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11.いよいよ物語のスタート!?





 1月のあの日、チヒロを狙って攻撃してきた人物は俺らと同じ3年生の、西野にしの こうという男子生徒だった。


 なんでも何ヶ月か前にチヒロにケンカを売って殴りかかったのを普通に避けられ、そのまま壁に拳を打ち付けたことで手を痛め、その傷めた手で受験を受けた。そして最近結果が出て結果は全て不合格。彼には公立は難しいとされており、不合格だったのは本命なのに“滑り止め”だと格好をつけ、そして悉く散ってしまった私立高校の数々だった・・・・・・ということだ。




 ナニソレ。八つ当たりジャン。  って思うよねぇ!?

 はぁ!?だったらなにか!?? 俺はそんなしょーーーーーーもなあああい理由で大事な大事な腕を傷つけられたっていうのですかぃい!???



 ふっっっっざけんな!!!!!!!!!!



  フゥーーフゥーーーー 




 ってことで、奴はどこの高校にも入れず、しかもこの最後の最後の時期に退学となり学校から去って行ったのであった。






 俺が傷の手当てを受けた後、チヒロは普段あまり動くことのない眉を下げて『すまなかった』と謝ってきた。

 なぜチヒロが謝るのかわからなくて、『なんでチヒロが謝るの? 別にチヒロは何も悪いことしてないじゃん!!』と言ったが、チヒロはぶんぶんと首を横に振った。


 『俺があのとき、ちゃんと奴の攻撃を受けていたら・・・もしくは奴を再起不能にできていたら・・・・・・・・お前に傷を付けてしまったのは、俺のせいだ・・・すまなかった、マキ』


 『わああああああああ!!なんか変なこといってるぅぅチヒロ!!さ、再起不能!!?

 いやそこ問題じゃないし。もともと1から10まであいつが悪いし!! 気にしないでよ!

 俺はチヒロを守れて嬉しかったんだから!!  ・・・ねっ?』


 と俺が慌てまくって説得したら、渋々謝るのを止めた。

 だが『これからは何があっても俺がお前を守るから』と、言われた。

 いやいやいやいや!!!!それあんたがユウキに言うセリフでしょ!! 何やってんだ!?

 てか俺それほどの言葉を言われるほどの何かをしたっ!? 庇っただけじゃん。今までのケンカでもそういう機会しょっちゅうだったよね!?  本当俺、何かしましたかっ!?



 と、俺は今までで一番自問自答しながらその日一日を過ごしたのだった。

 


 ちなみにあの事件の日受験で学校に来なかった・・・・・・のではなく、普通に風邪引いて学校休んでたバカ(八巻)に次の日めっちゃ心配されたが適当にあしらった。そして奴はもう学校にはいない事件の犯人を殴りに行った。(学校中を探し回った八巻が俺のところに来て『お前の真っ白ですべすべでつやつやで細くて力入れたら折れちゃいそうなか弱い腕を、傷つけた馬鹿者はっっ、どこでゃっ!!?』と問い詰めてきた。いや馬鹿者はお前だし最後噛んでるしその俺の腕の情報なんだよと若干引きつつ、もう学校にいないことを伝えたら八巻はなんとも言えない顔をしていた。せめて居場所聞いてから動けよ・・・・・・と思った。






 

 事件から数日後、チヒロが俺にリストバンドをくれた。別にこんな傷気にしなくてもいいのに・・・・・・と思いつつも単純に嬉しい。

 だって主人公からのプレゼントだよ!?へへへっ♪ 

 貰った瞬間密閉して丁重に扱い厳重に保管して観賞用にしようと思っていたところ、チヒロに付けて欲しいと言われたため付けることにした。

 そのリストバンドは・・・・・・めちゃ可愛かった・・・

 くまちゃん。ピンク地にくまちゃんと星・・・がんわいいっ!!


 ありがと、チヒロ。大事にするね。




















 そして、俺たち(八巻含む)は無事志望校である名門校に合格し4月から通うことになった――。


 

 いよいよ漫画のストーリーが動き出す。もう1人の主人公、白島結城の登場だ。










 春休みももうあと1日。明日は、漫画『鼠になれっ!』の舞台――王翼おうよく高等学校の入学式だ。

 俺は今までの出来事を振り返る。

 いろいろあったなぁ~ほんと。


 ケンカとかケンカとかケンカとか・・・・・・いや、ケンカだけじゃないぞっ!?

 学校での行事やクリスマスなどのイベント・・・両親との時間やチヒロや八巻との時間、クラスで過ごした時間もすごく充実したものだった。





 さて、相も変わらず今回も全く眠れませんでしたー。

 いやね、俺もいろいろ寝られるように努力はしましたよ。ホットな紅茶飲んでみたり(その後めっちゃトイレ近くなった)穏やかな音楽聴いてみたり(いつも聞いて20秒で入眠なのに今回最後まで聞いちゃった)難しい本読んでみたり(なぜか目が冴えて内容理解できて驚いた)・・・とね・・・・・・




 そして翌朝。寝坊しました☆


 いや☆じゃねーーーよっ!!

 まぁ寝坊といっても朝ご飯抜いて走ればチヒロとの待ち合わせ時間には間に合う!! 急ごう!!

