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ご挨拶2

リビングのテーブルに案内されたエリアスだったが、部屋を見る限り意外とと言っては失礼かもしれないが、予想していたよりもシンプルで質素な自宅だった。もっとわかりやすく言えばあまり物を置いてない様子だった。

そんなことを思っているとふいに声をかけられる。


「コーヒーと紅茶はどちらが好み?」

急に絶世の美女から声をかけられて、声が裏返りながらも返事をした。


「はっ、はい!えと、あのぉ、その…どちらもでも、大丈夫ですぅ。」


「んー、じゃあ、私コーヒー苦手だから、紅茶でいいかしら?」


「はい!大丈夫です!」

エリアスはあまりの緊張に心臓の鼓動が早くなっているのが分かった。

しばらく姿勢を正して待っていると、とゆうより固まっていると、テーブルの上に香りたかい紅茶が差し出された。


「どうぞ。」

白く透き通った手が柔らかな手つきでカップを置いた


「自己紹介がおくれてしまってごめんね。私はアイラ!これから、よろしくお願いしますね。」

絶世の美女、アイラは簡単に自己紹介をして、紅茶に口をつけた。その仕草にまたまた、見惚れてしまうエリアスだったが、慌てて自己紹介をしようと勢いよく立ち上がったためか、テーブルに身体がぶつかり、その拍子に紅茶が盛大に自分にかかるのだった。

    

●●●


話は数ヶ月前に戻る。

肌寒くなってきた、季節の変わり目に黒いローブに身を包んだ20代前半の男が、ギルドの扉をくぐってまっすぐに受付カウンターまでやってきた。


「仕事の依頼が終わった、報告をしたい。」

若い男は淡々と告げた。


「お疲れ様でございますバラン様。それではこちらにサインと依頼内容にあります、集められた素材の提示をお願いします。」

受付に立つ耳の形がエルフのもので、痩せ細った背の低い女性とゆうよりは、少女に近い、ハーフエルフであるギルドの受付嬢が羊皮紙とかごを持ってきた。

バランと呼ばれた若い男は、サインを書き終えると、小さな腰のポーチから素材を出していった。

そのポーチからは明らかに入らないであろう、鉱石やらなんやらが出てくるが、受付嬢は何も言わない。

ただ、そのポーチが魔道具と呼ばれる特殊なものとゆうことだけは分かった。


「依頼の品はこれで全てだ、報酬は今月分まとめておいてくれてかまわない。」

バランはそれだけ言うと建物から出ていこうとするが、受付嬢に止められた。


「お待ち下さいバラン様。ギルドマスターが2階の奥の部屋に来て欲しいと言付かっております。」

バランは「わかった。」とだけ言って、2階へ上がって行った。


ギルドマスターの部屋に到着したバランは、扉を三回ノックするが、返答がある前にそのまま部屋に入った。

「バランだ。なんのよう・・・」

部屋に入ったバランは言葉につまった。予想外の人物がそこにいたからである。


「おぅ、久しいのぉ、でっかくなりおって。わしが稽古をつけた時はもっとガキじゃったからな。」

バランにとって予想外の人物が鷹揚にしゃべりかけてきた。


「グレゴリウスのじじい・・・なんでここに居やがる?」


「十年ぶりくらいなんじゃぞ、なんぞいそのいい方は?」

グレゴリウスと呼ばれた御年九十歳近い男性が、胸元まで伸びた白いひげをさすりながら答える。

そこにギルドマスターが静かな声音で話を遮ってきた。


「すまないが、話を進めて構わないかね。単刀直入に言おう。バロン、パーティを組む気はあるか?」


「悪いが、それは前も言ったはずだが、俺はパーティは組まない。」


「ならば、助手は必要か?」

ギルドマスターの問いにバランは、訝しげにグレゴリウスの方に視線をやった。

そして、しばらくの沈黙の後、バランはゆっくりと口を開いた。


「助手というと、グレゴリウスのじじいのところの者か?悪いがそれも必要ない。」

バランは他に話はあるのか?と二人を交互に見る。


「だそうだ。グレゴリウス。今回は諦めろ。」


するとグレゴリウスは椅子から立ち上がり、深く頭を下げ始めた。

その行動にバランもギルドマスターも驚いた。なんせ、バランは然り、ギルドマスターもグレゴリウスのことは旧知の仲のためどういった人物かをしっているから、このプライドの高い老人がそんな行動をとるというところを初めて見たのだ。


「バランよ、おぬしはそう言うであろうとは思っていた。だが今回はかつて、おぬしに剣技や魔法を教えたこの老人の最初で最後の願いを聞いてはくれぬか?」

グレゴリウスは静かに顔をあげバランの目をまっすぐに見つめた。


「わかった。話なら・・話だけなら聞いてやる。」

バランはグレゴリウスの見たこともない圧に押されて、空いている椅子に腰かけた。


「そうか、すまないのぉ。」

グレゴリウスは簡単に礼を言うと椅子に腰かけ話始めた。


「今わしのところには、遠い親戚の娘がいてのぉ、わしにこれ以上迷惑はかけたくないと街に出たいといううもんでなぁ。しかしその娘は家族が殺されて、住む家もおわれ、街なんぞ行ったこともないから、ろくに買い物もできんでな。だがわしも、もうどこぞの街に行こうとは考えとらんでな。おぬしらに任せたいんじゃよ。」

話を聞いていたギルドマスターが答えた。


「それならば、ギルドで働かせてもいいぞ。」

その言葉を聞いてグレゴリウスはまさかと思い目を丸くさせたが、首を横に振った。


「すまんな、ファラドよ。本来ならばそうしてもらえればと思うのじゃがな。あの娘、エリアスの本当の目的は、バランと一緒なんじゃよ。」

ファラドと呼ばれたギルドマスターが「そうか」とだけつぶやいてバランに視線を送る。


「話は分かった。だが本当にいいのかじじい。あんたに頭を下げさせるだけ大事な親戚の娘なんだろ?おれなんかのとこに寄越して。」


「だから、本来ならばおぬしと同じ道を進ませたくはなかった。だがエリアスの意思じゃ。それはわしがとめるのは野暮じゃよ。エリアスが自分で決めたことなのじゃからなぁ。ただ、まだまだ未熟じゃて、少し助けてやってはくれぬかのぉ?」


バランは考えていた。迷っていた。悩んでいた。目を瞑り感情を整理する。そして目を開けて一つだけグレゴリウスに問うた。


「じじい、あんたはかつて世界最強の暗殺者だったはずだ。愛する者も殺せる心のない完璧な暗殺者だったはずだ。そのあんたにここまでさせる理由・・・エリアスという女はあんたにとってなんだ?」

グレゴリウスはしばらく昔のことを思い出すように遠い目をして語り始めた。


「確かにわしは、愛していた妻を殺し、仲間も殺し、どれだけの命を奪ってきたのかは、もう数えられん、わしの手は汚れ切っている、心もなぁ。エリアスが生まれた時、わしは一度だけ会っているんじゃが、こんなわしの手をその小さく無垢な手で握り返してくれたんじゃよ。そうじゃな、いうなれば・・・わしの唯一の天使じゃよ。」

バランはそれだけ聞くと椅子から立ち上がり、部屋を出ていこうとする。そして、部屋の扉を開けて出ていく前に一言告げた。


「使えなかったらすぐに送り返す。」

バランは扉の向こうに消えていった。

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