悪夢の日々~回想~
シルフィス国の王女様と会い、ルミエールはあの人……。リゼリアの、義母の事を思い出したからだろう。
その日の夜は懐かしくもあり。リゼリアにとっては忘れたいと思っていた、夢を見た。
まだ、リゼリア・ファンスだった頃の話……。
リゼリア・ファンスは、ファンス国の第一子として生まれた。ファンス国は、人族の中では貧富の差がなく。幸せに皆が暮らしていた。
母である王妃は、リゼリアを生んだ後に亡くなった。父である国王は、最愛の妻が亡くなった事に悲しんだ。だが、最愛の人に似た容姿をしていたリゼリアを、最初はとても可愛がっていたのだ。
金色の髪の毛に、キラキラとした綺麗な青色の瞳。
その時は、誰もが生まれた事に喜び。歓喜した。
だが、リゼリアが10歳の誕生日を迎えるときだった……。
魔力を持っている事が発覚してしまったのだ。リゼリアの誕生日の日、パーティーが開かれていた。その途中、気分が悪くなったと同時に魔力が暴走してしまった。
人族では、魔力を持つ者なんていない。なので、皆には恐れられ。可愛がっていた国王は、リゼリアが魔力を持っていると知ると、居ない者として扱った。
程なくして、国王は新しい王妃を迎えた。王妃の出身国は、人族の中で大国だった。
母親を幼くして亡くなったリゼリアは、とても嬉しかった。
でも現実は、義母である王妃は凄く我が儘で。リゼリアを嫌っていたのだ。
ファンス国に嫁いでから、王妃はドレスや宝石を買い込んでいた。買えないと、喚き散らし。物にあたる。
そんな王妃を、国王はほったらかしにしていた。
だからだろうか、王妃は好き勝手していた。
手に入らないなら……気に入らないなら、どんな手でも使う。
どんどんと、国は悪くなっていく一方だった。貴族は、見てみぬふりをし。自分達も不正をし始めた。
そんな王族や貴族に、民達からは不満が上がっていた。
治安も悪くなり、貧富の差も出てくるほどだったのだ。怪我や病気をしても王族や貴族が、国のお金を使っている為。治す所が少なくなっていっている事を知った私は、密かに城を抜け出し。街に降りていた。
他国から来たように装う為、ローブを羽織り。フードを目深に被る。
(怪我や病気を治せる、光魔法を私が使えるなら。使わないでどうするの……。)
そう思うと、すぐ行動に移していた。
その時だけは、魔力を持っている事に感謝していた。誰かの役にたつのだから。
リゼリアが街に降りている事を、王妃に知られていたとしても…。
王妃はかならずリゼリアに会うと「本当に、気味が悪い子。さっさと消えなさいよ」と、言って睨んでいた。
学園に入学する歳になっても、リゼリアに誰一人関わろうとはしなかった。
学園でも貴族ばかりだったので、皆陰でひそひそと喋っているだけ。
リゼリアと仲良くすると、王妃に目をつけられてしまうからだ。
リゼリアの心には、耐えきれなかった。最初は、部屋の中で一人で泣いていた。
だが、歳を重ねるごとにどんどんと瞳の光は無くなっていった。そんなリゼリアでも、街に降りる事は辞めなかった。
唯一、自分が誰かの役に立ち。必要にされるのだから。
ある日、王妃が懐妊し。王子が生まれたと報告された。
リゼリアは怖かった。跡取りが生まれてしまったから、捨てられるかもしれないと思うと、恐怖で夜も眠れず。両親に会うと、震えてしまった。
だが、王妃は前と変わらず金使いが荒く。国王は、王妃や王子が居るにも関わらず、外で愛人をつくっていた。
お飾りの王妃。そう、街では噂されていた。
……そんな矢先だった。
国王は、帝国に戦を仕掛けたのだ。領土の拡大と、帝国で採れる珍しい鉱石を手に入れたいが為だけに。
