02話 もしかしたら転生したかも
「起き……」
なんだこの声は?俺は死んだはずだろ、なんで意識があるんだ?
「起きて……」
謎の声は、さらに俺の頭に入ってくる。
「それにしても、とても気持ちいい感覚だ、天国ってこんな感じなのかなぁ」と、心の中で俺は考える。
「起きてください!グレース様!」
その時、とてつもない大きな声が俺の耳を貫き、あまりの声の大きさに俺は驚き、飛び起きた。
声のする方に目をやると、そこには青緑色のポニーテールをした、女の子が俺の上にかかっていたであろう布団を、片手に持って立っていた。
このときの俺は、まったくわけがわからずに、ただ混乱していた。
だが、そんな俺を気にすることなく、女の子はあきれたような声で話を続けた。
「まったく、いつまで寝てるんですか................」
彼女はそう言うと、大きなため息をついた。
「さっさと着替えてご飯食べてください、冷めちゃいますよ!」
まじで、今の状況が全くわからない。
そりゃそうだ、いきなり死んだと思ったら、こんなわけがわからない事になっている。
おそらくだが、どんなに頭が良いやつがこんな状況に直面したとしても、みんな当時の俺と同じような反応をするだろう。
そんな当時の俺は、「彼女は誰なんだ?」という疑問しか頭になく、当然のようにこう言った。
「君は誰なんだ?」
すると、彼女は呆れた顔で言った。
「まだ寝ぼけてるんですか?私はカリウスです、あなたの執事ですよ。そんなことも忘れたんですか?」
彼女はそう言うと俺の手を掴んで、ベットから俺を引き剥がして歩き出した。
「さっさと、顔洗って着替えてください!」
そうして連れて行かれたところは、洗面所であった。
そして、そう言った彼女は洗面所に行く途中に通った、キッチンらしきところに向かった。
俺は混乱しながら、なんとなく洗面所の鏡を覗き込む。
だが、そこで俺は衝撃の光景を見ることとなった。
「なんじゃこりゃああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺は、衝撃の光景に声をあげるしかなかった。
なぜって?、俺の顔が金髪の髪をした美少年になっていたからだ。
俺は、ますます困惑する。
さすがにこれを見せられたら、人はだれでもおかしいと思うだろう。
実際俺も、「流石に夢だろう」そう思い、鏡を見ながら頬をつねってみた。
しかし、わかったことはただ一つ、頬をつねったところで、痛みしか発生しないということだった。
このことを踏まえると、おそらく夢ではない。
俺は、更に困惑しつつも頭をフル回転して今の状況を考えた。
そして、三十秒ほどして俺の頭の中である仮定が浮かんだ。
それは、「死んだときになんやかんやあって、転生したかもしれない」という仮定だ。
異世界転生系の小説をたくさん読んだからなのかわからんが、めちゃくちゃ混乱していた当時の俺に取って、これしか考える事ができなかった。
とりあえず俺は、カリウスに言われた通りに顔を洗って、着替えることにした。
しかしまあ、顔を洗っていると改めて出来すぎていると認識させられる。
こんな金髪で容姿の整った顔になっているなんて、あまりにも異世界転生系の小説によくあることだ。
まあ、そんなことを考えながら俺は顔を洗い終えた。
そして、顔を洗った後に俺は着替えの服がないか洗面所を見渡した、すると、壁に一着の歴史の教科書に書いてあるような中世ヨーロッパの農民が着ていそうな服がかけてあった。
「こんなのどうやって着るんだよ.............」、そんなことを心の中で思いつつも、俺は異世界風の服を眼の前にして喜んでいた。
俺は、その喜びが「異世界転生したかも?」という疑問で冷めないうちに、初めて着る服に苦戦しながらも、服を着た。
服を着た感想は、「案外、着心地は良い」、そんなもんだ。
「そんなつまらないものかよ」、そう思いたくもないかもしれないが、三十歳で独身である男の服の感想なんて、だいたいそんなもんだ。
そして、洗面所でやることを一通り終えた俺は、食卓があるリビングへと向かった。
「やっと来ましたか、とっとと食べちゃってください。」
そう言うと彼女は、缶詰め一つと箸を机の上に置いた。
「こんなことを悠長にしている場合ではないだろ!」これを読んでいたらそう言いたくなってしまうだろう。
しかし、せっかく異世界に来たかもしれないので、当時の俺は異世界の食事を楽しみたかったのだ。
俺は、異世界の食べ物を味わうというワクワクとともに缶詰の蓋を開ける、中に入っていた物はサバ缶の中身のようなものだった。
開ける前は、「もしかしたらヤバいものが出てくるかも」と心配していたが、実際の中身は余裕で食べられそうなものだったので、安心することが出来た。
俺は、その気持のままで缶詰の中身を一切れ箸でとり、それを口に入れた。
するとどうだろう、味は見た目のまんま、鯖のような味だった。
かなり親近感のある味のそれを食べ終わるのに、俺はたいして時間を要さなかった。
それにしても、缶詰め一つだけとは、随分と苦しい生活を送っているのだろう。
そんなことを思いつつ朝飯を食べ終えた俺は、カリウスへと質問した。
「この後、俺はなにをすればいいんだ?」
俺がそう言うと、カリウスはまたもや少し呆れたような顔で、質問に回答した。
「この後は昨日と同じく、北の廃墟から食糧を探してきてください。私は、昨日新しく見つけた廃墟をあさってきます。」
カリウスはそう言うと足早に、家の棚にかけてあった銃とナイフを取りに行った。
「は?」 カリウスが言ったことに、俺はそんなことしか思えなかった。
なぜなら、カリウスの言ったことには、「廃墟から食糧を探してきて」という、不安になるフレーズがあったからだ。
そして、その言葉を元に、俺はこの世界の現状を推測することができた。
おそらくだが、この世界は洗面所がある時点で、産業革命を遂げていることは間違いない。
しかし、「廃墟」という単語から推測するに、なんらかの戦争で荒廃している世界なのかもしれない。
まあ、「この世界のことは彼女が知っているだろう」、そういう結論に至った俺は、カリウスへとまた質問をした。
「ここは、どこなんだ?」
すると、カリウスはさらに呆れた顔になって言った。
「やっぱり今日は変ですね、まあ、帰ってきたらその質問には答えるので、まずは食糧を探してきてください、速く行かないと日が暮れますよ。」
そう言うと、カリウスは銃とナイフを俺に持たした。
「なにもこの世界のことを知らない状態では、危険すぎる!」、俺は内心そう思ったが、さっきの言葉からわかるとおり、これ以上の話は進展しなそうだった。
そう思って諦めた俺は、しぶしぶ外へと繋がる扉を開いた。
案の定、扉の先にあったものは、俺の推測とあまりかわりのないものだった。




