13.仕事をしなさい、ヒーローくん。
ユウキが上級生に絡まれている・・・・・・。
こ・こ・は、見せ場じゃないですかチヒロさんん!?シュバッと格好いいとこ見せてさぁ、惚れさせちゃいなよ。 てかチヒロの格好良さで、覚えてないと思うけどユウキの中の朝のマキの記憶が塗り替えられるはず!!よかったぁぁぁああああ
って、なんで素通りしようとしてんの!?チヒロくんん!!?
「ちょおおおっとチヒロ!!!?」
俺はチヒロの襟の後ろを思いっきり掴んで後ろに引っ張った。
「なんで助けようとしないのっ!? 早くあの子助けなきゃ!!」
小声でそう言うと、いきなり引っ張られて驚いた顔をしていたチヒロは、今度は少し機嫌が悪くなったのがわかった。 こっえ!!ごめんなさい!!!
「なぜだ」
おお・・・。チヒロにしては意外な苛ついた言い方。お前・・・ちゃんと人間なんだな(失礼)。
あっれー?おかしいな。
チヒロは基本興味のないものはガン無視だ。ユウキくんには・・・興味が沸かないのか・・・?
「え、チヒロ。あの子のこと気にならない?助けてあげたいとか思わないの??」
「お前はあいつが気になるのか」
んー、俺が今チヒロに聞いてるんだけど。
「そりゃ気になるよ!な、なんとなく!! ほらっ!!いいから早く助けてあげてっ!!」
悠長に話している間にどんどん状態が悪くなってきて、もう少しでユウキが暴力を振るわれそうだ・・・という空気になってきたので慌ててチヒロの背を押し出した。
いきなり角から出てきたチヒロに、今まさに殴ろうとしている奴と殴られようとしているユウキの2人からの視線が向く。
「っんだてめぇ!!? なんか文句――ンブッ」
チヒロは、変なしゃくり顔で近づいてきた上級生を突如殴った――。
おお・・・・・・
ヤバいんとちゃう・・・? 初っぱなから上級生殴ったりして。
漫画では脅す程度だったのに・・・・・・痛そう・・・
殴られた(おそらく)先輩は、鼻血を出してぶっ倒れた。
「おい、行くぞ」
チヒロはまるで何もなかったかのように俺の腕を掴んで教室へと向かった。
その後ろでユウキは、俺たちの背中を呆然とした顔で見つめていた。
教室に着くと、俺たち以外の生徒は席に座ってはいたものの教師はまだ来ていなかった。
やっぱり席順は出席番号順となっており、チヒロとは離れることになった。
しばらくして最後にユウキが静かに教室に入ってきて、チヒロと少し離れた場所に座った。
ユウキは着席すると、じいっとチヒロを見つめていた。
おおっ・・・!! チヒロのこと、気になったのかな・・・? 早くも惚れた?とか??
だって格好いいもんな-。もうだめって時にサッときてバッっと助けてくれたら・・・そりゃ気になるわ。しかもチヒロ見た目も格好いいし。
っつーことは、2人の出会いは・・・クリア? かな?
さすが高校生ともなると、入学式だというのにもう打ち解けて話している生徒が多い。
みんなコミュニケーション能力高いな・・・・・・
ざわざわしていると前の扉がガラッと空き、スーツにボサァッとした髪の、30代くらいの男性がだるそうに欠伸をしながら教室に入ってきた。
キータ――!!!我らが1年2組の担任、“楽良 亮”先生だ!!
うわー!生だぁぁ!! 生ラクラ~!!
あっ、でも今の時点では担任に決まったわけではないんだけどね・・・・・・。
各クラスの担任が知らされるのは明日の始業式だから。
楽良亮は、面倒くさがりでいつもやる気がなさそうなイケメン教師(髪ボサボサだけどね)。
ユウキが入学した年も、自分が担当となったクラスの生徒をベルトコンベアーのごとく流そうとしていたが、どう見ても気が弱そうなユウキが色々とあまり良くない噂を聞くこれまた扱いが面倒くさいチヒロとマキの2人組とよく行動するのを目にし、脅されてるのではないかと気にかけるようになる。
楽良は数学の教師であり、数学の係になったユウキが提出物を集めて運んできたところ、ファーストコンタクトをとる。
はじめからあの2人に脅されているのだと決めつけていたが、ユウキがあっけらかんと『強くなりたいからその秘密を暴くために自分からひっついてるんだ』ということを告げたため拍子抜けしたと共にユウキという人物に興味を持ち出す。
恋の闘争には参加してこないキャラだが、皆を平等に扱い登場人物が悩んでいると良いアドバイスをしてくれる、まぁ皆の親的存在だな。ええキャラや。なんか、温かく見守ってる感とかが。でも反応が面白い奴にはちょっと意地悪するんだよねー。そこも良い。
いやー、とにかく良いキャラなんだよなー。てか全員良いキャラ!!この漫画に出てくるのは!!
ということを考えていたら、楽良が話していたことを聞き逃した。
あっ、やっべぇ。こっち見てる。話聞いてなかったのバレたかな?
目ぇつけられたかも・・・って、楽良は最初っから俺たちのことロックオンしているからな~。
明日の説明とか帰りにチヒロに何話してたか聞こ~っと。
担任の話が終わり解散になると、俺はすかさずチヒロのもとへ駆け寄り共に帰ろうとする。
鞄を担いで2人連れだって教室から出ようとすると、後ろから視線を感じた。
振り返ると、眼鏡で顔の大半が隠れているユウキが俺たちに声をかけたそうにしている姿が目に入った。オドオドとしていて、声をかけようか、いやでも無視されたら辛いっっ。でも名前聞きたいし・・・でもなんか怖そう。いきなりどつかれたら・・・・・・と、ボソボソ言っているのが、端から見れば『何あの子』状態だ。完全なるコミュ障(?)。
グッジョブ。前世の俺はそんな努力さえしなかったぜ。すげぇよユウキ。
人知れず感動していると後ろから肩を叩かれた。
「おい、帰るぞ」
ちょっと苛ついてる・・・。どうしてだろう・・・・・・? ちょうどお昼時でおなかが空いてイライラしているのかな?
「うん。行こ行こ!!
あっ、帰りにあそこでご飯食べてこ!!」
俺はさりげなくご飯に誘い、機嫌が直ることを期待して元気よく答え歩き出す。
楽良の話は、今日入学したばっかだけど、もう大学入試のことを考えて毎日勉強しろというものだった。
早っえーーーー。今日入学式だよ!? もう大学のこと!!?
でもまあ、大事な事だけどさぁ・・・・・・
俺は前世高校生で一生を終えた。今回は寿命が尽きるまで精一杯生きたい。
漫画の中ではマキ達はまだ高校生だった。つまり、俺が漫画のマキの年を越えたら、というか書かれている部分の後のことは、全くわからないということだ。そこから自分として生きていかねばならないということだ。
まさか本当に俺らは永遠に高校生だということも考えにくい。
だから俺は本当に、俺として生きる覚悟をしなきゃいけないということだ。もうこの作品の“真柴真希”に人生を頼ってはいけないんだ。
俺は帰りに入ったファミレスで15杯目のジュースを飲みながら、チヒロと八が談笑しているのをボ~と見ていた。(向かいの席にはなぜか誘っても居ないのに一緒に来た八がチヒロと和気藹々と喋っており、『お前ら漫画では犬猿の仲ではなかったか・・・?』と疑問を抱くマキだった。)
気づいたら18杯も飲んでいて、次の瞬間今朝とは違う意味で腹がやばいことになりました。




