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騒然

それは、領地から貴族や他国から王族が集まる日だった。

街も花を飾り、華やかになっている。


街では、執事や侍女を連れた女の人達をよく見る様になった。いつもより街は賑わっていた。

先ほど、アスフレッドの商会の前を通った時、凄く忙しそうだった。


「ルミエールさん。やはり気になりますか?」


「いえ。ただ、こうやって使っているお金は民達が頑張って稼いだお金なのにね。」


横で歩いていたシルに、そんな事を言ってしまう。

シルは見回りをしていた時、ルミエールが買い出しで居るのを見つけて来てくれたのだ。

これだけ貴族が集まると、見回りを強化しないといけないらしい。


「ルミエールさんは、変わっていませんね。リゼリア様だった時も、そんな事を仰ってましたね。」


「だって、あんなに買っても着るのは数回なのよ? キラキラと綺麗な宝石も、綺麗な装飾が着いている服もよ? それだったら、国や領地の為に使う方がいいわ。」


この竜人の国は豊かだけれど、他の国では貧富の差が激しい所だってある。

全ての国が豊かではないのだ。

王が贅沢をし、民達が困っている所だってある。リゼリアが、前世生まれた国だってそうだった。


(国王であるお父様やお母様が贅沢をし、民達の不満が溜まっていたのは知っていた。だけど、私が言った所で何も変わらない。だから、少しでも民が助かるように持っていた魔力で傷を癒したり。病気を治したりとしていた。私だと分かるといけないので、ローブを目深に被って。)


そんな事を思っていると、人だかりが出来ていた。


「ちょっと!! 邪魔よ!!」


真ん中では一人の女性が、子供を連れている女の人に叫んでいた。親子だろうか。


叫んでいた人は、金の髪の毛を巻いており。ドレスには、フリルやリボンの装飾が沢山付いている。首飾りには、高そうな宝石が付いている。

女性は、凄い形相で叫んでいた為。その表情を見ていた、子供は泣きそうになっていた。


「ルミエールさん。少し失礼します。」


シルはそう言うと、人混みの中その女性の元に向かった。ルミエールもその後を追う。


「騎士団の者です。いかがなさいましたか?」


「あら! シル・ネイスト様ではありませんか!」


シルの事を知っているのか、その女性は態度が変わった様になった。

シルとその女性が話している間に、親子の元に行く。


(あら? この二人、私が街に来たときに会った人達じゃ…。)


「あの。大丈夫ですか?」


そう声を掛けると、向こうも覚えていてくれたのかびっくりした表情をしていた。


「あの時の……。えぇ。あの女性が通ろうとした時に、この子が前で転けてしまって。」


(それで怒鳴るなんて酷いわ! 目の前で転けたなら、後ろに居る従者達でもいいから手を差し伸べればいいのに……。)


傷口からは、血が出ていて痛そうだった。


「大丈夫? 痛くなくなる魔法をかけてあげるわ」


「まほ~?」


子供の前にしゃがむ。そう言うと、女の子は涙を溜めながらも首を傾げている。

ルミエールは、微笑みながら傷口に手を当てる。


「あれ~? いたかったのがなくなってる~!」


「ふふっ。良かったわ」


傷口は綺麗に治った。

痛いのも無くなり、女の子は泣き止んだみたいだった。


「あの、ありがとうございました。」


「ありがと~!」


「いえ。私も元気になるように、おねえちゃんにやってもらったから。」


そんな事を話していると、シル達も話が終わったみたいだった。


「ふん! 平民のくせに、魔法使えるとか気味が悪い。」


シルと話していた女性は、そう言いながらこちらを見ていた。


(……この人は人族なんだろう。)


「……シルフィス様。お疲れでしょう。そろそろ帰られてはいかがですか?」


シルは、微笑んでそんな事を言っている。だが、目が笑っていなかった。

(……怒っているのかしら。)


「え? えぇ、そうですわね。では、シル・ネイスト様ごきげんよう」


女性は、そう言い残すと去っていってしまった。


(シルフィス? あの女性は、隣国であるシルフィス国の人なんだろうか……。シルフィス国といえば、宝石がよく採れる事で有名だ。)


シルフィスが去った後、親子とは別れた。別れる際に、女の子が手を振ってくれていたのは凄く可愛く、ルミエールも笑顔で手を振り返していた。

親子が去った後も、シルの顔は怖いままだった。


「シル。怒っている?」


心配になり、覗きこむ。


「ルミエールさんには怒っていません。ただ、あの女……いえ。シルフィス様が失礼な事を言っていたので、つい。それに、子供が転んだのに助けないなんて……。」


(失礼な事? 私が言われた事かしら。……気にしていないのに。)


ルミエールは前世で、人族が魔法が使える事が気味が悪いって言われていたから慣れてしまっていた。


(でも、シルフィスを見ていると知っている人を思い出すわ。その人も民を見下し、我が儘。思い通りにならないと、どんな手でも使う……。そんな人だった。)



「すみません、ルミエールさん。行きましょう」


「えぇ。そうね」


シルに声を掛けられるまで、そんな事を思い出していた。


(でも、シルフィス様とはもう会わない事を願うしかないわ……。)

そう思いながら、ルミエールは買い出しの続きをするためにその場を離れた。






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