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スタートラインはどこにある

作者: 雲母あお

「さあ始めよう!未知なる世界へ!若者諸君!いざスタートだ!」


新学期早々、体調不良で欠席した校長先生の代わりに、なぜか頭が筋肉でできているともっぱらの評判の体育教師が、

『校長の代わりが務まるのは俺くらいなものだ』

と、勝手に壇上に上がって、勝手に校長先生の代わりにスピーチをした。


他の先生方が止めに入ったが、

「そんな。そこまでいうなら私が。」

自分は支持されているという大きな勘違いも相まって、興奮で顔を赤く染め、

「私にお任せください!」

と、張り切って壇上に上がって、話した言葉がこれだった。


頭を抱えている先生もいれば、ふか〜いため息をついて見守る姿勢を貫く先生、性格によって様々だ。


生徒は、というと、

「ラッキー。話の長い校長より短くて済んだな。」

と、喜ぶ生徒に、真面目な生徒が、

「ちょっと、不謹慎だよ。校長先生体調崩しているのに、そんなこと言うなんて。」

と、非難するような言い方で注意していた。


私は、というと、

なにゆえ新学期になると、新たなスタートだ!とか未知なる世界へ!とか、今日が高校のスタートラインだ!とか言うんだろうと考えていた。


毎朝、目が覚めたら、新しい1日が始まる。

別に入学式や始業式、4月、以外にも『スタート』と呼べることはたくさんある。

いや、意味がなくても、今、自分が、『ここからスタートだ』と思えば、いつでもどんな時でも、スタートできるんだ。


それを、新学期になるたび、休みに入るたび、入学するたび、今まで言ったスタートがなかったことかのように、


「今日からスタートだ!今まで出来なかったことも関係ない。今までは無駄じゃない。ここからがスタートだ!』


そんなことを、特に大人は必ずと言っていいほど言う。


新学期のスタート

新しい学校でのスタート

休みのスタート

スタート…etc


『スタート』って一体世の中にいくつあるんだろう。


それから、

『君たちは、入学した。今日から改めて、全員が同じスタートラインに立った。大いに励みなさい』

そんな言葉を私は、小、中、そして高校で聞いたのだ。

もちろん、全員違う人が同じことを言っているのだ。


定番なのだろう。

花向けにもってこいなのだろう。



「スタートライン。」


『同じスタートラインに立った』

と言うことは、時間でのことを言っているのか。


高校受験で、志望校に合格した日から、入学後のことを考えて、第二外国語を勉強し始めていたクラスメイトがいた。

その子にとっての高校のスタートラインは、入試合格の日だろう。

高校生活を見据えて自分のために、『始めよう』そう思ったあの地点が、スタートラインなのだと思う。



ちなみに私は、高校スタートにビビって最初の試験で、生物と数学α、βの教科で、目も当てられない点数を叩き出し、補講を受けて、勉強の仕方をようやく掴んだ一学期期末テストの返却日。

「ようやくみんなと同じスタートラインに立てたな。」

と、褒めたつもりで言った一年の担任の先生のこの言葉が、先生がよく言う『同じスタートライン』なのだろう。私はみんなから遅れてスタートラインに立った、と言うことになるのだろうか。


これは、私の高校のスタートラインを、担任が勝手に決めた行為だ。


私自身は、最初の試験でヘマをやったあの日が、スタートラインだと思うのだ。

中学のとき本当に朝から晩まで大袈裟ではなく勉強頑張って、その努力なりの成績をおさめていたから、高校も大丈夫だろうと思った自分に反省とやり直しの機会を与えたあの日が、私にとっての『スタートライン』なのだ。


スタートラインなんてそんなものだ。


いつだって、スタートラインなんだ。


なにもしなくても、日々の何でもない生活の中でも、たとえ苦しくても。

自分で線を引いて、

ここがスタートラインだって言えばそうなのだ。

誰がなんと言おうと、誰かが勝手に決めつけようと思ったって、


そうなのだ。


私はそれを、

「心のスタートライン」

と、呼んでいる。


誕生日、七五三、入学式、卒業式…etc

春夏秋冬、朝、新年…etc

旅行、習い事、遊び…etc

時間、時期、時季

誰もが一度は経験するであろう人生における一般に言う『スタートライン』にあたるものだ。



「今日から頑張る!」

「今から頑張る!」

自分で決めた白線

それが、『心のスタートライン』の定義だ。


そしてそれが、私のスタートであり、スタートラインなのだ。


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― 新着の感想 ―
[一言]  そして、「明日から~」 と言う人間は永遠にその場に留まることになるのだ。
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