27話 行商人が来た!
俺達はカリウスに急かされて、急いで行商人がいる場所に向かった。
「でっかいな.................!」
道中、俺達は行商人の乗ってきたであろう宇宙船をみて驚いていた。
俺達の乗って来た宇宙船の二倍ぐらいだろうか、だとしたら三百メートルはゆうに超えているだろう。
そんなことを思いつつ走っていると、行商人がいる村の広場まで来た。
すでに人だかりができている。
この村に何回も来ているのだから当然だろう。
しかし、行商人の姿はみんなが邪魔で見えない。
「どうしたもんか?」そんなことを考えていると、一緒についてきたワーグナーがみんなに向かって大きな声で言った。
「みんな、グレース様が来たぞ!道を開けてくれ!」
すると、みんなが静まり返って俺が通れるように道を開けてくれた。
そして、みんなの中から出てきたのは黄色の髪をした二十歳ぐらいの青年だった。
俺は青年に挨拶をしようとする。
だが、俺が口を開く前に青年の方から口を開いた。
「お初にお目にかかりますグレース様、私はトラキア王国で行商人をやっているパウルと申します」
なんて礼儀正しいのだろう、俺はそんなことを思いつつ挨拶を返した。
「よろしくお願いします、パウル殿!」
普段は、国を作ると決めたのでみんなにタメ口しか使わないが、さすがにこの村の大事な商売相手なので、上から目線の挨拶は辞めることにした。
しかし、トラキア王国の商人か。
前にカリウスが言っていたのだと、俺達の故郷ということになる。
気になるもんだ。
すると、パウルは話を続けた。
「ゲオルク殿から聞いた話によると、グレース様は国を作ろうとしているようですが、なにか必要なものはありますか?」
なんと!ゲオルクが話をしているのは予想していたが、この発言は、想定外だ。
そんなことを思いつつも、俺はパウルに質問をする。
「私達に協力してくれると言うことですか?」
すると、パウルは少し困ったような顔をして話を続けた。
「はい、実はここの星系一体は宙賊が出るんですよ............それの影響で、私達行商の商売はかなりきつくなっています、なのでグレース様達に宙賊を追っ払って貰う代わりに、協力をするということです。
いかがですか?」
「宙賊」、名前から察するに、SFとかに出てくる宇宙海賊てきな感じのやつだろう。
絶対危険だ、今の俺達では絶対に太刀打ちできないだろう。
しかし、なぜ俺たちなんだ?
もっと強い奴らがいるだろう。
だが、宇宙船が壊れているこの状況で、この提案を断ったらこの惑星はこれ以上あんまり発展しないだろう。
となると、誰にも邪魔されない理想の国を作るという目的も、難しくなってくる。
悩ましいもんだ。
いずれにしても、こんな難しい提案はみんなに相談しないと決められるもんではない。
俺は、後ろにいるみんなの方に振り向いて聞いた。
「みんな、どうする?」
すると、真っ先にゲオルクが口を開いた。
「グレース様、この先国のトップとして振る舞うのなら、こういう提案をときに一人で決める場面もありますよ」
「そうだぞグレース、今がまさにその時だ」
後ろのガスターもそう言う。
確かに、二人の言うことは最もだ。
ならばその期待に答えるために、俺一人で決めねばならないだろう。
そう思った俺は、心のなかでどうするのか決めた。
そして、口を開いた。
「わかりました、引き受けましょう!」
それを聞いた、パウルの顔が明るくなった。
「ありがとうございます!グレース様!」
パウルは、そう言って頭を下げた。
しかし、あくまでこれは取引だ。
そう思った俺は、口を開く。
「しかし、こちらとて大変なことをするので、要求はそれ相応のものをさせてもらおう」
「わかりました、私にできることなら何でも協力させてもらいます!」
そうして、その日は一旦お開きになった。
その夜、俺は自分の家で何を要求するかを考えていた。
パウルいわく、宙賊は今まで派遣されたトラキア王国の討伐軍を三度によって壊滅させているらしい。
そんな危険な奴らと戦うのならばかなりの要求をしなければならないだろう。
俺はそう思いながら、何を要求するかを夜通し考えた。
そして翌日、俺はパウルを村の集会所に呼んだ。
