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初仕事

 ギルドの掲示板には多くの依頼が貼り出されていて、また、たくさんの冒険者が一様に仕事を探している。

 エリアスも人を掻き分け掲示板の前にやっとの思いで来ては仕事を探し始める。

 しかし、割の良い仕事は競争率が高いため。出遅れたエリアスはなかなか、仕事を探せないでいた。

 もたもたしているうちに、人の波は去り、各々が受付で依頼を受理しては、出発していく。

 そうこうしているうちに、痺れを切らしたバランが寄ってくる。


「早く依頼を見つけろ。」


「すいません・・・ただ、どれがいいかわからなくて。」

エリアスは恐る恐る答える。


「まぁ、今のお前の強さなら、、、これだな。」

バランは掲示板から貼り紙を1枚剥がし受付へと進む。

少し見えたそれは、モンスター討伐の依頼だった。


「シルヴィ、この依頼を受けたい。パーティーで行くつもりだ。」


「承知いたしました。こちらはCランクの依頼となります。マグマゴーレム3体の討伐ですね。場所は我が王国が新たに見つけた赤魔鉱石の採掘現場ですね。カルーナ村から北西に進んだところになります。よろしければこちらにサインをお願いします。」

 差し出された、書類に軽く目を通してバランはサインをする。同じようにエリアスも書類に目を通してサインをする。


「それでは、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」

 シルヴィは朝早くからとてもニコニコしていて、冒険者を送り出しているんだなぁと、幼いながら偉いなぁ、とエリアスが思っていると。 

 そんなエリアスの思考を読んだかのようにシルヴィが少し語気を強めながら言う。


「エリアス様今、何か失礼なこと考えませんでした?私20歳ですからね。」

 笑顔は絶やさない。けれどその声のトーンは確実に怒っているものだった。


ギルドから出発する際、入口の近くのテーブルに腰かけたグループの会話が少し聞き取れる。


「おい!聞いたか?リビア王国の高位貴族のルーカス卿が失踪したらしぞ。」


「失踪?バカ言え!おそらく暗殺されたんだろ。」


「暗殺ギルドの手の者か?」


「いや、情報屋の話だと、亡骸がまだ見つかってないらしいからな、おそらく、葬儀屋が関与してるんじゃないかって話だ。」


 そんな会話を小声で話していた。

 エリアスは頭の中で2つのことが渦巻いた。

「暗殺ギルドと、葬儀屋・・・」


「今のお前が関わることじゃない。」

 どうやら、少し声に出てしまっていたみたいで、バランに釘を刺される。

 そうだ、今は目の前のことに集中しなくてはならない。いまだ頭の中に残るワードを無理やり忘れようとした。


 ギルドを出てバランが話かけてくる。


「一時間後に出発する。買い揃えるものがあれば準備しておけ。」



●●●●


 レガシア王国、城内会議室には、現在6名が集まっていた。


「さっそくだが、先日リビア王国のルーカス卿が失踪、いや暗殺された件についてだが」

 腰に(きら)びやかな剣を携えた騎士団長が、その場を取り纏めるように話し始める。

 騎士団長といっても、まだ顔つきは若くバランと同い年くらいのように見てとれた。


「ちょっとー!その話する前にまだ二人来てないんですけど。」

 頭から獣の尖った耳を生やし、背中の後ろで揺れ動く尻尾をもった、声の高い獣人族の女性が騎士団長の話を遮ってくる。


 レガシア王国には多種多様な種族がいるが、それは王妃の周りも例外ではない。

 そしてここに集められているのは、国の機関を代表する者たちであった。


「すまないが、ラリタ、時間がないんだ。集まっている者たちだけでも話を進めたい」

 騎士団長は半ば強引に話を進めていく。


「単刀直入に言う。リビア王国が宣戦布告をしてきた。」

その場に居合わせた者がみな固唾を飲んだ。


「ルーカス卿は表向きには魔鉱石を売買する商家の名門だが、極秘裏にエルフ狩りをし、奴隷の密売も行っている。まぁ、今回の件に関しては、ルーカス卿がリビア王国の軍事に多額の援助金を出していて、リビア王国の軍事力がこれ以上あがらないようにと、我々がルーカス卿を排除したのではないかとのことだ。」