 昔はよく、待ち合わせ時間に俺が来なかった場合のみチヒロが俺の家まで来てくれた。俺はそれが申し訳なくてそれからは一度も遅刻をしていない。

 

 


 急いで壁に掛かっているおニューの制服に手を通す。下はチェック、ブレザーは青藍色。

 前世すっごい憧れた制服だああ~ふあああ~

 ボタンは全開のままだが、チヒロに迷惑掛けずに行きたいからそんなん気にせずとにかく急ぐ。鞄に今日必要な物があるかをチェックして、直後部屋から飛び出した。

 階段をダダダダと勢いよく降りていき、俺の姿を目にした母さんに朝の挨拶をする。

 

 「あらマキちゃんおはよう。 朝ご飯は?」


 「ごめんもう行くっ!行ってきまーす。また後でねー」


 勧められた朝食を断念し、あ、またカメラを忘れたと思うも後で学校に来る両親にまた借りようと思いつつ家から出て行く。



 

 うっわぎりぎり着くかな~

 俺はふと、よく昔使っていた近道の存在を思い出した。

 ここを使えばきっと間に合うと考え、家を出て右に曲がった先にある建物と建物の間の道に足を踏み入れた。


 入学式に対する緊張と主人公に会える緊張、期待、ずっと憧れていたこれから始まる高校生活、そして今現在の焦りで俺の心臓はバックバックいっていた。

 この道は案外幅広く、人が2人横に並びながら歩くことができる。


 前方に人が2人くらいいたが薄暗くてよく見えず、まあ避けるだろうと思ってそのまま走っていた。

 案の定相手は端の方に寄ったが、通り過ぎる際に俺の肩が相手の鞄に当たってしまった。


 「すいませーーん!」

 

 と俺は顔を見ずに謝りそのまま行こうとしたら、後ろから腕を掴まれ、


 「なんっだその態度はぁぁああ!?ああん!?」


 と言ってきた。

 人間焦ると視野が狭くなり、思考する余裕もなくなるものだ。


 「急いでんの! じゃーま」

 ということで俺は相手の顔を見ないまま左足で回し蹴りをぶちかまして、相手の手が俺の腕から離れた瞬間走り出した。

 なんかケンカ越しだったから、別に良いよね?


 後ろから、おどおどとしたか細い声で


 「あ、ありがとうございます!!」


 と聞こえてきたが振り返る余裕もなく、後ろに向かって手を軽く振った。

 何か聞いたことがあるような声だったが、チヒロを待たせているという焦りの気持ちからすぐに考えるのを止めた。



 


 走って公園に着くと、入り口にチヒロが立っていた。俺は息を整えながら腕時計を覗くと、時間ぴったりだった。


 「よかったぁ~、間に合った~。 チヒロぉ、ごめんね。おまたせぇ」


 「いや、時間通りだ」


 「じゃあ行こっか」


 「あ、そういや猿里八も一緒に行きたいって言ってたから時間と場所教えた」



 ん・・・・・・? なんでチヒロとあいつがそんな仲よさげになっているの?

 てかあなた達いつそんな会話したの?


 「え・・・・・・。あいつ、いつそんなこと言ってきたの?」


 「昨日。 偶々外で会ったときに言ってきた。で、そのままお茶してきた」


 オ・チャ!!?『お』茶ってなに『お』茶って!!!可愛すぎるだろ言い方!!

 あと八巻!!なんで漫画の中ではチヒロにライバル心ムンムンだったお前がその相手と可愛くのどかに“O・CHA”なんかしてんだよ!?漫画と違いすぎて俺今後の展開怖くなってきたよ!!


 頭を手で覆い『あ゛~』と唸りながら髪をくしゃくしゃするマキを見て、チヒロはどうしたのか気になった。 『せっかく入学式なのに髪をぐしゃぐしゃにして・・・』ではなく、『せっかくの可愛い寝癖が・・・』と思っていると、


 「おーわりぃわりぃ、おっまたせ―。はよー マキ、黒原」


 俺は今来た八巻の発言を聞いてまたもや頭を抱える思いになった。

 なに真面目に朝の挨拶なんかしちゃってるんだ!?こいつこんなキャラかっっ!!?お前はヤンキーだろ、ヤンキー!

 

 「おせー。待たせんな猿里八」


 「わりーって。  って、マキ髪ぐしゃぐしゃになってんぞ」


 といって八巻が俺の髪を指で梳くと、猫っ毛の俺の髪が素直に梳けるはずもなく引っかかって引っ張られてしまった。


 「いてててててっっ!! やめろバカ!!!   もうはちなんかほっといて行こーぜ、チヒロ!」



 チヒロの腕を掴み、俺は八(八巻って言うのも面倒くさくなってもっと略した)を置き去りにして歩き出す。“八”なんて犬みたいかなと思ったけど、後ろで八が


 「は・・ち・・?  え、俺のこと・・・だよな!?   え、・・めちゃうれしい・・・・・・」


 とか乙女みたいに両手で口覆って呟いていたから多分許されてる。


 

 それにしても・・・・・・これから物語はどうなるのだろうか・・・・・・

 と悶々と考えていると、髪を優しく梳く指に意識がそちらにいった。


 ふと顔を上げ、横を歩くチヒロの顔を覗くと少し口の端を上げた優しい顔を向けられる。

 その顔にほっとさせられ、こっちも表情が緩んだ。


 2人でほのぼのとしていると背後からやっと自分が置いてかれていることに気づいた八が『おいっ、置いてくなよー』といじけて小走りで追いついてくる。前はけんかっ早くて気性も荒かったが、こいつも丸くなったもんだ。今じゃ本当に犬みたいだな。


 俺は幼なじみといえる2人と共に、前世では決して味わうことのなかったわくわく感を抱きながらこれから通う高校へと進むのだった。



 

 緊張もするけどっ、高校生活楽しみだな!!!!





 そう希望に満ちあふれて談笑しながら歩くマキだったが、彼はまだ自分が既にもう1人の主人公と会していたということに気がついていなかった。







































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