「さて、それではこちらの要求を言わせてもらいます」
俺はそう言って、こちらの要求を言っていった。
まとめるとこうだ。
一つ目、軍用艦の販売。
宙賊と戦うのであれば、軍艦を持っておくのは当然のことだろう。
それに、誰にも邪魔されない国を作るのであれば、どこからも攻撃されないような軍事力は必要だろう。
幸いにも、パウルはいろいろなところに顔が利くらしいので、この要求をあっさり飲んでくれた。
二つ目、こちらからのトラキア王国への人材派遣。
今の俺達は何も他の星のことなどは知らない。
なので、人材を派遣して他国の情報を集めさせるのは当然のことだろう。
これが、今回こちらが出した要求だ。
当然、パウルはこの要求を飲んでくれた。
「では、失礼します」
パウルは、集会所を出ようとしていた。
だが、こちらとしては気にかかるものがある。
「少し待ってください、パウル殿」
俺がそう言うとパウルは振り返って言った。
「何でしょうか、グレース様」
俺は話を続ける。
「パウル殿、なぜ俺達なんだ?」
パウルの顔が一瞬驚いたようになる。
「グレース様達なら、なんとなくやってくれそうだと思ったからですよ!」
パウルは、そう言って誤魔化そうとした。
だが、明らかにおかしい。
トラキア王国の軍が敗れて他のところに討伐を依頼するところまではわかる。
だが、それから会ったばかりの俺が率いる技術のない砂漠の惑星のちんけな村に討伐を依頼するなんて絶対におかしい。
「とぼけないでもらいたい、なにか違う目的があって来たのであろう」
俺は、パウルの本当の目的を知るために強い口調で言った。
集会所の二階には何かあったときのために、事前にカリウスを待機させてある。
返答次第では、いつでも斬り捨てる予定だ。
そして、パウルは少し黙り込んだあとに口を開いた。
「やはり気づかれていましたか........... お見事ですグレース様!」
パウルは笑いながらそう言った。
「ヤバい」俺は即座にそう感じた。
俺は、すぐさま机の下に隠してあった刀を取れるように手を伸ばす。
だが、パウルから返ってきたのは意外な言葉だった。
「覚えていますでしょうか、グレース様」
「誰だ?」その言葉が俺の頭を駆け巡る。
「わからない」俺がそう返そうとしたとき、いきなりカリウスが大きな音を立てて二階から降りてきた。
「どうしたんだ、カリウス!?」
あまりの慌てようだったので、俺はカリウスに慌てて聞いた。
「すみませんグレース様、パウル殿に一つ聞きたいことがあるのでよろしいですか?」
ちょうど困っていたところだ、カリウスが話せばなんとかなるかもしれないと思った俺は話す許可をした。
「パウル殿、もしかしてあなたはあのちょろまかしのパウルですか?」
ちょろまかしのパウル?なんちゅうあだ名だ、そんなことを思いつつ二人の会話を俺は聞く。
「そうだとも、お前とも久々だな!カリウス!」
二人は知り合いなのか?そう思った俺はすぐに口に出す。
すると、カリウスが少し興奮したような声で言った。
「はい、私達の幼馴染のパウルです!」
だが、カリウスがそう言ったのを聞いたパウルは不思議気な顔になりながら言った。
「あれ、グレース様は私のことを覚えておられないのですか?」
覚えてるわけがない、こちとらこの世界に転生して一週間も立っていないんだ。
そんなことを口に出しそうになったが、事情を知るカリウスがすかさずフォローを入れる。
「パウル、グレース様は遭難しているときに記憶を失われているんだ.................」
それを聞いたパウルは少し驚いた顔をして言った。
「そうでしたか、グレース様..............
好き勝手に話してしまいすみません....................」
そう言うとパウルは頭を下げた。
しかし、こちらとしてはとても申し訳ない。
何しろ俺は、勝手にこの世界に転生してきた挙げ句、この体に勝手に入って来てしまったのだ。
たまたまカリウスが受け入れてくれただけで、他の元から親しかった人たちは俺を認めたりはしないだろう。
そんな秘密を隠し持っているのに、「記憶を失っただけ」で片付けてよいのか。
俺は頭を下げるパウルを見ながら、とても気まずく思っていた。
そして、パウルが口を開いた。