「んん!?ちょっと待てい。我々がやった証拠なぞあるんか?ほぼいちゃもんつけているようなもんだがな。」

立派な髭をたずさえた、ずんぐりむっくりしているがその顔には修羅場をくぐり抜けてきたであろう傷をもつドワーフが声を荒げる。


「そうだ。我々がやった証拠はない。しかし、向こうは既に証拠をでっち上げているらしい。獣人族の足跡が残っていたと。」

 騎士団長はいたって冷静に話をするが、その拳は硬く握られにわかに震えている。


 その時だった、重い雰囲気が立ち込む会議室に金髪の髪を腰まで伸ばした、美しいエルフの女性と、身長が2メートル近くある鋼のフルプレートを身につけた大男が遅れてやってきた。


「遅くなり申し訳ございません。話の内容はある程度予想できています。どうぞ続きをお願いします。」


 エルフの女性は可憐な仕草で王妃に一礼をすると、空いている席に腰かける。

 全ての動作に無駄のない美しさがあるが、この場では誰も気に止めるものはいない。

 これが一般の男性なら数秒、いや、コンマ何秒でハートを射ぬかれたであろう。

  

 騎士団長は一口水を飲んでまた話し出す。


「とにかく、我々はできれば戦争は回避したい。」


「そんなあまっちょろいことじゃ解決にならないと思いますわ。」

今しがた、会議に加わったエルフが語気を強めて発言する。


「エルフのみなの気持ちを考えればそれも分かる。しかし、我らは幻華戦争(げんかせんそう)が終息を迎えてまだ5年しか経っていない。ここでまた被害を出すのは望んでいない。」

 騎士団長はまっすぐにエルフを見つめる。


 しばらくの沈黙が場を支配していたが、それを優しい声音が塗り替える。


「皆にそれぞれ考えがあると思う。私は皆が平和に暮らせることだけを考えてる。」


 皆が一斉に上座に腰かける、黒い髪を肩にかけて、端正な顔立ちをした優しい声音の方に顔を向ける。

 王妃は皆の顔をそれぞれ見回して、決心したように。声を振り絞る。


「私は、皆が平和に暮らすために、リビア王国を滅ぼす!だけど、私たちの犠牲はなるべくなくしたい。だから、なるべく開戦までは長引かせて。その間に少しずつ、確実にリビア王国の力を削る!」


 誰も反論するものはいない。自分たちの意見を聞いた上での王妃の判断なら皆がそれに従う姿勢でいた。


「アポロ旅団と、そして、バランにも協力を要請したい。」

 王妃の最後の言葉に騎士団長だけが難しい顔ををしたが、皆、納得したとばかりにうなずく。エルフと獣人族の二人にいたっては、満面の笑みを浮かべていた。



●●●●



「お待たせしました。」

 街の外へ出る門のところで待っているバランのところまで小走りでエリアスはやってくると、少し息を切らしながら一言詫()びる。


 エリアスはマグマゴーレムとは戦ったことがないので、念のため他の冒険者たちに話を聞いた。そうすると、マグマゴーレムは普通のゴーレムより脆いが、その攻撃は一撃でかなりのダメージを受けるらしく、さらに、属性効果により、常に炎を纏っているらしい。そのため火傷をすることは免れないため、赤魔法の耐性がついた防具などを身につけた方がいいとのことで、防具を新調していたのだ。


 しかし、防具屋に立ち寄ってみたが、盾や鎧といったものがほんとんどだった。なかなかいいのが見つけられないので、諦めようと思い、バランとの集合場所に行く途中に露店商で赤魔法の耐性がついた籠手を売っていた、値は金貨1枚だったので、即決で購入してきた。 

 とゆう話をバランにしたところ、どうやら私はぼったくられたらしいとのことだ、通常はそれくらいの籠手なら銀貨5枚とのことだ。

 世渡りも知らなければ世間も知らない、つくづく情けなさがこみ上げてくる。

 けれど、バランの最初は「おれもそうだった。これから街の歩き方を学べばいい。」とゆう言葉に少し救われたのだった。

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