思い出の場所
それは、リーオと再会してから数日が経った頃だった。
ボヌルで働いている時。忙しいのも一段落し、休憩をしょうとしていた時にブランはいきなりお店に現れたのだ。
「ルミエール!」
「わっ! びっくりした! いきなり、どうしたの?」
ブランは、何かを決意した様な表情で立っている。
ルミエールは、何かあったのかと思い。ブランに近づくと、いきなり右腕を捕まれ。ブランに抱き寄せられてしまった。
「リゼさん。申し訳ないが、これからルミエールをお借りしても良いだろうか?」
「ふんっ。やっと決意したのかい。分かった、泣かせるんじゃないよ?」
「……分かっている。ルミエール、リゼさんの了承も得た事だし。一緒に着いてきてくれるかい?」
「……今から?」
リゼは、ブランに何かを聞いていたのか了承をした。
まだ仕事が残っていると。ルミエールが心配していると、リゼは先ほど店に入ってきていたアスフレッドを指し。「こいつに手伝わすから大丈夫だよ」と、リゼは言った。
そう言われても尚。ルミエールは本当に行ってもいいのか悩んでいると、リゼがブランとルミエールを追い出すように外に出した。
「良いから行ってきな! 行かないと、後悔するよ?」
リゼが言っている事については、分からなく。首を傾げていたルミエールだが、リゼからの了承と外に追い出されてしまったので、ブランに付き合うことにした。
「……分かりました。行ってきます」
「あぁ、行っておいで」
リゼにそう言ったと同時に。ブランの転移魔法で、目の前は光に包まれてしまった。
光が収まり。眼を開けると、前世でよく来ていた思い出の場所に立っていた。
そこは、街から出て。近くの森の奥深くにある場所。
ここは大きな滝や、色とりどりの花が咲いており。自然豊かな所なのだ。
(懐かしい……。そういえば、この場所……)
「ルミエール。覚えているかい? ここは前に『君とずっと一緒に居たい』と言って、婚約を迫ったときに来た場所だよ?」
(そうだ。あの頃は、祖国が無くなって。竜人国に来たけれど、馴染めなかった私を。色々な所に連れていってくれたブラン。そんなブランに、私はその時から密かに思いを寄せていたんだ……。)
そして、ブランも同じく。番でもあり、優しい性格のリゼリアに惚れていた。
この場所で、ブランは思いを告げ。リゼリアは婚約者と、なったのだ。
「えぇ、もちろん覚えているわ? 私にとっても、大切で特別な場所よ?」
(忘れる訳がない。あの時の、嬉しさ。驚き。愛おしさは、今でも思い出せる)
「……ルミエール。」
「どうしたの?」
ブランは、何か思い詰めているような。考えているような表情をしていたが、何かを決意したのか。真っ直ぐと、ルミエールを見つめてきた。
少しばかりの間、二人は無言になった。
「……私は、リゼリアを見つけた時。番が見つかった喜びだけだった。だからあの時『私の国に来ないか。』と言ったのは、番を離したくないと思ったからだ。でも、君と過ごしていくうちに、愛おしさで溢れてきていたんだ。」
ブランは、嬉しそうに喋っている。
「コロコロと変わる、君の表情や。行動を見ていたら、暖かい気持ちになった。そのうち、愛したい。一緒に居たい。と、思い始めた。それは、ルミエール。君でも変わらない」
真剣な表情でブランは、ルミエールを見つめる。
「ルミエール、君が好きだ。リゼリアとの思い出は、忘れられない……。だけど、ルミエールとしての君と過ごすのも凄く楽しいし、君を手放す事なんて出来ないんだ。……ルミエール。もう一度、私とやり直してはくれないかい?」
ブランは膝を付くと、ルミエールの手を取り。愛おしいものを見る様な表情をしている。
ルミエールは、流れ落ちそうな涙を堪えるように下唇を噛んでいた。
(良いのだろうか……。今世の私は、貴族でも王族でもない。只の民だ。この国の王であるブランの隣に、また居ても良いのだろうか……)
人族であった時も、貴族の間では問題になっていたのに。今回は、民だ。
良く思わない人だって居るかもしれないと思うと、ルミエールは怖かった。
(耐えられるのだろうか……。今度こそ、信じていられるのだろうか……。)
「ルミエール。君の思いを伝えて? 周りの事なんか気にしなくて良いんだ。何かを言われたなら、私が聞こえない様に耳を防いであげよう。何かされたなら、私がその者を始末しよう。だから、本当の気持ちを教えて欲しい。……ルミエール、一緒に幸せになろう?」
ブランにそう言われ、ルミエールはある事を思い出した。
(そうだ。私は、今世は幸せになろうと決めたんだったわ。『強くなろう。今度こそ信じよう。』と。自分の幸せは、自分で掴み取らないと……。)
「……私は、幸せになりたい。今度こそ、ブランと幸せになりたいの!!」
必死に。只、自分が本当に思っていることだけを叫ぶ。
ブランに腕を掴まれ、抱き寄せられてもそれは止まらない。
「本当は、あんな死に方したくなかった! ブランとずっと一緒に居たかったの! 竜人として生まれ変わって、番が違う人かもと思っていても貴方が好きだったわ。でも、貴方が目覚めた時、私を通してリゼリアを見ていたからあんな事を言ってしまったの。私自身を見て欲しかったから……」
「……うん。ルミエールの思っていることを、私にも教えて? 全て受け止めるから。君が悩んでいるんだったら、私も一緒に悩むから」
ブランの胸元に顔を埋める。
(もっと早く、自分の思っていることを話せば良かった。そうすれば、死なずに一緒に居れたかも知れない。)
そう後悔しても、今さら遅い。
ルミエールが落ち込んでいると、ブランは抱きしめていたのを少し離し。ルミエールの顎を掬い上げる。
真っ直ぐと見つめ、ブランは真剣な表情をする。
「……ルミエール。私と生涯、一緒に居てくれますか?」
「……はい。」
ルミエールがそう言うと、ふにゃりとブランは嬉しそうに笑い。目元に口付けた。
目が合うと、二人ともに笑みがこぼれる。
「……ずっと一緒だ」
そう言われ、ルミエールは頷く。
「少し落ち着いたら、きちんと婚姻しよう」
「はい」
まだブランは目が覚めたばかりで、眠っていた間の仕事があり。忙しいらしい。落ち着いたら婚姻をすると、ネス達に話をしたらしい。
本当は、婚約を了承してくれるか分からず。リゼに相談をしていたそうだ。
だからあの時、ルミエールの気持ちも。ブランの気持ちも分かっていたリゼは『行かないと後悔する』と言ったのだ。
「リゼさんに、お礼しないと」
「そうだね。」
滝の近くにあった大きな石の上に、二人でくっつきながら座る。ルミエールが前に座り、ブランが後ろから抱きしめる様な形で座っている。
「ネス達と話し合い。婚約者については、名前の発表はしない。婚姻する時に発表をするつもりだ。ネス達も、ルミエールを守りたいんだ」
「分かったわ」
(嬉しい。そう思ってくれる人達が居るのだから……)
この日。各国には、ブランの婚約が発表された。
婚約者の存在を喜び、歓喜し。違う国では、婚姻者を妬み。調べようとしている国だってあった。
……発表を受けた各国の反応は様々だった。
こんな終わり方ですが、まだまだ続きます|д゜)チラッ




