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目立たなく、平和に穏便に暮らしたかったのに…

第1章 ここはどこ?ってお決まりですね。


『さあ、目を開いて


さあ、手を伸ばして


さあ、足を出して


私の元においでなさい。


私の手の中に


おいでなさい…』


窓の外で小鳥が今日も元気にさえずっている。


もう少し微睡んでいたかったけど、今日はやることが多いんだったと重い体を起こす。


「うわぁ~ヒドイ寝癖だ。髪塗料の分量考えなきゃなぁ。」布団に戻りたい体をなんとか動かす。


ギイエェー!ギイエェー!


窓の外を見ると、色とりどりな生き物が朝から元気良く活動してる。


私は坂口 南。

多分今年で25歳。多分ね。


なぜ曖昧なのかと言うと、ここ、私が住んでた日本もとい世界ではない。


20歳の時、大学の帰り道。凄く懐かしい声を聞いたと振り返った瞬間、見たこともない森の中に居た。


一つ目のウサギが前を通り過ぎ、飛行機より大きな鳥が頭上を飛んでいた。


私はパニックになり、がむしゃらに走った。


走って走って、とても綺麗な湖に着いた。


そこで少し冷静になり、湖の水を覗くと中からとてつもなく大きな魚のようなものが飛び出してきて…


そこで意識が途切れた…


次に意識が戻ると目の前にしわくちゃの老女がぬうっと顔を出し…また意識を失う。




2日寝たままだったそうで、起きたら老女にめちゃくちゃ文句を言われた。


「命の恩人に対して、なんだその態度は!」


ーーー仰る通りです、ごめんなさい。


プリプリ怒りながらも、状況を説明してくれた。


ここはカザナン王国と呼ばれる地で、その外れの“死の森“と呼ばれるところ。


湖でビショビショになって倒れている私を、通りがかった彼女が自宅に連れ帰ってくれた…と。


ん?私を運べる腕力があるように見えないけど?と聞くと


「秘密だよ」


と魔女みたいにイヒヒッと笑った。


そんなこんなで、老女と私の共同生活が始まり…といってもこの老女、人をこき使い、こき使いまわし、こき使い倒した…




「おばあちゃん、水汲み終わったよ。薪割りも。」


「じゃ、この薬草を取ってきておくれ。根っこからだよ」


「えー!もう夕方じゃない!すぐ暗くなるよ?」


「つべこべ言ってないで、早くお行き!」


と、籠を顔に投げられ、渋々 森に入る。


こんな感じだけど、いきなり異世界に来た正体不明の私に、色々と生きる術を教えてくれて、具合の悪いときはちゃんと看病してくれる。


いわゆる『ツンデレ』だ。


でももう5年も一緒に暮らしてるけど、名前は絶対に教えてくれない。もう頑なに。




「お?今日もコキ使われてんなぁミナミ。ご苦労さん」


森に入ろうとしたらひょろっとした青年が声をかけてきた。


「あー!グラン!久しぶり。今日は何を持ってきてくれたの?」


「おいおい、人の顔みるなりものごいか?つれないねぇ。」


ひょろっとした青年が、おどけて笑う。


この人はグランエル。


時々色々な品物を老女に届けに来る。


王国御用達の商人とのことなんだけど、老女とも気の知れた仲らしく、おばあちゃんと孫的な感じがしたり、ちょっと違うような感じがしたり…


なかなか謎な人。


「いまから森に入るのか?あんのババア、若い娘に何させてんだか…。一緒に行ってやるよ。荷物置いてくるから、ちょっと待ってな。」


言うなりダッと小屋に向かって走って行ったグラン。


彼も老女と同じく、口は悪いが優しいんだよね。


言葉通り、ちょっと待ってたら戻ってきたグランと共に、もう薄暗くなってきた森に入る。






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