それを知ったリゼリアは、父である国王に直ぐ様会いに行った。
「竜人に戦を仕掛けても、勝ち目はないではありません! 民達を見てください! 戦える状態では、ないじゃないですか!」と、言ったが駄目だった。
やはりリゼリアの意見など、王は聞いてくれるはずがなかったのだ。
リゼリアは、兵士達に取り押さえられ。地下牢へと閉じ込められてしまったのだった。
結局、戦は人族が負けた……。当たり前だった。帝国とこの国との強さは、全然違う。そして、王は死ぬのが怖くなり、途中で逃げて帰って来たと。牢の中で、リゼリアは教えてもらった。
(……どれだけの、民達の命が散っていったのであろうか。王族の我が儘で、戦に駆り出され。絶望し。どれだけ、苦しんだのだろうか……。)
そう思うと、涙が止まらなかった。
「私は無力だわ……。王族なのに、何も出来ていないじゃない……。」
ただ、地下牢で無事である民達が少しでも居る事を願うしかなかった……。
ほどなくして、リゼリアを地下から出す為に兵士達が来た。
「謁見の間で王がお待ちです。……帝国の皇帝もいらっしゃいますので、お着替えを。」
兵士達は、怯えた様な表情をしている。
(皇帝がここに? ……何故。)
そう思いながらも、リゼリアは何日ぶりか分からないが牢の外へと出た。地下から出ると、侍女が居た。侍女に促され、綺麗なドレスに着替える。
お城の中は、前より人が減ったように思える。
兵士や侍女達は、怯えた様な。疲れている様な表情をしていた。
そんな光景を、横目に見ながらも考える。皇帝は、竜人族の中でも魔力も身体能力も高いと言われている。
皇帝一人だけでも国を滅ぼせると……。
(何故。帝国の使者ではなく、皇帝が自らここにいるのだろう? 負けたのだから、降伏をしているはずだわ。賠償などの話をするなら、使者でもいいはず。もしかして、まだ降伏をしていないのだろうか……。嫌な予感がするわ。)
そんな事を思っていると、謁見の間に着いてしまった。
兵士がドアを開き、見えたのは。武器を持った沢山の竜人の兵士と玉座に座っている一人の男。そして、竜人の兵士に取り押さえられている王と王妃だった。
玉座に座っている男の、伏せていた目がこちらを見る。
黒の髪の毛に、吸い込まれそうなぐらいに漆黒な瞳……。無表情で座っているからか、冷たい印象を抱く。
(……怖い。)
そう思ってしまう。
でも、リゼリアはこの国の王女として此処に来ているのだからきちんとしないといけない。と、思いながら背筋を伸ばし。一歩。また一歩と歩みを進めていく。
「お初に御目にかかります。リゼリア・ファンスと申します。」
そう言うと、ブランにリゼリアはカーテシーをする。
「皇帝陛下。こいつが、今回の戦での黒幕です! けして、私達はそんな事を行っていないのです!! 降伏は、私達が変わりにしましょう!!」
リゼリアの挨拶が終わるな否や、王はリゼリアを指しながらそんな事を叫んでいる。
(あぁ、やはり降伏をしていなかったのね。だから、こんなにも帝国の兵士や皇帝がいるのね。)
「そうよ! この子が、全てやったことよ! ……本当に、何を考えているのか分からない気味が悪い子!!」
髪や化粧がぐちゃぐちゃになった王妃がそう言う。
(……あぁ。お父様達は、私に全て罪を擦り付けようとしている。)
気に入らないと、リゼリアを地下牢に閉じ込め。自分達が始めた戦に負けると、自分の娘にその罪を擦り付ける……。そんな父達を見て、リゼリアは絶望する。
リゼリアは民達と同じで、お父様達にとっては替えのきく駒なのだと。
「ふっ。あははははははは」
そんな事を思っていると、いきなりブランが笑いだした。




