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怪しい雲行き

第3章 怪しい雲行き



「ねぇおばあちゃん、くーちゃんがまだ帰ってこない。」


くーちゃんは今までもフラッと外へ行き、3‚4日帰って来ない事もあったけど、今日でもう一週間になる。


いくら気ままな猫であっても、心配になる。


「ま、あれはあれでやることがあるんだろ。ただ今回は少し手こずってるみたいだけどね。すぐ帰ってくるさ。」


くーちゃんのやる事?


この世界の猫には大事な仕事でもあるの?


「やっぱりその辺みてくるよ。」


「娘、外に行くのか?私も一緒に行こう。護衛は必要だ。」


そういうと少年は短剣をベルトに差し、少し大きいお下がりの(私の)マントをちまちました手で用意している。


何この可愛い子!大人ぶった口調とその行動のちぐはぐっぷりにキュン!とする。


なかなか懐かなかった野良にゃんこが、徐々に近寄ってくるような。


おねーさん、デレちゃうよ。


「行くなら早く。暗くなると危ないだろう?」


はい、すいません。用意します。




二人で森の中に入っていく。


「くーちゃん!どこー!?くーちゃぁん!!」


いつも薬草を採取してる場所や、岩場、小川の辺りを探す。


日本に居たときは、断然犬派だった。


けど、くーちゃんと暮らし始めてみて、猫の気まぐれな所や、時折見せるデレた態度にまんまとやられた。


無防備にお腹を出してぐでっとしてるのを見ると必ず、お腹に顔を突っ込んだりした。


『ミナミ、いい加減にしろよ。顔で爪研ぐぞ。』


とか言っても、私のしたい様に させてくれるくーちゃん。


「娘!こっちだ!」少年が私の手を取り走り出す。


着いた先には…




「湖…?」


私と老女が初めて会った湖。


あれからなんとなく近づいてなかったけど、あれ?こんなに小さかったかな?少し違和感がある。


「くーちゃん!!」


湖の岸で全身ビショビショの黒猫が横たわっていた。


「くーちゃん!死んじゃった!くーちゃん!くーちゃん!!」


『重いわ、阿呆。耳元でギャンギャン喚くでないわ。』


強気の口調とは違って、体半分水に浸かったまま動けないくーちゃん。


『娘………』


「何?くーちゃんどうした?」


ポロポロ泣きながらくーちゃんの体を水から出す。


『……取り敢えず、』


「うん。」


涙が止まらない。


『…………腹、減った………』




「やれやら、帰ってくるなり飯の催促かい?なんだってんだい、まったく。」


家に着くなりガツガツと勢いよくご飯を食べるくーちゃん。


食べている最中に傷の有無を確認したけど、大丈夫だったみたい。


でも顔は痩けて、少し目が窪んでて、肋骨が見えるくらい痩せていた。




その日の夜、何となく寝付けずに水でも飲もうかと部屋から出ると、奥の老女の部屋から明かりが漏れていた。


また明かりを消さないで寝ちゃったのね、勿体ないんだから。と消そうと部屋に近づくと、


「今回はかなり大変だったみたいね。」


『次はもう、無理かもしれんな。』


「私の力はもう譲渡されちゃったし、目覚めの気配はまだないみたいだしね。しかたがないのかしら。」


『儂とて、無理矢理というのは好かん。しかし時間が残されていないのも事実。』


老女?とくーちゃんが話してる?


もう無理?目覚め? 内容は全く分からなかったけど、聞いてちゃ行けない気がして、そっと部屋に戻った。


その夜は朝まで眠れなかった。

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