旅立ち
シスターが呼びに来た後、ルミエールは皆と食事をし。時間が許す限り子供達と遊んだ。
追いかけっこをしたり、絵本を読んだりして遊んでいた。
シスターから、知り合いの馬車がもうすぐ出発すると聞くまでの間まで……時間が許す限り皆と一緒に居た。
ヤン達はルミエールがもう行ってしまうと聞き、寂しそうな顔をしている。でも、一生会えない訳ではないのだ。またいつか会いに来ると、ルミエールは皆と約束をした。それを聞いた子供達は、笑顔を浮かべる。
シスター達に挨拶を済ませ。馬車に向かうと、馬車の近くには見慣れた顔の男の人が1人と護衛の人が3人居た。
「ルミエールちゃん。もういいのかい?」
「はい。大丈夫です。」
シスター達の方を振り返り、ルミエールは深くお辞儀をする。
(私の事を拾ってくれて、育ててくれて。私に色々な事を教えてくれて……愛してくれてありがとうございます。)
「「ルミエールお姉ちゃん、頑張ってー!!」」
と言う意味を込めて、深く。長く……。顔を上げると、子供達が笑顔でルミエールに手を振っていたので振り返す。
「行ってきます!」と、言いルミエールは馬車に乗り込む。馬車の窓からルミエールは、皆が見えなくなるまで手を振る。姿が見えなくなり、席に座り直す。
(また、皆に必ず会いに来よう……。それよりも、帝都に行く馬車に運良く乗せてもらえて良かった……。)
此処から帝都までは距離があり、歩いていくとなると大変だ。シスターに、帝都に行く人が居るから乗せていって貰いなさいと言われるまで、ルミエールはどうして行こうかと悩んでいたのだ。
「グスッ……グスッ。」
ルミエールの前に座っている男の人が、さっきから泣いている。鼻水も出て、泣き顔が凄いことになっている。この人はシスターの知り合いで、教会にも来ていたからルミエールはよく知っていた。
何で、ルミエールが泣いておらず。この人が泣いているのだろうと、ルミエールは持っていたハンカチを差し出しながら苦笑いを浮かべる。
「アスフレッドさん、これ使ってください。」
「このお嬢ちゃんが泣いてなくて、何で旦那が泣いているんだよ」
護衛の一人も、呆れたように言った。
「うぅ~……ありがとう。だって、ルミエールちゃんがあの教会に来たことが昨日の様に思えるから……次行った時にルミエールちゃんがあそこに居ないと思ったら、なんか寂しくなってしまってね……。」
アスフレッドは、帝都で商人として仕事をしている。だから、ルミエールとはいつでも会えるのだ。
本当にこの人は泣き虫だ。いつも会うと、必ず泣いている様な気がするとルミエールは思った。
初めて会った時も「こんなに幼いのに両親が亡くなって辛かっただろう」と、ルミエールを抱き締めながら泣き。その次に会った時は「シスターに意地悪された。」と、何故か子供達に泣きついて来ていた。
シスターとアスフレッドは幼馴染らしい。昔からアスフレッドはよく泣いていたと、シスターが子供達に笑いながら言っていた。でも、その泣いている原因ってシスターなんじゃないかと、ルミエールは思い始めている……。
ルミエールは涙を拭いているアスフレッドを見ながら、そんな事を思った。
「……そういえば、ルミエールちゃんは帝都に行ったらどうするんだい?」
「シスターが、紹介してくださった所に行こうと思っています」
シスターが、ボヌルというお店を紹介してくれたのだ。そこは、料理を提供している所らしい。
ルミエールがシスターに料理を習い始めてから、料理を作る事が楽しくてしょうがなかった。だから、そこに行けると知ったときは、跳び跳ねて喜んだ。
只、帝都にあると聞いたときは少し悩んでしまったが。
「ボヌルという所らしいのですが、知っていますか?」
そう言い終えると同時に、護衛の3人が勢いよくルミエールの方に振り向いた。
「お嬢ちゃん、ボヌルに行くのかい!?」
「確かに、あそこは料理は上手いが……。」
「あの人がな……。」
「「「……頑張れよ」」」
(どう言うことかしら?何故か、凄く不安になってきたわ……。)
護衛の方に話を聞くと、ボヌルという所は帝都で美味しくて安く食べれると人気なお店らしい。そこで食事をするのは、冒険者と呼ばれる人など様々。
ただ問題なのは、そこのボヌルを営んでいる人が凄く怖いと言うことだけは、話を聞いていて分かった。
「本当、あの人はやべぇ~よ」
「店で喧嘩していた奴等を、殴り飛ばしてたからな……。」
「あの人を怒らせたら、最後だな」
口々に、護衛の人達はそう言う。
シスターは「ボヌルの人は頼りになって笑顔が素敵な人よ」って、言ってた。だから、シスターみたいに優しい人なんだとルミエールは思っていたのだ。
アスフレッドも知っているらしく。「……怒ったら怖い所はあるが、優しくて好い人だよ?」と、教えてくれた。
(その人を怒らせ無いように気を付けないと……。)
「まぁ、そろそろ王都に着く。頑張れよ、お嬢ちゃん! お嬢ちゃんなら、多分大丈夫だ!!」
「は、はい。」
ルミエールが不安そうな顔をしていたからか、護衛の1人が爽やかな笑顔でそんな事を言う。
(果たして、私がそこできちんとやっていけるのかしら。まだ働いても居ないのに、もう既に不安になってきたわ……。)
ルミエールの不安もよそに、帝都に着いた馬車は門を潜るのだった。