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<第5話 麻酔科研修>

 外科から半年間、麻酔科へ出向し、気管内挿管、呼吸管理、循環管理、救急蘇生、各種薬剤の使用経験を研修すると共に麻酔科医として、手術の麻酔業務を行う。1つ1つの技術は、そんなに難易度は高くないが、全科にかかわる多数の手術、老若男女、様々な患者背景、手術リスク、麻酔リスクなど、とにかく、経験する内容が、あまりにも多すぎる。1カ月くらいの経験でも、見かけ上では麻酔医らしくなってきて、一通りの麻酔はかけられるようになる。しかし、実際には、何が起こるかわからないというのが実情である。左下肢静脈血栓症の手術に硬膜外麻酔を行った患者が突然、ショックになった。すぐに採血して調べてみると、一瞬にして赤血球が術前の20%に減少していた。後でわかったことであるが、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を合併していたのである。この病気は、後天性のPIG-A遺伝子変異によって血液がほんの少し酸性化するだけで溶血して貧血になるので、麻酔によって血圧が下がり、軽いアシドーシスを起こしただけで溶血発作を引き起こしてしまったのである。珍しい病気だったので、手術前検査では、チェックされていなかった。頻度は多くはないが、麻酔中は、このような氷山が隠れており、やればやるほど怖くなってくる。手術中の麻酔医は、外から見ると、ただ患者の枕元に座っているだけであるが、実際には手術が始まってから終わるまで、ハラハラしながら心安まる事は全くないのである。

コンペイは大きなトラブルなく半年間の麻酔研修を終えることが出来た。感謝、感謝。


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