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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

男はしょせん女を美しく魅せる為のイヤリング

作者: ヒロモト

私は片目を瞑ると男がイヤリングに見える。

男は女をより美しくするイヤリング。

最高のイヤリングを見つけるのが女の幸せって事。


24才。知的さと美しさを兼ね備えた欧州と日本のハーフ。

美容snsで超人気の私に相応しいイヤリングはどこかしら?

今日も逆ナンとスカウトを蹴散らしながら街を歩く。


ゴミ拾いをする中年男『石』ね。落ちる水滴の様なデザイン。悪くないけど素材がダメ。


イケメンのホスト。

キラキラして綺麗だけどあの輝きは『偽物』ね。

中身に問題あり。バカな女に自慢するにはいいかも?


あらー。金持ちそうなハゲ男。

例えるなら『うんこの形をしたダイヤモンド』。

とーってもお高いけどデザインがgm。


「ねぇ~ん」


「なぁにぃ?」


不細工な女がキモかわいいと言えなくもないイヤリングをしている。

片目を開くと不細工な男が見えた。

芸人とかかな?


「……ブツブツブツブツ」


何かを呟きながら歩く男。一見アニメTシャツを着たキモいオタクに見えるがあれはインフルエンサーね。

神絵師ってやつかしら?

虹色の宝石。ウニみたいに尖ったデザイン。

オンリーワンと言えばオンリーワン。

これはキープね。




「うわっ。こっち見んな」


「なによぉっ!」


笑いたければ笑いなさいよ。

世界一のイヤリングを選んでいる内に私は不倫やらステマやら差別発言やらエトセトラで地位も名誉も失い……平々凡々なイヤリングにも見下される街中徘徊女(30)になってしまった。

何回も洗濯して濃いピンクから薄いピンクになったTシャツとかろうじて青いジーンズ。

底がすり減ったサンダル。


「……イヤリングイヤリングイヤリング」


「今日はどうしましたか?」 


「シャーーッ!」


「いい加減警戒しないで下さいよ」


ゴミ拾いをしていた『石』のイヤリング男。

こいつだけよ。路上で座っている私に声をかけてくれたのは。

『お腹減った』と言えば食料を。

『お腹いたい』と言ったら薬をくれた。


セックスもさせた事ないのに何でこいつは優しいのだろう?

一度聞いてみた事があるが『困ってる人を見たら助けるのは当然』と不思議な答えが返ってきた。

そんな奴いる?片目を閉じた。

やはり男は地味な石のイヤリングに見えた。


「……どいつもこいつも見返してやる!また人気者になってやるんだから!」


「まぁこれでも飲んで頑張ってください」


『石』の男はニコッと笑って栄養ドリンクを私の横に置いた。


「……ありがと」




さらに5年後。

実体験を元にした私の小説。

『歌舞伎町フールデイズ』はベストセラーになった。


「……キミハ美しい」


「……センキューダーリン」


自由の女神のデザインのピンクダイヤモンドのイヤリング。

これが私の夫。

アメリカ人のイケメン宝石商。

私はいるべき場所に帰ってきた。

人が豆粒にしか見えない高さのビルのワンフロアーを自由に使い好きな事をして生きてる。

これもイヤリングのお陰ね。





パーティーの壇上でボディーガードに守られながら数千人の『その他』の人間に注目されながらのインタビューは気持ちいい。


『先生の一番好きな宝石は何ですか?』


「それはもちろんピンクダイ……」


『先生!?』


「どうしたンダい?」


泣きながら片目を閉じた。

間違いない。遠くに見えるのは『石』の男だ。

相変わらず石だ。水滴の形も変わらない。

隣には地味な着物の女。

奥さんかな?だよね。


「……石が一番好きです」


『い……石ですか?宝石じゃなくて?』


「どんな宝石も結局は石ですよ。この世で一番美しいのはダイヤでもサファイアでもない。『長い時間をかけて磨きあげられ角の取れた石』です」


『……そうですかぁ』


インタビュアーは納得できなそうにしている。

石の男は私を見ていない。

パーティーを楽しんでる。

奥さんのお皿にビーフストロガノフを山盛りに取り分けて二人で笑っている。

愛し合ってるのが分かる。

奥さんは美人じゃないけど最高のイヤリングが最高に似合っている。


『私がいつか大物になっても恩着せがましい事言わないでよね?お金も絶対貸さないからね?一応メアド教えるけど絶対連絡しないでね?』


『言いませんよ。私は善行が好きなんです。見返りを求めたらそれは善行ではありませんから』


その時は格好付けてるだけで絶対連絡して来ると思ったのに。

私も精一杯恩返ししたかったのに。何だってしてあげたのに。

男は本当に名乗りでなかった。

ねぇ。見てよ。私いい女になったでしょ?今ならあなたに似合うよ?

私の事呼んでよ。みんなに紹介したいよ。

『この人は私の大恩人です』って。

「無理しないで。ドクターにミテモラオウ?」


夫が私の肩を抱いてくれた。

そう。この人が今の私の夫。


「大好きでした」


『……?石がですか?』


私は壇上から降りた。

男はやはり私を見てくれなかった。

一生かけてピンクダイヤモンドのイヤリングが似合う女になろう。

一生かけて石の事は忘れよう。

いつかまた同じ質問をされたら『ピンクダイヤモンドが一番好きです』って胸張って言えるかな?








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