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26.いよいよ俺の役目がきた!?




 結果的に、和馬兄弟は和解した・・・・・・ようである。



 実はあの後、俺たちのクラスは急な教室移動が伝えられあの場から離れたし(昼飯食いっぱぐれた)、八は次の授業の係の仕事を忘れていたと教室に帰っていった。


 授業が終わった後、頬に大きなガーゼをくっつけてにこにこと笑う小蟹が教室に来て、報告をしてきたのだった。

 ホームルームが終わった途端廊下がキャーキャーと賑やかだったから、一体なにがあったんだと思っていたら小蟹だったのだ。原因は小蟹自身が湧かせているのと、もう一つ彼の頬で存在を主張している大きなガーゼだ。彼はケンカからはほど遠い存在だという認識だったからと、美しい顔に痛々しいガーゼという二つのことで主に女子たちが騒いだのだろう。



 俺たちが屋上から離れた後、小海老に横っ面を蹴られた小蟹は正気に戻ったらしい。小海老は、小蟹が生まれてからずっと自分のことを馬鹿にしていると思っていたらしい。そして、自分が素っ気ない態度をとったことから小蟹は小海老を嫌ってもいると思っていたのだと。ずっと。


 小蟹はあの勢いで弁解し、逆に兄をずっと尊敬していたこと、そしてずっと長い間仲良くしたいと思っていたことを伝えた。昔は少しイラついたことも。

 そして、ずいぶん前から愛でたいと思って我慢してきたことも伝えたらしい。


 『気持ち悪ぃ』と言われすっごく蔑んだ顔で見られたが、よくよく見ると少しだけ前とは違う表情で、もしかしたら照れているのかも知れないというのを感じ取れた顔だったのが嬉しかった。

 と小蟹は本当に嬉しそうに話した。


 小蟹が話をしている顔も、今までとは少し違うほわっと緩んだ顔だった。


 小蟹、よかったな。



 「そんで結局どっちが勝ったんだよ」


 俺が良い話に『よかったよかった』と涙ぐみながら頷いていたら、いつの間にか会話に加わっていた八がそう言った。


 「うーーん、実際ケンカというケンカにはならなかったからなぁ・・・・・・。引き分けってとこかな?」


 「なんだよそれーー!!じゃあ今度は俺がお前の兄貴にケンカを売ってみよう」


 「やめといたほうがいいですよ八くん」


 「そうだな、白島くんの言うとおりだよ猿里八。兄貴はちっさいけど結構強いらしいからね」


 「俺も一度戦ってみてぇな・・・・・・」


 「黒原くんだったらきっと良い勝負するんじゃないかな」


 「おい小蟹!チヒロだったらって何だよ!いつも思うけどお前けっこう俺を舐めてねぇ?」


 「おお!!チヒロくんぜひ戦ってみてくださいよ!僕その勝負見てみたいです!!」


 「白島くんも体外変わってるよね~。見るからに大人しそうなのにさ。あ、こないだなんか3組の奴


ぶっ倒したって聞いたけど、あれって本当?どうやったの?」


  「え~とですね・・・あれはまぐれというか・・・・・・」



 会話を聞いていて、みんな仲が良いな・・・・・・と思った。

それに、なんか俺の知らない話もしている。ユウキがケンカをしたなんて、俺一度も聞いたことない。俺は2人、いや八や小蟹と常に一緒にいるなんて思っていたけど、そんなことなかったんだな。

なんて、ちょっと寂しくなった。


 ああ自己中だな、俺。別に俺と一緒にいないときなんか普通にあるだろ。それをなんか俺がいないとダメみたいな感じに思っちゃってさ。




 「でさ、まだまだ口をきいて貰えるようになったぐらいだけどさ、こんなに進歩できたのはマキのおかげだよ。ありがとう、マキ」


 ずぅぅんなんて落ち込んでいたら、小蟹がキラキラした素直な笑顔でお礼をしてきた。

 

 一体俺が何かしたか?思い当たることがなく首を傾げる。



 「いや、俺は何もしていないよ。勇気を出して一歩歩み寄ったのは小蟹自身だから、小蟹の成果だよ」


 「マキ・・・・・・」


 

 「よーーーし今日は小蟹の兄弟仲直り記念日でパーティーしようぜ!!どっか食いに行こう!小蟹のおごりで」


 「わーーい!ごちそうさまです小蟹さん」


 「何勝手に決めてるんだよ猿里八。それに白島くんまで・・・君、結構図々しいよね。まぁいいけど・・・・・・てか君らさぁ、もう俺のこと小蟹って普通に呼んでるよねー 」


 小蟹の嬉しそうな笑顔がマンガの中の小蟹と重なる。























 そこで、ハッと思い出す。


 小蟹の件が終わった後、真柴真希の告白へとストーリーは進むのだということを。















 ああぁあああああどうしよおぉおおおおおおおお!!!

