帝都
「お嬢ちゃん、着いたぜ。ここが帝都だ」
護衛の人が、目的の帝都に着いたことを教えてくれた。中に入るための検問も終わり、馬車は帝都の中を進む。
馬車の窓から外を見ると、あの頃と何1つ変わっていない景色が見えた。
遠い国から仕入れた商品や、自分で育てた野菜を売る人達。それを真剣な顔で見ている人達。外で元気に走り回る子供たちの幸せそうな笑顔……。
そんな光景を見ていると、懐かしさが込み上げてきた。
あの頃と変わらず、今も帝都は他国の人達も多く街はガヤガヤと賑わっている。
ただ前と違うのは、皇帝が眠りに就いてしまったということだけだ……。
ルミエールがボーっと、外を眺めているとアスフレッドが声を掛けてきた。
「ルミエールちゃんはこれからどうするんだい? 帝都に来たのは、初めてだろうから街を観光でもするかい?」
(やっぱり働かせてもらう所には、挨拶に行っとかないといけないわよね。観光は、お休みの日でも出来るだろうし……。)
「いえ。ボヌルに先に行って、ご挨拶しようと思います」
「そうかい? じゃぁ、ボヌルまでお送りしよう!」
「いえ、有り難いんですが大丈夫です。シスターから頂いた地図では、そんなに遠くない所だったので歩いて行こうと思ってます。それに、歩きながら街も見てみたいですし……。」
アスフレッドからの、有難い申し出だったがルミエールは丁寧に断る。
シスターから貰った地図を見たところ、ルミエールが前世によく城を抜け出して行っていた場所の近くだったのだ。
(折角だから、久々に帝都の街を歩いてみたい……。)
「じゃぁ、此処でお別れしようか。ボヌルにもよく行くから、また会えるね! また何か困ったことがあったら連絡しておくれ。」
「はい。アスフレッドさん、ありがとうございます。 護衛の方々もありがとうございました!」
「俺達も、ボヌルには時々行くからまた会おうな!」
「頑張れよ!」
「じゃあな!」
そう言って頭を下げると、護衛の人達が手を振りながらそんな事を言ってくれた。馬車から降り、アスフレッド達を見送る。馬車が遠ざかったのを確認し、変わっていない街並みを見渡す。
「……本当、懐かしいわ。」
あの頃から外に出ると、ガヤガヤと賑わっているお店。街の人達の笑顔。楽しそうに走り回る子供達を見る事が、リゼリアの楽しみだった。あの頃の大好きだった光景が、今目の前にある。
(もう見れないと思っていたのに……。)
そう思うと、少しずつ目の前がぼやけてくる。この頃、前世を思い出すとルミエールは涙脆くなってしまうのだ。
「おねえちゃん大丈夫~?」
いきなり、後ろから可愛らしい声が聞こえ。びっくりしたルミエールは、声がした方を勢いよく向く。後ろでは、小さな女の子が女性と手をつないで立っていた。女性は、心配そうな表情をしていた。
「びっくりさせてしまったかしら? 泣きそうな顔をしていたけれど、大丈夫? 体調が悪いんだったら、家がすぐそこなので休んでいきますか?」
「いえ、ありがとうございます。大丈夫です。ご心配お掛けしました。」
「どこかいたかったの?」
女の子は心配そうに、首を傾げながらこちらを見ている。ルミエールは、女の子の目線までしゃがみ。女の子を安心させるかのように笑顔で言う。
「心配してくれてありがとう。痛かったのも治ってしまったわ。もう大丈夫よ?」
「そっか! 良かった~。じゃぁ、おねえちゃんがもういたくならない様におまじないしてあげる!」
そう言うと、ルミエールの頭に小さな手を伸ばし頭を撫でてくれた。
「げんきにな~れ!」
「ふふっ。ありがとう。小さな魔法使いさん」
「どーいたしまして!!」
リゼリアの頃から、子供達の笑顔は窮屈な生活の中で唯一の癒しだった。周りから悪く言われて落ち込んでいても、ふらっと街に行っては外で遊んでいる子供達と遊んだり。
ブラブラと街を歩き、街の人達と喋ったりしていたら忘れられたのだ。
行けない時は、ブランに抱きしめられると頑張ろうと思えた。ブランは、リゼリア自身から言うのを待っててくれたのだろう。
「引き留めちゃって、ごめんなさいね? 大きな荷物持っているし、どこかに行く予定があったんでしょ?」
そんな事を考えていると、女の人はそう声を掛けてくれた。
「いえ、大丈夫です。ここら辺に、ボヌルと言うお店はありますか?」
「あら! ボヌルに用事があったのね! ボヌルは、そこの道を右に曲がったらすぐにあるわよ」
「ありがとうございます!」
(...…意外と、近くまで来ていたのね。)
二人と別れを告げる。女の子は、ルミエールが見えなくなるまで後ろを向きながら手を振ってくれていた。
ルミエールは二人が見えなくなると、女の人に言われた道へと行く。
少し歩くと、ボヌルと看板に書いてあるお店を見つけた。そこは、目立たず。こぢんまりとした所だった。
教えて貰わなかったら、見つけれなかったかもしれない場所だった。
そう思いながら、ルミエールはお店を見上げる。
これからこの場所が、自分自身の働く所なのだと思いながら……。




