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エインヘリヤル・ゲート  作者: ラウンド
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1st.choice 候補者


 あなたは、一度は訪れた暗闇から、目を覚ました。

 光が、目に飛び込んでくる。

次に蒼空が、草原が、そして花と幾つかの幾何学模様のような扉が、上体を起こすにつれて視界に収まった。

頭を振る。寝ぼけているのだろうか。

「お早う。お目覚めかな?」

 背後から、透き通った清水のような声がかけられる。誘われるように振り向いた。

 そこには一人の、目も眩むような美少女が居た。服装は、飾り気のない簡単な洋装で、しかし、全てが見事に噛み合った芸術品のような雰囲気を持っている。

「キミが来てから、七時間が経過。うん。平均的な睡眠時間だね。気分はどう?」

 あなたは、気分は悪くない、が、少し混乱していると素直に伝えた。

「健康そうで何より。そして当然の疑問だね。ここは…例えるなら、生の世界と死の世界の混ざり合った場所。キミは元の世界での生命を終え、ここに運ばれてきた」

 疑問符が浮かぶ。どういうことなのだろうと。

 少女は目を閉じ、しばし考え、そして再びあなたの顔を見た。

「キミが置かれている状況を簡単に説明すれば、キミは元の世界で英雄的な活躍を果し、天寿を全うし、その後、世界を救うことのできる者として選ばれて、ここに連れてこられた」

 世界を救うとは、どういうことだろう。あなたは質問を重ねる。

 少女は微笑を浮かべる。

「そのままの意味だよ。キミには世界を救えるだけの力があって、そして私は、その力を借りたい。まだ混乱していると思うけれど、私の話を聞いてほしいんだ」

 あなたは、一先ず疑問を封印し、少女の方に体を向けて話を聞く体勢を整えた。

「有難う。それじゃあ、説明を始めるよ。今からキミは、ある世界の屋敷に送られる。その世界は長く戦乱が続いていて、世界全体が疲弊しているんだけれど…。キミが送られる屋敷に住まう一人のお嬢様が、実は将来、その戦乱を終息させるカギになる女王になる、予定なんだ。キミには、そのお嬢様を、彼女を女王にしたくない勢力から守ってほしいんだ」

 少女はそこで言葉を切った。

 あなたは再び疑問の封印を解いた。そのお嬢様が戦乱終結のカギになることを知っている存在が、他にもいるのか、と。

「うん、残念ながら。勢力そのものはその世界の住人だけれど、それを裏で唆した悪者が居てね。私はそいつらの、そう言った企みを阻止して回ってるんだ」

 あなたは、なるほどと肯いた。

「もちろん、キミを私の手駒にしようとしている自覚はある。だけれど、私はその世界には干渉できない決まりになっていて、誰かに手伝ってもらわないといけない。そこでキミに目を付けたというわけ」

 あなたは興味を引かれ、なぜ干渉できないのか、試しに聞いてみた。

 すると少女は、おもむろにあなたの顔を見つめ、小首を傾げて見せた。

「キミには、私は“どういう風”に見えてる?」

 不思議な質問だった。もちろん、あなたは見たままを伝える。

「そっか。それなら“キミ”には、私は“芸術品のような美少女”に見えている、と言うことになるね」

 違うのだろうか。質問を重ねる。

「私はね。キミに合わせた姿を取っているんだよ。キミが見ていて違和感のない。或いは不快に思わない姿を。またあるいは、キミにとっての、神格と言うものに対してのイメージをそのまま取るようになっているんだ。そのどれに当てはまるかは、私には分からないけれども」

 少女は楽しげに微笑んだ。

「ちなみに、他の世界の人には、私は別の姿に見える。時にもっと大人びた、あるいは老けた、あるいはさらに幼い姿の事もあるし、性別が違うこともあれば、化け物の姿になることもある。つまり、そう言うこと」

 あなたは再びなるほどと肯いた。

もし怪物になじみのない世界を救いに行って、結果、万が一怪物が降臨したとなれば、大事になるのが目に見えている。

「理解してもらえたところで。話を続けるよ。お願いしたいことはさっき伝えた通り。そして、この依頼を受けるかどうかは、キミに決定権がある。つまり、キミは引き受けても、引き受けなくてもいい。どうするかは、キミの自由だよ」

 あなたは目を見開いた。強制かと思っていたと、素直に伝えた。

「あはは…。まあ、仕方ないよね。でも、最終決定権はキミにあるんだ。あ、もし引き受けてくれるのなら、キミが、キミの全盛期の力を発揮できるよう支援するし、仮に引き受けなかったとしても、キミは何も気にしなくていい。その時は私が、キミが楽園へと向かうのを送った後で、別の候補を探しに向かうだけだから」

 少女は、屈託なく笑う。

 言葉は続く。

「今すぐに、とは言わないよ。ゆっくり時間をかけて決めていいよ」

 そう言うと、少女はその場を離れ、草原の中央に備えられた屋根付きの休息所のような場所へと移動した。

「引き受けてくれるのなら、あっちに見える赤いゲートへ。楽園に向かうのなら、向こうに見える青いゲートへ向かって。私はここで、待っているから」

 少女は何処からともなく本を取り出し、椅子に腰かけた。

 あなたは、二つのゲートを見比べ、草原に寝転んだ。視界に広がる蒼空はどこまでも澄んでおり、大きく広がっている。


 それからしばらくの後。あなたはゲートの前に立っていた。

 少女は、あなたの隣に立っている。

「あなたの選択を尊重します。向こうでもどうか、お元気で」

 あなたは開かれたゲートの先へと視線を向け、思いを馳せる。

 少女の声が続く。

「もしも困ったときは、私の名前を呼んで。私の名はファ・ルシファ。ファで一回切ってからルシファだよ。私の世界の言葉で『明けの明星』と言う意味。この名前が、少しでもキミの道しるべとなりますように…。それじゃあ、行ってらっしゃい!」

 あなたはゲートをくぐり、その光の先へと一歩を踏み出した。


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