<第1話 入局>
医師国家試験に無事合格し、コンペイは晴れて医師になれた。就職は病弱の母がいるので地元の国立大学病院外科を選択し採用された。新設の医学部で病院開院2年目である。スタッフは、教授1名、助教授1名、講師2名、助手4名、研修2年生3名、そして研修1年生コンペイ1名、総勢12名の陣容であった。医学部の学生が卒業するのは2年後からであった。
入局第1日目、国家試験の合格通知と医師登録を確認した段階で医局を訪れた。5月の連休明けの初日だった。医局に入って挨拶した直後に「君は今まで何をしていたんだね。」
医局長は呆気に取られた顔で言った。
「医師になれたことを確認してからきたんですが。」と答えたが、何か大きなミスをやってしまったと悟った。医局長は怒るどころか笑いながら「入局は国家試験の合格の有無にかかわらず4月1日に出勤するのが通例なんよ。こちらにいる2人の先生は国家試験は落ちたけど、ちゃんと4月1日から来とるよ。」
2人は医師になれず臨床で患者を治療できないため、研究員として国家試験に合格するまで研究室のアシスタントをやっているそうである。
「まあ、とにかくこれで本年度の研修医を1人確保できたわい。めでたし、めでたし。」と嬉しそうに医局長は言ってくれたのであった。