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かくして祠は破壊された。

作者: アーク

「おまえ、あの祠壊したんか!!」

祠が破壊された。我を永く封じてきた忌々しき祠はただの塵芥となり足元に転がっている。

さあさあ我を封じた術者の末裔とそれに力を貸した村人共をどうしてくれよう。病を流行らせ様か、それとも不信の種を撒いて争いが芽吹くのを待つか。


「それ程の力を持っているのであれば、自力で(みなごろし)にしたら良いのではなくて?」

「お主本当にこの村の人間か?!」


いや、封じの要石を躊躇なく踏み砕き続けているこの娘はこの村では見た事が無いな。見事な金色の髪に血を垂らした様な瞳の娘など、村祭りで我を封じる祠の結界を強める儀式に参加した者の中にはいなかった。

もしや、アレか。

最近界隈で流行の「お前あの祠壊したんか!」をするという罰当たりな余所者か?


「確かにわたしは余所者ですわね。ですが、祠を破壊した事にはちゃんとした理由がありますわ」


心でも読んだのかこの娘!!


「口に出ておりましたわ」


娘はひとつ咳払いをするとこちらの都合に聞く耳など持たぬと言わんばかりに語り始めた。


「ドヌーヴ公爵家が長子、カトリーヌと申します。


幼き頃より王太子殿下の婚約者として厳しい教育を受けて来たわたしに、『愛想が無い』と口にし禄に交流の機会も設けなかった身の上で、


『真実の愛を見付けた』


とのたまい、わたしの瑕疵で婚約解消を目論む8股王太子殿下に天罰でも、と思いましたの」


正気か、その婚約者。今日のおやつ感覚で祠破壊する様な女にそんな馬鹿げた真似を仕出かしたと言うのか?

8股をしておいて『真実の愛』とは?

ぁ、良く見るとカトリーヌだけでは無く複数の娘達が景気よく高笑いしながら破壊活動に勤しんでいらっしゃる...



「わたくし、筆頭聖女のマルタと申します」

☆種族 紙魚(しみ)


我が愛しき王太子殿下が『真実の愛を見付けた』と仰るので、矢張りカトリーヌ公爵令嬢の元に収まったのかと思えば、御相手はカトリーヌ公爵令嬢では無いと言う。



「スプルーアンス侯爵家が四女、ルクレツィアと申します」

☆種族 人魚(アマビエ)


王太子殿下には婚約者であられるカトリーヌ公爵令嬢がいらっしゃるので、所詮自分は正式な婚姻を結ぶ前の火遊びだと諦めていたところ、カトリーヌ公爵令嬢から、「王太子殿下の仰る『真実の愛』の相手は貴女?」と聞かれて腰を抜かしたのだった。



「下町の酒場で歌姫をしているミアよ」

☆種族 鳥人(セイレーン)


王太子殿下が話しかけて来た時は、また尊き方の口約束だと思い営業笑顔(スマイル)で相手をしていた。

「セイレーンと言えば人魚だろう」と亜人について知識が全くと言って良いほどに皆無だったが、つい、そこが可愛い、と惹かれてしまった。



「宮廷魔術師のセリーヌよ」

☆種族 蛇女房


幼い日の王太子殿下が重い病に伏した時、癒しの力を持つ自らの右眼を使い瞬く間に快復した王太子殿下はカトリーヌ公爵令嬢よりもセリーヌと共にある事が多かった。

それでも、婚約者はカトリーヌ公爵令嬢であるし、国の繁栄の為にも身を引く決意をしていた。



「ど、ドヌーヴ公爵家のハウスメイドの美鈴(メイリン)です...」

☆種族 屋敷妖精(ブラウニー)


カトリーヌ公爵令嬢の、「その場にいるだけで繁栄を約束する」と言う目に見えない能力など信用ならない、とふたりの婚約が決まった10歳の頃から屋敷に来る度に口説かれていた。

玉の輿結婚(シンデレラストーリー)に憧れのあった美鈴は王太子殿下と恋仲になったが、成長するにつれて主人であるカトリーヌを裏切る行為を酷く後悔し、王太子殿下が『真実の愛を見付けた』と離れてくれた時には心底ホッとしたものだった。



「アストライア法務官の娘、メルセデス」

☆種族 鬼神(オーガ)


鬼神(オーガ)は怪力で、赤い肌と頭部の鋭いツノは他の者達にとって恐怖の象徴でしかなく常に孤立していたメルセデスに、臆する事なく話しかけて来た王太子殿下に、婚約者がいると分かっていながら惹かれてしまった。

『真実の愛』の相手はカトリーヌ公爵令嬢であると信じて疑わなかった。



「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す...!!」

清子(さやか) 種族 蛇龍(きよひめ)


長年祠に封印された我よりも禍々しい気配の娘は殺意と共に同じ言葉を繰り返し、口の端から火炎がチロチロと滲んでいた。

カトリーヌに聞いたところ、東の国からの編入生であり東の国の豪族の姫君だそうだ。



『その場にいるだけで繁栄を約束する』と言うカトリーヌの力には我にも覚えがある。

我の力を悪用し、かつては栄えさせた恩も忘れ怨霊堕ちした我を封印した当時の村人達を思い返すと今でも腸が煮えくり返る。


王太子殿下とやらは、敵に回してはならない相手を敵に回した様だ。


カトリーヌは燃えるような赤いドレスを身に纏っていて、彼女の種族を考えればそれが何を意味するのかは嫌でも分かる。


「聖女様の、紙魚としてのお力をお借りして。ある頃から王太子殿下が口にしていた、この


『因習村の祠』


を見付けました」


紙魚は本を好んで口にする。そして、読んだ本の世界に自分が指定した人間を連れて来る事が出来るのだと言う。


そうか、ここが「寒村」で、我がかつて「封じられた」事は理解していても、封じられた理由が朧気であるのは我が「物語の存在」である故か。


「わたしは座敷童子。祠を破壊した事による天罰はわたしの幸運を引き寄せる力で吸収できます」


吸収した「天罰」を王太子殿下に当てるのが楽しみだ、と笑いながらカトリーヌは『王太子殿下被害者の会(命名カトリーヌ)』と共に元の世界に帰って行くのだった。

王太子殿下?8人全員から物語から持ってきた天罰含めてフルボッコにされたよ☆

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