日常の変化
ブランが来た数日後、ルミエールの日常は今までとは違った。それは、ブランが毎日ボヌルに顔を出していると言うことだ。
午前中はブランは仕事があるからか、夜にボヌルに来ている事が多い。
毎日ブランはボヌルに顔を出しているので、仕事で疲れているのに大丈夫なのかとルミエールは心配にもなってしまう。
ブランは、毎日お店に来ては料理を食べたり。ルミエールやリゼ、お客さん達とお酒を飲んで楽しそうに話をしたりしている。
ボヌルに居るお客さん達も、最初は皇帝がお店に来たと言うことで騒ぎはあった。
その時に、リゼが仲介として入ってくれた。説明をしていたけれど、何と言っていたのかは分からない。
只、お客さん達は納得をし。ブランがお店に来ても、皇帝としてではなく。一人の男として接して居るような気がする。
(あんなに、楽しそうな表情をしているブランをまた見れたのが嬉しい……。)
「ルミエール。今日のスープは、君が作ったのかい?」
ブランは、いつも食べている食事についていたスープを指しながらそう言った。リゼにでも、聞いたのだろうか。
ルミエールは、この頃リゼに教えて貰いながら食事で出すスープや簡単な食事を作ったりしているのだ。
元々、教会でも料理を作っていたので作れないことは無かったが、リゼの美味しい料理を教えて貰えるのがルミエールは嬉しかった。ルミエール自身、リゼの料理が大好きになっていた。
前世では、料理なんてした事が無かった。なので、何かを自分で成し遂げると言うのは楽しかった。
「えぇ、そうなの! リゼさんに美味しい料理を教えてもらってるから、どんどんと上達していってるのよ?」
「そうなのか、料理凄く美味しいよ」
ブランが分かってくれた事が嬉しく、ルミエールは嬉しそうに言う。そんなルミエールを見て、ブランも微笑み返してくれた。
ブランが微笑んでくれるだけで、ルミエールの顔が熱くなる。そして、何故か胸の辺りがポカポカと温かい気持ちになるのだ。
「はぁ~。ラブラブだな~。」
「本当に。陛下みたいなかっこいい人に、あんな事言われたら誰でも惚れてしまうぞ。」
「俺達には出来ねぇーな!」
「確かにそうだ!」
「「「ハハハッ!!」」」
周りの人達が、そんな話をしながら笑っているのが聞こえる。
(そうだった! ここは、お店の中だったわ!!)
周りの人達に見られていたという恥ずかしさで、ルミエールの顔が更に熱くなる。
「ルミエール、顔が真っ赤だよ?どうしたんだい?」
ブランは、意地悪そうな表情をしながらルミエールの頬に手を伸ばす。
(ブランは、意地悪だわ……。分かってるくせに。)
ルミエールは、拗ねたように顔を背ける。そんなルミエールを、ブランは可笑しそうに笑いながら謝ってきた。
「……そうだルミエール、これから数日はここに来れないかもしれないんだ」
「何かあったの?」
「同盟国の者達がこの国に来るんだ」
(そうか。ブランが目覚めた事を知ったので、同盟国の人達が挨拶に来るのね……。)
同盟国は、色々な種族が多い。
人族。獣人族。ドワーフ族など、様々な種族が同盟を組んでいる。
「ブラン、頑張ってね?」
ブランへの謁見やパーティーなどもあり、大変だ。
(ブランは、パーティーというのが苦手だから心配だわ。)
いつも、気付いたら途中で居なくなって部屋に戻って仕事をしているのだ。
「ルミエールと一緒に居たい……。」
「駄目よ? 私とブランは、今世では婚約者じゃ無いんだから」
そう言うと、ブランは拗ねた様な顔になり。ルミエールの肩に、頭を擦り付けてくる。
「はぁ~。離れたくない……。」
「そんな事を言ってくれるのは嬉しいけれど……。ネスが迎えに来ているわよ?」
ドアの方を見ると、ニコニコとした表情でネスが立っていた。笑顔で立っているネスは、表情は笑っているのに目が笑っていない。
(あれは、怒っているわね……。また、ネスに何も言わずに来たのだろう。)
「ブラン様、お迎えに上がりました。今日も、またルミエールさんの所に居らしたのですね。行く際は言ってくださいと私、あれほど申し上げたのに……。」
「お前に言うと、いらない護衛を付けるじゃないか。」
「いらない? 貴方は、帝国の皇帝ですよ? 守られる存在なんですよ? なのに、護衛がいらない?」
(あら。ネスの顔が、こちらに近づくにつれどんどんと怖い顔になってきているわ。)
確かに、ブランは強い。だが、皇帝なのだ。護衛を付けとかないと、何があるか分からないのだ。
「ネス、陛下は居ましたか? 早く戻りましょう。」
ネスの後ろから、シルが顔を出した。
ルミエールに気付くと、ニコッと笑う。
「そうですね。さぁ、陛下戻りますよ。仕事が溜まっているんですから。ルミエールさん、失礼致します」
「えぇ。」
「分かった。……ルミエール。すぐ終わらして、また会いに来る」
「はい。お待ちしています」
そう言ってブランは、ルミエールを優しく抱き締める。しばらくしてルミエールを離すと、側で待っていたネスに引きずられながら帰って行ってしまった。
その様子を誰かに見られていたなんて、この時は思いもしなかった……。




