表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/44

18.新入生歓迎会



 今日は新1年生の歓迎会の日だ。部活や委員会の説明が主なものらしい。



 もうあと数十分で午前最後の授業が終わる。俺は机に突っ伏して顔だけ上げ、時計を睨んでいた。

目の前では黒板に数々の数式が書かれており、楽良が解説をしている。

あーだめだ。お腹空いているのに、眠い。

前世では数学は苦手だったが、もう一度小学生から学んだことで理解ができるようになった。だから今は苦手でも嫌いでもない。

しかしどの教科も、どうにも頭が受け付けないときってあるでしょう?こう、今は数学する頭じゃないな~みたいな。頭が数学モードじゃないみたいなさぁ。今、それです。なんか、ボーとする。とにかく、なにも頭に入ってこない。

今日は一応短縮された授業だから今はまだ12時前だけど、俺の腹はもう鳴る寸前。しかも眠い!

俺は突っ伏した姿勢から起き上がり、今度は肘を突いてその手で頭を支えた。一目見て、『あ、こいつやる気ないな』とわかる姿勢だ。だって眠いんだもの。


 大口を開けて欠伸をする。あ、やばい。一回欠伸出ると止まらないんだった。

それから俺は20回くらいは連続で欠伸をした。する度に涙が目から滲み出て溜まっていく。そして最後の欠伸のときにそれが決壊して涙が流れていった。

涙はつー・・・と垂れて襟の中へと入っていった。ゲッ、冷たっ!


 そうこうしている内にキーンコーンカーンコーンと鐘が鳴り、授業が終わった。思いっきり腕を伸ばして伸びをする。なんでこんなに伸びは気持ちがいいのだろう!!


 伸びの気持ちよさに感動していたら、楽良がムスッとして言った。


 「じゃあ真柴、問3の3問、次回の授業前に黒板に答え書いとけ。なにやら余裕っぽかったからな」


 「げっ!」


 教科書を見てもそんな問題はなく、黒板を見ればおそらく彼が言っていたであろう問題式が今まさに本人によって消されかけていた。


 「あーー!!!待って待ってって、・・・・・・くっそーー」


 若干ニヤつきながら速度を上げて全て消された。

 大人げない・・・・・・。



 前の席の歩野谷くんにノートを見せて貰おうと彼の背中に手を伸ばした瞬間、頭にノートを叩きつけられた。


 「ぎゃっ!」


 見ると、チヒロが手にノートを持って呆れた顔をしていた。

 そんなに痛くはなかったが、びっくりした。


 「ありがとー」


 俺は素直に受け取り、さっき言っていた問を解きながら写す。

チヒロの後ろからユウキが来て『あーー、出遅れたー』と残念そうにしていた。俺、愛されてるなーと心がほくほくした。


 昼休みになるのはいつもよりも早いし、歓迎会の準備で休み時間も通常より長いらしい。

今日は曇りで、雨が降ってきそうだったから初めて教室で食べようということになった。



 


 新1年生歓迎会。俺たちは、体育館に用意されている1年生用の席に自由に腰掛ける。並びでいうと、ユウキ、俺、チヒロ、八だ。八はなんだかぶつぶつと文句をたれているが、ユウキと隣同士になれなかったからだろうか?普段ユウキには特に好意を抱いてる風には見えなかったけど、どこかで八も本作通りユウキに惚れたのかもしれない。席、替わってあげたほうがいいのかな? あ、でもチヒロもユウキの隣がいいよな?じゃあ、チヒロと八がユウキの両隣に座ればいいんじゃね?ユウキだってその方がいいだろう。

そう提案しようとチヒロと八の方を向きかけたとき、右隣から「楽しみですね」と声を掛けられ、「お、おお。な!」と返事をする。今度こそ2人の方を向いて口を開こうとしたら、チヒロに「もう始まるから前向いとけ」と顔を手の平でむにっとされた。


 ほぅ・・・・・・。席などという小さなことにはこだわらないというわけですか。さすが器がでかいと感激した。それに比べて八はなんて子どもなんだ。






 マキは大きな間違いをかましており、そして理不尽にもマキの中の八の株が下がっていくのだった。









  最初に会長の挨拶。そしてそれから委員会の紹介、部活動の紹介が行われた。

なかでも、やっぱり家庭部に惹かれた。前世は部活動なんてやったことがなかったからやってみたいというのもある。裁縫や料理が得意だからというのもある。そしてはっきり言うが、俺は人と関わるのが苦手だ。ベースに『苦手』が染みついている。チヒロとか八、ユウキはストーリー上関わらなくてはいけないキャラだということもあるし、実際に付き合っていても苦痛は感じない。一緒にいて楽しいし安心する。

むしろ彼ら以外と上手く付き合える気がしないのだ。特に運動部のノリにつついていける自信がない。前世の記憶からして運動部なんかコワイ・・・・・・『ガツガツ行くぜ!』みたいな感じがする。

その点家庭部ならそんなノリみたいなのなさそうだし、1人で黙々とやっていけそうな気がする。そして、人と関わるということも徐々に慣らすことができそうな気がするからこの部活に入りたいんだ。




 


 部活動紹介の後は、映画部が作成した映画と演劇部による劇が公演された。映画は、カボチャが人間の男に恋をしその障壁になりうる人間を襲い始めるというなんとも奇天烈きてれつな作品だった。劇はロマンチックなラブストーリーで、みんな歌も踊りもめちゃ上手かった。特に輝いてたのは王子。あ、生徒会長ね。王子(と呼ばれている人)が王子役をやるって・・・・・・リアルだった。彼は1年生から演劇部に属しており、なんでも一番最初に演じた役が3枚目で話題になったとか。だろうな。

 普段は冷静沈着なキラキラな2枚目キャラなイメージなのに反し、その劇で演じたのはピエロ的存在。役に入るとプロ並みに仮面が変わるそうだ。

一つ思ったのが、配役決めるとき生徒会長がいると気まずくないのかなーということだ。俺が配役決める人だったら絶対主役級ばかり配役しそう。


 王子の演技、感動しました。




 歓迎会が終わって各々が教室へ戻る。さて部活動どうしようかな~と考えていると、ユウキが隣に並んで笑顔を向けてくる。


 「楽しかったですねー。マキくんは、なにか気になる部活動ありました?」


 「うーん、あったっちゃあったんだけど・・・・・・」


 「え、どれだ。俺も同じ部活入るぞ」


 家庭部の部室で裁縫をする八・・・・・・。料理をする八・・・・・・。


 「ブフォッ」


 「今なんで笑ったんだマキ!?」


 そんな感じでわちゃわちゃしながら俺たちは教室へ戻っていった。



























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