28話 トラキア王国を調査せよ!
パウルが言ったことは意外なことだった。
「まあ、グレース様には変わらないんでお使えさせてもらいます!よろしいですか?」
意外だった。
パウルからしてみてみれば中身は赤の他人なわけなので、てっきりこのまま去ってしまうのかと俺は思っていた。
だが、たとえ中身は違っても俺に仕えようとするパウルには驚かされた。
しかし、中身の違う俺にどうして仕えようとしてくれるのかあまりにも気になったので、俺はパウルに聞いてみた。
「グレース様にカッコつけて、「大人になったらグレース様の便利屋になります!」と、言ったからですね! 」
パウルから返ってきたのはとても子供じみたものだった。
普通はこんな子供のときに言ったものは、忘れるものだろう。
だが、パウルは大人になって今まさにこの発言を遂行しようとしている。
ここまでしっかりした男だったら信頼していいだろう、そう思った俺は口を開いた。
「よろしくな、パウル!」
「はい!」
こうして、新たな仲間が増えたのだった。
そして数日後、俺達はトラキア王国の視察に行くメンバーを、カリウスとゲオルクと考えていた。
今のところは、俺しか決まっていない。
「俺が行くときはカリウスもついていくんじゃないのか?」と、思うかもしれないが、あいにくカリウスは「もうすぐで他の三つの村を併合できそう」と言っていたので連れて行かないことにした。
もちろん、一緒に仕事をしているゲオルクもだ。
「悩みましたね............................」
カリウスがため息をつきながら言う。
カリウスが言うとおり、かなりの悩みどころだ。
パウルが言うには、「トラキア王国の憲兵はかなり厳しいので密入国は三人が限界」ということだった。
「密入国をするなら他の国へ行ったら」とか思うかもしれないが、この星系の近くにある国がトラキア王国しかないのだ。
それに、今の俺達は村の基盤を整えるので精一杯だ。
そうなってくると、連れていける人材は限られてくる。
本当は延期したいところだが、パウルいわく「宙賊の艦をこの星の近くで目撃することが増えた」と、言っていたので、こちらがのんびりやっている暇もないのだ。
とりあえず、俺達は各チームのリーダを集めて行ける人材を探すことにした。
まずは建築班のリーダーであるブルーノに誰が行けるか聞いた。
だが、建築班は誰も行けないということだった。
ブルーノが言うには、「他の村を併合したときに必要になる家が全く足りない」ということだった。
次に、食料班だ。
こちらは、トラキア王国で他の作物を入手するために人手を出せるということだった。
しかし、サンドアントから村を守る都合上、狩り担当はいかせることはできない。
なので、農業班からリアルヌを行かせる事になった。
最初、「行ける」と言われたときは心配したが、農業班の副リーダーに新たに任命したコンラートがしきれるらしいので、リアルヌの言葉を信じてリアルヌを連れて行くことにした。
そしてもう一人、もちろんこれは環境班から連れて行く。
だが、いくら俺がいないからといっても環境班の仕事はないわけではない。
前にも言った通り、「周囲の地形や環境などの探査」という大事な仕事があるのだ。
だが、これを読んでいる読者は察しているだろう。
環境班には一人だけ、俺がいなくなると完全に暇になってしまうやつがいるのだ。
そう、ガスターだ。
前にガスターの魔法を見せてもらったのだが、ガスターの魔法は「破滅の炎の魔法」の名前通りに、半端ない破壊力を持つ魔法だったのだ。
わかりやすく破滅の炎の魔法の威力を解説すると、大きな山を跡形もなく消滅させることができる威力だ。
前は誰も信じていなかったのだが、実際にみんな見たあとは全員ドン引きしていた。
まあ、頼もしいことには越したことはない。
なので、ガスターを護衛として連れて行くことにした。
まあ、下手にトラブルを起こさないと良いのだが.............
そして三日後、俺達三人はパウルの宇宙船に乗り込もうとしていた。
周りには、村のみんなが「頑張ってください!」などの応援をしてくれている。
しかし、まだパウルが来ていない。
おそらく、この村から買っているサンドアントをワーグナー達と一緒に積んでいるのだろう。
そんなことを思っていると、カリウスが話しかけてきた。
「グレース様、無事に帰ってきてくださいね!」
俺がいない間、この村はカリウスとゲオルクにまかしてある。
「ああ、カリウスも頑張れよ!」
俺がそう言うとカリウスは微笑んだ、そして話を続ける。
「ガスター、リアルヌ、グレース様の護衛を頼んだよ!」
カリウスがそう言うと二人は自身満々に言う。
「ああ、任せとけ!」
「任せといてください!絶対にグレース様をお守りします!」
そんなやり取りをしていると、ゲオルクも話しかけてきた。
「グレース様、準備は大丈夫ですかな?」
俺達の準備は万端なので、俺は即答する。
「ああ、準備万端だ!」
俺がそう言うと、ゲオルクは微笑んで話を続ける。
「グレース様、くれぐれも無事に帰ってきてください!、もしも危なくなったりしたら新しい技術を手に入れることを優先なんかしないで、くれぐれも命を大事にしてください。」
さすがゲオルク、アドバイスも的確だ。
ゲオルクの言った通り、今回の視察は新しい技術と、それを扱える技術者や科学者を手に入れることだ。
しかし、俺の考えは命が最優先だ。
「ああ、もちろんだ!、ゲオルクも他の村の併合を頑張ってくれよ!」
そして、そうこうしているうちに準備ができたのか、パウルがやってきた。
「グレース様、それでは行きましょうか!」
「ああ!」
だが、村のトップとしてなにか一言いっておく必要があるだろう。
そう思った俺は、みんなの方を向いて大声で言った。
「みんな!頼んだぞ!」
そう言うと、みんなから歓声が上がる。
そうして、俺は宇宙船に乗り込んでいった。
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!




