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耳飾り

その日は、いつもより早く覚めてしまった……。

毎日が悲しく。心が壊れそうな日常から、毎日が幸せな暮らしに変わった時の、夢を見ていた様な気がする……。



ふと窓の外を見ると、周りはまだ薄暗い。


(……早く起きすぎてしまったわ。今からだと、もう一度寝ることが出来ないわね。気分転換に、少し外を散歩でもしてこようかしら?)


ルミエールは、仕度を終わらせると。リゼを、起こさない様に注意しながら外に出る。

外は誰も歩いておらず静かだ。

風は冷たく、肌寒い。


(何か羽織るものを持ってくれば良かった)

と、後悔していた時だった。


「……お嬢さん、すみません。」


後ろから、いきなり声を掛けられた。びっくりしながら、後ろを振り向く。

後ろには、ニコニコと微笑んでいる男の人が一人立っていた。


「あぁ。びっくりさせちゃいましたか? 荷物が多くて、困っていたのです。出来れば手伝って欲しいのですが……。」


男の人は、そういいながら路地の方を指差した。


「女の私が、お手伝い出来るか分からないので誰か男の人を呼んできましょうか?」


大通りに出たら、お店の準備をしている人達が居るかもしれない。


「いえ。そんなに重たくも無いので、二人で大丈夫だと思います」


「……そうですか?」


ルミエールがそう言うと、何故か男の人は焦っていた。


(気のせいかしら? 嫌な予感がする……。)


本能が、逃げろと言っている。


「さぁ。此方です」


男にそう促され、歩き始める。男の人は、ルミエールの後ろから着いてきていた。

路地の方に行くと、言っていた荷物なんてなかった。

その場所には、二人の男が立って居た。



「……どういう事ですか。」


男達は、ニヤニヤと笑いながら此方を見ている。

前と後ろを挟まれ、逃げれなかった。


(ブランと一緒に居ると言うことは、誰かに狙われるかもしれないと言うことなのに。そんな事、前世で嫌と言うほど経験してきた筈なのに……。反対されても、誰かを呼びに行けば良かったわ。)


そんな後悔をしていても、もう遅い。


「悪いなお嬢さん。俺らは頼まれただけなんだよ。あんたに痛い目合わせろってな!」


後ろに居た男はそう言うと、此方に手を伸ばしてきた…はずだった。


ガンッ!


そんな音がしたので見ると、ルミエールは防御魔法の様なもので守られていた。

そのお陰か。男が伸ばしていた手は、ルミエールには届いて居なかった。



「チッ! バリヤーか! こんなもの壊せばなんとでも!!」


男達は、そう言いながら攻撃魔法を詠唱していた。

何で防御魔法の様なもので守られていたのか分からないけれど、あれで攻撃されたら普通のバリヤーの強度ではひとたまりもない。


今のうちに、少しでも遠くに逃げないと!

光属性の回復魔法は得意だが、攻撃魔法はそこまで強くない。立ち向かった所で、やられてしまうわ。

そう思っている間に、火の塊はどんどんと大きくなっている。


『キャンセレーション』


そう聞こえたと同時に、大きい火の塊が無くなっていた。


「ブラン!!」


ルミエールの目の前には、ブランが居た。そう言えば、この耳飾り。何かあれば、駆けつけてくれると言っていたような……。


「なっ! 皇帝だと!?」


「何でこんな所に!」


「……お前らか。私の番を狙った人族は。」


ブランの目が冷たく、真っ暗な闇のような瞳をしている。


(……凄く怒っているわ。)


「……誰だ。命令した奴は」


「ひっ! 化け物!!」


「く、来るな!!」


ブランの殺気にやられたのか、男達は怯えている。


「シ、シルフィス国だよ!! この女に痛い目を合わせろという命令だった!!」


一人の男が、怯えながらもそう言った。

シルフィス国。あの王女が居るところだ。



「シルフィス国……ルミエールを狙うとは、いい度胸だ。」


先ほどより、殺気が増した。

殺気にやられのか、男達は気絶してしまった。


「……ブラン」


ルミエールがそう呼ぶと、小さい声だったのにブランはこちらを向いてくれた。


「……無事で。無事で良かった。」


そう言って、強く抱きしめてくれる。

ブランが抱きしめてくれている手は、少し震えていた。


「……心配かけて。勝手に出掛けてごめんなさい。」


(もっと自覚するべきだったわ。)


「良いんだ。君が、自由に行動することを制限したくない。でも、君を今度こそ守ると約束をしたから。」


「約束?」


「リゼリアが亡くなった後、リゼリアの祖国の民達と約束したんだよ。生まれ変わった君を、今度こそ幸せにすると。必ず守ると。」



「元ファンス国の民達が?」


「君が、民達を治療していた事を分かっていたそうだよ。両親に虐げられていた君が、幸せになる事を民達は願っていた。……それを、守れなかったのは私達だ。」


それを聞き、ポロポロと涙が出てきた。


(知らない所で、そんな事を思ってくれていた人達が居たなんて……。)


「リゼリアが、亡くなった事を伝えた時怒られたよ。『私達が、幸せに暮らせているのはありがたい。貴方だったら大丈夫だと。姫様を守ってくれると思っていたのに!』って。だから約束したんだ。次、生まれ変わったら今度こそ守る……。幸せにすると。」


「でも、私が生まれ変わらなかったかも知れないじゃない。」


「私達竜人は、番が生まれ変わりの予定もないまま死ねば、片方も狂い死んでしまう。番とは繋がっているから、分かるんだよ。それが無かった。だから、リゼリアが生まれ変わると思ってたんだ。君が生まれ変わっている事は、私が目覚めた時点で民達には言っている」


「また……民達と会えるかしら?」


(会いたい。リゼリアの身分を知っていても、普通に接してくれていた民達と……。)


「あぁ。二人で会いに行こう」


ブランは、此方を優しく微笑みながらルミエールを見ていた。ルミエールは、見られていることが恥ずかしくなった。


「そういえば! さっき。私、防御魔法を詠唱しなかったのにバリヤーが発動していたのだけれど……。」


気になっていた事をブランに聞いてみる。


「あぁ。それはこれだよ」


そう言いながら、耳飾りを指差している。


(耳飾り?)


「これには、防御や攻撃を反撃する為の魔法も付与しているんだ。役にたって良かった」


そんな魔法が付与されていたのね。


「試しに、あそこで気絶している男に近づいてみな?」


ブランはニコニコと笑いながらそう言っている。


(……?? 何も起こらないと思うけれど……。)

そう思いながら近づいてみる。

男の目の前に立つと、気絶していた男が吹っ飛んでいった。


「……えっ!?」


「こんな感じに、ルミエールに悪意がある奴も近づけさせないよ。」


(……それは、説明して欲しかったわ。何で実践させるかしら。)


先ほどは、距離があったからこんな事にはならなかったのだ。また近づくと、飛んでいきそうだ。


(あの男の人が、心配だけど側にはいけないわね。)


嬉しそうにしているブランを見ながら、ルミエールは頭を抱えたくなってしまった。



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