めた起爆剤だったのであろう。
俺は、覚悟を決める。
誰にも邪魔されない国を作る、そのためなら邪魔する者には容赦はしない、そんな覚悟だ。
覚悟を決めた俺は、すぐさまガスターに命じる。
「ガスター、やっていいぞ!」
その瞬間、俺達に絡んできた男たちが空へと舞った。
そして、広場にいるすべての人が、その光景に呆気にとられている間にも、男たちは地面に大きな音を立てて落下してきた。
慌てて、我に帰った俺は、すぐさま男たちを見る。
すると、男たちは全員白目を向いていた。
さすがガスター、強い!
だが、そんなことを思っていたのも束の間、周りを見渡せば、次々と広場から逃げ出していった。
まあ、これは仕方ないことだった。
しかし、こっからが問題だった。
当然、通報されて広場には憲兵が来た。
そして、そのまま俺とガスターは逮捕されてしまったのだ。
「なんで抵抗しなかったんだ?!」と、思うだろう。
俺も抵抗しようとは思った、しかし、あくまでも俺の考えは、「邪魔する者には容赦しない」というものだ。
今、この広場で戦ったら周りの人間を巻き込んでしまう。
なので、俺とガスターはおとなしくお縄にかかったのだ。
ちなみに、リアルヌとパウルは捕まることはなかった。
まあ、その方が後々俺達に有利だ。
しかし、ピンチなことには変わりないのだ。