今色々心が穏やかじゃない時にこの情報量!!もうどうしたらいいかわからない。



 

 今言えることは、今の心境じゃ心から小蟹を祝うことができないということだ。




 「わるい。俺、今日帰るわ」


 わいわいしていたみんながいきなり静かになった。

すごく気まずい。でも、このモヤモヤとした気持ちのまま小蟹を祝うのも失礼だ。


 「えーーーマキも功労者なのに~!?


  じゃあさ、今日は止めにしてまた今度マキも一緒に行ける日にしよう?」


 「そうですね。マキくんがいないんじゃ」


 「そうだな。マキが来ないんじゃあな!」



 なんだか俺のせいで申し訳ない・・・・・・

やるせない。情けない。ああ・・・・・・


 「マキ、今日いっしょに――


 「チヒロごめん。今日は急いで帰らなきゃならないんだ。だから、もう行くね。


 じゃあみんな、またね」



 そう言ってみんなの顔も見ずにさっさと出入り口に向かい、そのまま振り返りもせずに下駄箱へと走って行った。




 

 ああ、もう、なんか頭の中がネガティブなことしか生まない。

例えば選択肢がAとBがあって、どちらを選んでも後悔しそうな感じ。




 あーあ・・・・・・チヒロも、嫌な気持ちになったよね・・・・・・。もう俺、みんなと仲良くできないかも。






 しかも、この状況でユウキに告白とか。俺のメンタルがズタズタになりそう。









 こうやって俺は、またまた新たな悩みに直面するのであった。


































 夜、布団の中でぐるぐると考える。


 はっやくねーか!?和馬兄弟のケンカ。

 確かマンガでは・・・・・・


 八との騒動が終わったすぐ後の2,3年生による部活・委員会の勧誘の時期、小蟹が初めて登場しユウキと接触。小蟹は長年自分を繕っており、その原因は兄ということが小蟹のエピソードで語られる。小蟹がユウキと時間を重ねるに従って(チヒロとマキが委員会中)小蟹の素の顔がだんだん出てくるようになる。そして小蟹はユウキと接することで前向きになることができ、諦めかけていた兄との関係に一歩踏み出す決心をつけ、めでたく念願が叶うのである。


 そして八や小蟹などの強力なライバルが現れるも自分の気持ちにすら気づいていないチヒロ、そして自分の気持ちには少なからず気づいているのにこれまたどうしていいかわかっていないユウキの双方にやきもきしたマキが2人に気持ちを自覚させようとユウキに告白をふっかけるのだ。




 うん・・・。順番は合ってる。


 だがスピードが・・・・・・速すぎるっっ!!

 だって高校入った瞬間にすでに八の件は終了してるし、そのすぐ後に小蟹と会った。まぁ話はやや違うところもあるが、順調といえば順調と言えるほど進んでしまっている。


 そして小蟹の一難が去ったあとの、俺――マキのユウキへの告白だ。


 問題はそこだ! なんか、もうこの告白必要なくない?である。

 そう思わん!?俺は思う。だって、明らかにタイミングがおかしいもん。

 ほのぼの生活送ってました~、はい小蟹が兄と仲良くなれました~

 で、俺の告白。


 おかしかない?


 なんかマンガではそこそこしっくりきたけどさ。だって読者目線からも2人の行動にはやきもきしていたから。

 

 けどさ、俺2人と行動を共にしてて全くそういう感情が湧かないんだよね。普通に最初から仲が良いから。それに八も小蟹もチヒロとは目線バチバチなライバル関係っては思えなくて、なんかみんなで『ほのぼのクラブ』結成しているみたいな空気で全っ然緊張感ないし・・・。

 だから、わざわざ俺が告白したって・・・あのかわいいユウキに首を傾かせてその後ほわほわオーラを纏わせ(きっと眼鏡の下で)天使スマイルで『あははっ! 何言ってるんですかマキくんったら~』とか言わせるだけなんだーーー!!!(言われたい気がするけど!)



 

 いる!?まじでいる!?俺の告白シーン。













 いるよなぁ・・・・・・


 だってそれがストーリー的に正しい行動だもん。



 はぁああー・・・

 告白なんて前回の人生と今回のを合わせても初めてのことだから、どうやってすればいいのかわからない。

 のマキを参考にしようとしても、タイミング良くちゃんと言えるかわからないし。



 あ゛あああああああああああああああああああ――




 

 そうやって頭をぐしゃぐしゃして唸ってたら母さんと父さんが心配していたらしく、母さんが『落ち着くから』と言ってレモンティーを持ってきてくれた。


 ごめんね気をつかわせて。ありがとう母さん・・・・・・


 でも、紅茶を寝る前に飲むとトイレが近くなるんだよね-・・・・・・






 

 親の優しさが心に染みた夜だった。









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