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そしてこれからも……

綾と翔太の能力者探しは今回でおしまい。

綾のスカートめくりの犯人を捕まえることに協力を申し出た女の子。その正体は!?

北風が横殴りの台風のような強さで吹き付ける中、綾は女の子を見つけた。

「また、おとなびた娘ね。お名前は? 」

「井上紀沙。大人びてる理由は感情が死んでるから。」

風が止む。流れる時が止まる。

(シンデル…また…シンデル)

翔太は綾の手を握り目を伏せて言う。

「能力者って、そんなものだから」

綾は、紀沙を抱いて泣く。わんわんと泣く紀沙を想像したため、泣かずにはいられなかった。

紀沙が泣かない代わりに、たくさん泣いた。泣いて泣いて、泣きぬいた。

紀沙もまた、こんな真っ正面からぶつかる大人になりきれない娘なら、心を開いても良いな、と思った。


紀沙は語る

「私、瞬間移動能力者が(うらや)ましかった」

『どうして? 』

ハモった。

「お母さんを、助けられたはずだから」

「どういうこと? 」

「なんで? 」

今度はバラバラだ。

「私のお母さんは、必ず事故死するの。タイムスリップして、何度助けても、必ず事故死する」

翔太はうつむいく。

「だから、瞬間移動で車から助けるんだ? 」

「うん」


綾は思った。過去を変えちゃいけない。人は後悔する。だからこそ、今がある。明日がある。

「過去を悔やんで、(かて)にすることで、次のステップに進めるんじゃないかな? 」

一陣の風が言葉を遮る。秋冬は嫌だと思わずにはいられない。

助けられたのに、言いすぎだろうか?

「僕もそう思うよ」

翔太は、綾に微笑みかける。

紀沙は哀しげに微笑む。きっとすべて鮮明に聞こえていたなら、拒絶されたに違いない。

『過去を悔やんで、糧にすることで、次のステップに進めるんじゃないかな? 』と聞こえたか?そう伺える顔を紀沙はした。『お母さんの過去を悔やんで、糧にすること』しか聞こえないか。過去を悔やんで、糧にすること。綾は乗り越えられなかった。

ああ、太陽が眩しい。。。


「じゃあ、お願いね」

「綾お姉ちゃんも」

「ハイ……」

綾はちょっと残念そうに答える。誰だって自分のショーツ見た男と顔を合わせたくはない。紀沙達には大人の気持ちはわからないらしい。

「今日はクマさんパンツなんだね」

ボソッと呟く翔太。

「やっぱり見た!?」

綾はバッと翔太を見る。

「ゲ、当たったのかよ」

翔太はげんなりした。

「なによ、悪い?……や〜い、お前の母ちゃんア〜ベ〜ベ〜!」

「女ですらないし!? 」

どっちが子供かわからない掛け合いに、紀沙は笑い、翔太は口を開く。

「でも、今の嘘の匂いじゃない」

綾は真っ赤になる。

「どんな匂い!?」

「レモン果汁十五ミリリットル、蜂蜜十五ミリリットル、スコッチウィスキー三十ミリリットル……これをシェイク。カクテル横黄姫(おうきひ)の匂い。」

「なんでカクテルの匂い知ってんの!?」

「嘘。そんなカクテル無い」

「騙された!?」

「騙される方が悪いんだよ」

綾は拳を震わせる。

「あんたってひ……キャ!」

ふいに三人は光に包まれる。最初に口を開いたのは紀沙。

「早く行こ」

「お、おぅ」

「ええ……」


周りは虹色に輝く世界。

「綺麗だわ……紀沙ちゃん、これが時間移動なの? 」

「ハイ」

紀沙は振り返って微笑む。

三人は二十分前に向かう。

「ねぇ紀沙ちゃん、未来には行けるの?」

「それは無理。未確定条件だから」

「そっか……残念」

翔太が憎まれ口をたたく。

「自分のおばあちゃん姿見たいの?」

「違うわよ。乙女の夢よ」

翔太は無表情になる

「フーン」

「何が言いたいのかな? 」

「ナンデモナイ」

「アッソ」

そうこうしてる間に、空間に光の穴が見える。

「着いたわ」

三人は、過去綾の後ろに立つ。

無音。空間を切り裂き、男の子が現れる。

「あの人」

紀沙が指指す。

翔太はグイッと男の子の手をひき、紀沙が現代に戻る準備をする。

「お前、何しようとした? 」

翔太に捕まった男の子は悪態をつく。

四人は光に包まれる。

「何すんだ!」

綾は男の子のもう片方の手を捕まえて答える。

「連行、よ」

「あなたの悪質なイタズラの被害者を私が手助けしたの」

紀沙は軽く握った拳を胸の前に当てる。

「チッ」

男の子は舌打ちをする。

三人は元の時間に戻る。瞬間移動の男の子は本当に三人から釈放されるまで返されない予定だ。

「罪の償いなんて求めない。もうしないって約束して」

綾は男の子に優しく言い、名前を聞く。

「私は二ノ宮綾。あなたは? 」

棗光輝(なつめこうき)

「光輝君ね。この子は相沢翔太。この娘は井上紀沙。ノーマルは私だけ」

光輝は綾を睨みつける

「非能力者……ノーマルが憎い。殺したいほど……」

(コロシタイ……)

喉が渇く……熱い……かろうじて出た唾液も喉に絡んで飲み下せない……。

紀沙は不安げに綾を見やる。

「お姉ちゃん?」

翔太が心匂を使った。

「わかった。綾お姉ちゃんは身内が死んでるんだ」

「うん、そう……」

綾は力無く呟く。続けて言う。

「能力者でも犯罪なのよ」

「聞いたことない」

「そう…それは能力者は大人になる前に能力を失う。中学生くらいまでね」

紀沙は少し驚く。

「え? 」

光輝は訝しげに聞く。

「なんで知ってる?」

「能力者同士の情報交換。私達が他の能力者と情報交換した。」

「なぜそんなことに? 」

「多分脳の構造かしら? 頭悪い女子高生の考えだけど」

光輝は子供らしく唸る。

「お姉さん達と一緒にいた方が得しそうだね……。わかった。イタズラ止める。なんかあった時は協力する」

綾達は親指を立てる。

「私も」

紀沙はおそろおそろ手を上げる。

「ええ、みんな一緒よ」


「またね」

綾達は光輝を元の時間に戻した。


そして現代へ。

「ごめん、綾さん」

この時間の光輝が突然現れる。

「もういいわ。これからもよろしく」

「うん」


こうして、四人の能力者と一人のノーマルは、さらなる仲間集めを始める。

翔太が能力を失ったのはその一年後……。

でもそれは、また別のお話……。


最後まで御読了いただき、ありがとうございます。

能力者は元老院の作った次世代人間です。話が膨らんで扱えなくなってしまったので、これでおしまい。恋愛要素少ない作品ですみません

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